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転生召喚『黒龍』記  作者: 緑楊 彰浩
第二章 アクアセルシス王国
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アクアセルシス王国1






 エリスを助けてから3日。船はアクアセルシス王国の港へと無事にたどり着いた。時刻は間もなくお昼になる。

 船から降りたエリス達は城からの使いで来たという人物は、1時頃に城から迎えがくることを告げると立ち去って行った。

 船で生活をしている間姿を見ることがなかったアルトは、配達員に当てられた専用の部屋にずっといたという。船であった騒ぎには気がついていたが、沈むことはないだろうと判断して大人しくしていたのだ。

 そしてアルトは、配達へと向かうためにエリス達に手を振ると一足先にアクアセルシス王国内へと歩いて行ってしまった。

「それにしても、アクアセルシス王国って大きいんだな」

「1つの都市が国になっていますからね」

 目の前を冷蔵庫を積んだ馬車が通りすぎていく。「アクアセルシス王国で冷蔵庫が作られているんだな」と龍は呟き、目の前を通り過ぎる人物を見て驚いた。

「携帯?」

 手に持っているのは、携帯のようなものだったのだだ。だが、龍が見たことのある携帯とは違う。だから疑問形なのだ。

 龍の声が聞こえたのか、目の前を通り過ぎようとしていた人物は立ち止まると龍を見た。その目は驚きからなのか、見開かれていた。

「あんた、もしかして転生者か!?」

 その言葉に龍は、目の前にいる彼は転生者なのだと理解した。今まで一度も転生者に会ったことはない。しかし、彼の言葉から転生者が存在することを知っているのだとわかる。それが本人なのか、身近な存在なのかはわからないが。

 龍は自分は召喚されたが、生きていた世界で死亡したから転生したようなものだと思っているため頷いた。

 すると、目の前の彼は嬉しそうに微笑んだ。

「久しぶりに転生者に会ったよ。俺はエルフのイツキ」

「あ、前の俺と同じ苗字」

「そうなの? 俺は以前の名前までは覚えてないな。転生前は携帯を作ってたってくらいかな、覚えてるのは。だから、この世界でも何かに使えないかと思ってるんだけど……同じものを持ってる一定範囲内にいる者としか連絡できなくて」

 そう言うイツキは携帯を見て悩んでいる。小さく呟いているイツキは、「充電は自分の魔力だからいいんだけど、販売するには不便すぎるし使えない。それに、通信以外の機能もつけないとこの世界では不要」などと携帯の機能に悩んでいるようだ。

「あんたは、どんな携帯を使ってたんだ?」

 突然話題を振られた龍は自分が携帯