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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第二章 秋に咲く白い桜

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024異空間




 「ぼっちゃま、明日はいよいよ5歳の誕生日ですね」


 俺が横になっている枕元で、婆やが言う。

 屋敷の二階にある自室で、俺は布団に入って寝る準備をしていた。


 今日は、お昼ごろから霊魂祭のために明治神宮に行き、未来で俺を殺すはずの少女である神木凪桜に出会った。


 なかなか、濃い一日だったが、それも終わりを告げる。

 このまま眠って起きれば、明日が始まる。


 明日は俺の5歳の誕生日だ。

 陰陽師にとって5歳の誕生日は、特別な日。


 霊術の解禁日だ。


 陰陽師の醍醐味と言えば、霊術。


 霊力は丹田で操作されるが、霊術は脳によって行使される。

 けれど、5歳未満の未発達な脳での行使は危険とそれ、日本では法律によって禁止にされている。


 でも、5歳の誕生日になれば、その禁止も解かれ、晴れて霊術が公式に行える。


 「ぼっちゃまなら、きっと…素晴らしい陰陽師になれます」

 「うん、ありがとう。俺…超強い陰陽師になるよ。なって…婆やを守るんだ」


 俺は決意を込めて言う。

 一回目の人生で、死ぬはずだった婆やを、二回目の人生で今度こそ守るんだ。


 「ふふ…それは楽しみです。婆やは幸せ者です」


 俺の言葉を冗談と受け取ったのか、婆やは微笑みながら、部屋の電球を消す。


 「ぼっちゃま、おやすみなさい」

 「おやすみ」


 婆やは静かに部屋から退出していく。

 俺も布団に包まる。


 「おやすみ、福丸……って、もう寝てるか」

 『ムニャムニャ』


 枕の傍にいる福丸にも声を掛けたが、既に福丸は婆やに掛けてもらった小さな毛布に包まりながら、夢の世界に行っていた。


 俺は目と閉じる。

 すると、数秒で眠気が襲ってくる。


 「………くぅ」


 俺は眠りに付く。









 「…………………………………………は?!」


 そして、いっきに目を覚ます。


 視界に入るのは、幾つもの白い光。


 俺は起き上がる。

 そこは、さっきまでいた俺の自室では無い。


 そこは、広めの空間だった。


 「……ここは」


 上は…星空。


 黒い空に多くの星が輝いていた。

 それは満点の星空。


 目を開けた時に、入ってきた幾つもの白い光は、この星空のものだ。


 下は石畳。

 俺が立っている円形の石を中心に、一律に石が敷き詰められており、大きなストーンサークルを作り出していた。


 さらに、その石畳による円の端。


 俺を取り囲むように、"十二の扉"があった。


 俺の前方、後方、右、左、斜め。

 それぞれに扉が一つずつ設置されている。


 その扉は、江戸時代の時代劇で見そうな和風の門である。

 扉は木目で作られていて、風化したかのように黒ずんではいるが、何だか長い歴史を感じさせるように堂々としている。


 十二の扉には、一つずつ数字が大きく刻まれてある。


 俺の前方の扉には、壱。

 そこから時計回りに、弐、参、肆、伍、陸…そして、最後の拾弐まで。


 「服も違う」


 着ている服も、さっきまでの寝巻きではない。

 黒い和服を着ており、藁で出来た草履を履いている。


 起きてみれば、別の場所に居て、着用した覚えのない和服を着ている。


 普通なら、大慌てをするところだが、


 「()()…ここに来たのか」


 俺は至って、冷静だった。


 冷静な理由は、一つ。

 この場所は、俺にとっては見慣れた場所だからだ。


 俺は周囲を見渡す。

 俺以外誰もいない。


 「ふぅ…」


 俺は息を吐き、石畳の上を歩き出す。


 自身の周りにある十二の扉を見て回る。


 ドン…。

 試しに、伍の数字が刻まれている扉を押してみる。


 木目の扉は固く閉ざされ、全く開く気配が無い。

 別の扉も同じように開けてみようとするが、結果は変わらず。

 十二個の扉は開かない。


 恐らく、一つを除いて。


 俺は十二の扉の内、前方の壱の数字が刻まれた扉に手を置く。


 そして……ギイィ。

 扉は簡単に開く。


 俺は驚かない。


 分かっていた…十二個の扉の内、壱の扉だけは開くことを。

 壱の扉を開けた俺は、そのまま中に入る。


 壱の扉の先は………草原だった。


 上を見れば、さきほどの空間の白い空と違い、青空が広がっていた。

 吹き付ける微風が心地よく、生い茂る草を揺らしていた。

 よく見れば、小川も流れている。


 扉の中は、まるで別の世界であった。


 俺は完全に、扉の中に入り、草原を歩き出す。


 ギイィ…独りでに閉まる扉。

 気にせず、俺は歩き続ける。


 そして、辿り着くのは、


 「うん、ここも”変わってない”な」


 草原を歩いた先には、家があった。


 現代のようなコンクリートや鉄筋で作られた家ではなく、これまた江戸時代の時代劇で見そうな茅葺き屋根の一階建ての家。


 草や藁、稲などを使った屋根であり、壁は木の板、入り口は土間である。

 江戸時代の農民が暮らして良そうな一軒家だ。


 家の横には、小さな田んぼがあった。

 何も育てていないのか、田んぼには土しかない。


 俺は迷う素振りも無く、その一軒家に入る。


 扉も何も無い入り口から入り、中を見る。

 その家は小さく狭いながらも、中央に囲炉裏があり、壁には田んぼを耕すための鍬が立てかけてあった。


 家の中には、誰も居ない。

 そう思った矢先、


 『ピュウ!』


 その時、足元から可愛らしい声が聞こえる。


 下を見ると、俺の足元には…一匹の鼠がいた。

 幼い俺の手のひらに乗るような小さく、何の変哲も無い鼠。


 『ピュウ!ピュウ!ピュウ!』


 鼠は暫く、俺の足元を元気に走り回る。


 だが、急に俺の前で止まったかと思ったら。


 ドロン!

 鼠の姿が消える。


 『初めまして、ご主人様!』


 そして、消えた代わりに、一人の少年が現れる。


 明日で5歳の誕生日を迎える俺よりも年上の、10歳ほどの見た目の男の子。

 短い鼠色の髪を持ち、鼠色の木綿を着ている。


 そして、特徴的なのは、金色の眼。

 まるで、黄金のように光っている。


 少年は俺に対して、屈託のない笑顔で、ご主人様と言ってきた。


 鼠がいなくなり、代わりに鼠色の髪の少年が出てきたが、それは鼠と、この少年が同一人物…同一個体だからだ。


 この少年は、人の姿と動物である鼠の姿を交互に変えられるのだ。

 そう言う能力だから。


 「コイツも"変わらない"んだな」


 俺は苦笑いする。

 数年ぶりに再開した友人が昔のテンションのまま挨拶してきた気分。


 いや、実際には、その通りなんだが。


 前置きが長くなった。

 俺が突然、正体不明の空間に来て、何の迷いもなく、状況を受け入れているのには、勿論理由がある。


 この空間は、俺の()()が作り出した異空間。

 一回目の人生の時に、何度も足を踏み入れた空間だ。


 そして、鼠から変身した、この少年は…俺の術式による”式神”である。


 福丸のような妖怪でもない独自の式神を使役する能力。

 それが俺の術式である。




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