018ほぼ5歳
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俺が過去に戻り、2回目の人生を歩み始めてから、およそ2年が経った。
今は”ほぼ”5歳である。
何故、ほぼ5歳と言う言い方をしたかと言うと、
「ぼっちゃまも、いよいよ明日で5歳のなりますね」
「うん、そうだね」
婆やの言う通り…明日は、俺の誕生日だからだ。
明日になれば、俺は5歳になるのだ。
誕生日なら、誰にでもあるイベント。
両親から誕生日プレゼントを貰えるという目出度いイベントであるが、これが俺の家である九十九神楽家といった陰陽師の家系となると、話が少し変わってくる。
5歳の誕生日は、陰陽師にとって重要な日なのだ。
それは、
『明日になれば、いよいよ僕と正式に契約できるね!』
「ああ、福丸も正式に、俺の初めの式神になるんだな」
俺のそばにいる福丸が、猫又特有の二つの尻尾をブンブンと振って喜ぶ仕草を見せる。
福丸の言う通り、明日になり、俺が5歳になれば、福丸を自身の式神として正式に主従関係とするための契約が可能となるのだ。
最も具体的に言うと、霊力を用いた術である「霊術」は、5歳になると使用できるようになる。
霊力は人の体の中心にある丹田に存在するが、その霊力を使った霊術の行使は脳によって行われる。
5歳未満の脳による霊術の行使は危険とされ、この現代日本の法律では、霊術の使用は5歳からとされているのだ。
霊術には、五行術や結界術など様々なものがあるが、福丸との契約は、式神術というもので行う。
この式神術を持って、福丸を…俺の初めの式神とするのだ。
「まひるも、しきがみ…ほしい!」
俺の隣で、元気な声を出す茉昼。
3歳になった茉昼が、自分も式神が欲しいと言い出す。
はしゃぎながら、母である巴譲りの朱色の髪を揺らして、福丸を羨ましそうに見ている。
「茉昼には、まだ早い。自身のパートナーとなる式神は、じっくりと考えた末に決めるものだ」
そんな茉昼を、澪が窘める。
母である文世譲りの水色の髪をポニーテールにして、毅然とした様子で、茉昼には、まだ式神は早いと言う。
まだ澪は6歳だが、正妻である文世の教育が行き届いているのか、既に九十九神楽家の長女としての顔が見える。
「えー!まひる、かわいければ、しきがみ…なんでもいい!」
「……普通、式神は可愛いだけで選ぶものでは無い」
可愛いと言う要素だけで式神を決めようとする茉昼に、澪は呆れる。
諦めて、澪姉。
我が妹である茉昼は、母親から引き継がれたフレンドリーな性格と元気だけで、生きてる子だから。
「ふふ…お嬢様は今日も元気ですね」
婆やが茉昼の頭を撫でながら、そう言う。
ところでだが…正午よりも早い午前の時間帯。
俺、茉昼、婆や、福丸、澪は屋敷の正門前にいた。
これから、みんなで正門前から車に乗って、霊魂祭に向かうためだ。
「れんこんさい!れんこんさい!」
「蓮根ではない。霊魂だ。霊魂祭は、先祖の霊を伴うための祭事」
霊魂を、れんこんと言う茉昼を、澪が訂正する。
澪姉が言った通り、俺達が向かう霊魂祭は、簡単に言えば、先祖の霊をお祈りして、弔うための行事である。
大きな寺や神社でのお祈りを通して、ご先祖様への感謝の念を伝えるのだ。
お墓参りみたいなもの。
霊魂祭は年に一回、日本全国規模で開かれる大きな祭りであり、初詣や七夕祭りに近い。
そして、霊魂祭には、人だけでなく、福丸などの妖怪も訪れ、参拝することがある。
そう言った妖怪は基本的に、人に友好的である。
これから行くのは、明治神宮。
九十九神楽本邸から比較的近く、霊魂祭が盛んな場所は、渋谷区にある明治神宮だからだ。
因みに…俺は霊魂祭、とても楽しみである。
「祭りと言えば、美味しい物。たこ焼きや串焼き、唐揚げ、ポテト……あ!射的や輪っか投げも楽しみだな!そうだ、真兄にも、お土産を買わないと!」
祭りと言った屋台。
俺は、それが楽しみである。
病弱な長男の真は、外出が難しく、今回の霊魂祭には行けない。
なので、真兄にもお土産を買わなくちゃ。
何が良いかな?屋台の食べ物は病弱な真兄には消化に悪そうだし、お守りとか?
「まったく…宵明も。宵明だけは、大人っぽいと思ってたのに」
澪姉は俺を見て、ため息をつく。
中身18歳の俺…未だに祭りと言ったイベントは楽しみである。
「それを行ったら、澪姉も…金魚掬い楽しみでしょ?」
「え?そ、それは…」
図星である。
年相応の戸惑った顔をする。
澪姉は金魚や亀と言った水生生物が大好きである。
屋敷の澪姉の自室の中には、多くの金魚が泳ぐ大きな水槽があり、澪姉は、その水槽にいる金魚への餌やりや水草の手入れ、水槽の掃除など欠かせていない。
「ちょ、ちょっとやっていくだけだ。あの子たちにも、もっと友達が増えてくれれば」
顔を少し赤くして、そっぽを向く九十九神楽家の長女。
澪姉も、まだ6歳の女の子なのだ。
そんな澪の様子を、クスクスと小さく笑う婆や。
「では、参拝した後は、屋台を巡りながら、金魚掬いもやりましょう…………あ、車が来たみたいですね」
正門前に大きな車が止まる。
九十九神楽家御用達の車である。
「行ってらっしゃいませ、皆さま」
いつも、屋敷の正門を護衛している人が見送ってくれる。
うん、この人にも何かお土産を買って行こう。
俺たちは早速、車に乗り、明治神宮に向かう。
この時の俺は…まだ知らなかった。
今日の霊魂祭で、俺は人生を左右する”出会い”をすることに。
まさか、彼女に会うことになるとは。




