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『十二の式神使い』 〜殺された御三家陰陽師の俺は、過去へと戻り、破滅未来を回避するために、現代最凶の式神使いになる〜  作者: 星衛門
第一章 二度目の人生の始まり

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017稽古②




 今日は朝から快晴であり、清々しい青空が広がっていた。

 日差しも心地よく、適度な日光を地上に届けていた。


 猫には、打って付けの天気。


 いや…猫だけでなく、猫又にとっても、気持ちの良い昼を過ごせていた。


 『うーん、お日様でポカポカ』


 屋敷の縁側にて、お腹を上に向けた状態で、猫又の福丸がいた。


 お日様の光を存分に浴びて、寝っ転がっている。

 まさに、ゴロゴロという擬音語が出てきそうな様子である。


 『ムニャア…』


 福丸は大きく伸びをして、欠伸をする。


 先程、好物の煮干しをたくさん食べ、満腹。

 さらには、温かい日差し。


 これで眠くならないという方が、無理がある。

 福丸は体を丸くさせ、早速眠りに付く。


 数秒で夢の世界に………。


 ビュン!

 タッタッタ!


 『んにゃ?!な、何?!』


 行けなかった。

 突然、すぐ横を通りに来る大きな風に驚いて、跳ね起きる。


 気にせいか、大きな風の後に、誰かが走る音が聞こえた。


 まさか、怪異でも襲って来たのかと身構えたが、自慢の怪異センサーの役割を果たす髭には何の反応も無い。


 『気にせい?』


 そう思い、福丸はまた眠りに付こうとする。


 だけど…ビュン!

 タッタッタ!


 また、すぐ横を大きな風と、誰かが走る音が聞こえた。


 『何なの?!』


 また跳ね起きて、周囲を見渡す。

 縁側には、誰もいない。


 福丸は縁側の外側…屋敷の庭を見る。


 そして、見つける。


 『え?あれは?』


 影の如く漆黒の毛を持った大きな犬が屋敷の庭を駆けているのを。


 あれは犬神の禍丸である。


 少し遠めだけど、凄い速さで庭を走っている。

 それは、まるで突風のよう。


 さらには、


 『ニャ?宵明?』


 艶のある黒い髪の少年が、禍丸を必死に追いかけていた。


 あれは、まさに自身を式神とさせ、その主である九十九神楽宵明である。

 宵明と禍丸が、屋敷の庭を思いっきり使って、鬼ごっこのようなことをしていた。


 多分、さっき2回も起こった大きな風と誰かが走る音は、宵明と禍丸が追いかけっこをして、自分がいる縁側の横を凄い速さで通り過ぎた事によるものだ。


 『何してるんだろ?』


 宵明が禍丸を追いかける。

 冷静に考えて、普通は起こらない光景だ。


 首を傾げつつも、福丸は眠気が飛び、縁側から庭中を走り回る2人を眺めていた。




 一方、屋敷の庭にて、


 「ふっ!ふっ!ふっ!」


 俺は霊力の肉体強化を十全に使って、脚力を上げ、逃げる禍丸を追いかけていた。


 速い!触れられる気配すらない。

 気力を振り絞って、足を動かすが、俺と禍丸との距離は一定を保ったままだった。


 突然、始まった禍丸との鬼ごっこ。

 俺が鬼で、禍丸が逃げる方。


 霊力による肉体強化の稽古がしたいと禍丸に言ったら、禍丸は突然、逃げる自分を捕まえて見せよと言った。


 きっと、肉体強化を上手く活用して、全身での霊力操作の向上を目的とした稽古なのだ。


 時折、チラッと禍丸が俺の方を見ていることから、俺のペースに合わせて走ってくれているのだろう。

 つまり、手加減させているということだ。


 俺の方は全力なのに。

 スピードが足りない。


 スピードが足りないということは、脚力が足りない。

 脚力が足りないと言うことは、霊力による肉体強化の出力が足りないということだ。


 肉体強化は霊力を、ただ強く体に込めて行けば良いのではない。


 人の体は意外と複雑だ。

 体の部位や、さらに体の動きに合わせて、最適な霊力操作をしないといけない。


 霊力操作は日々の『周天巡霊』で、かなり向上しているが、個人的にまだまだである。

 さらに、霊力操作は一朝一夕では向上しない。


 すなわち、今の俺の肉体強化技術では、禍丸には追いつけないのだ。


 「くそ!」


 俺は悪態を付きながらも、霊力を屈指して、走る。


 それでも、禍丸に追いつけることは無かった。

 気づかぬ内に、俺の体力と霊力はどんどんと削られていった。









 数分後、


 「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」


 俺は庭の上で、大の字で倒れていた。

 口から激しく空気の入れ替わりが起きる。


 霊力も体力も、底を尽きた。


 少しの間は、動けやしない。


 『まだまだ…だな』


 倒れている俺を見下ろすように、禍丸が声を掛ける。


 俺は汗でだくだくなのに、禍丸は涼しい顔である。

 何と言うか、ただの人間と妖怪として格式の高い犬神との…力の違いを見せられた気がする。


 『宵明の肉体強化は荒いところがありつつも、年齢的に十分洗練されている。伸びしろも期待できる』

 「そ、それはどうも」


 疲労困憊なので、短く返事するのが、やっとこである。


 『だが、肉体強化以前に、宵明には、体力が足りないな』


 それは言えてる。

 今までは霊力操作ばかりに重点を置いていて、明確に体力を鍛えようとしたことがない。


 体力の無さは、肉体強化で補えば良いと考えたからだ。

 でも、それは俺の浅はかな考えだった。


 肉体強化には、素体となる肉体が丈夫である必要がある。

 肉体が丈夫でなければ、霊力をどんなに込め、どんなに匠に操作しても、大幅な肉体強化は望めない。


 今回の稽古は、俺の肉体の脆弱さを思い知らされた。


 『これからは霊力操作だけでなく、身体も鍛えた方が良さそうだな』

 「わ、分かった!」

 『よし。では…休憩が終わったら、屋敷周りを走り込みだな。まずは、体力を上げることから始めるのが重要だ』

 「は?」


 つい、俺は口を半開きにしてしまった。


 この後、走り込み?


 『何を驚いている?稽古をしたいと言ったのは、宵明だろ?」

 「そ、そうだけど…ちょっと…しんどくて」

 『しんどい?まさか、辛いから嫌という訳では無いだろう?稽古は辛くて当然だ。辛いからこそ、力が身に付くのだ。なぁに…心配するな。稽古は、しっかりと私が付き合う』

 「は、はい!」


 俺は肯定するしかなかった。


 禍丸の言う通り、稽古は辛いからこそ意味がある。

 辛いことをするからこそ、力が身に付く。


 俺は自分を恥じた。


 折角、二回目の人生を歩み、家族である九十九神楽を守るために、自身が強くなろうと決意した。


 そのために、毎日霊力鍛錬に明け暮れ。

 今日は禍丸に稽古をお願いした。


 それなのに、しんどい?


 何を言っている。

 こんなことで参っていたら、九十九神楽なんて到底守れない。


 みんなを守ると決めたからには、頑張るんだ!

 俺は心の中で喝を入れる。


 充分な休憩を取った後、立ち上がる。

 何度か息を整えて、


 「やるよ!走り込み!」

 『その調子だ』


 こうして、俺は禍丸の指導の元、屋敷の周りの走り込みを始めた。









 30分後、


 「ぜぇ!ぜぇ!ぜぇ!ぜぇ!ぜぇ!」


 口から悲鳴のような息が漏れる。


 もう限界だ。

 もう走れない。


 ただの走り込みって、こんなに疲れるんだ。


 やっぱり、辛いものは辛い。


 「しょ、宵明様…大丈夫ですか?」


 いつも屋敷の正門を警備している武士の人が心配そうに声を掛ける。

 俺は何とか、大丈夫と言う。


 『ふむ…十分な体力を付けるには、時間が掛かりそうだな』


 禍丸はそう言って、息も絶え絶えな俺を大きな背中に乗せて、屋敷まで連れてってくれた。


 その日から、俺の鍛錬は午前に霊力操作向上の『周天巡霊』、午後は肉体強化と体力作りも兼ねて、禍丸付き添いの元、屋敷の周りの走り込みが始まった。




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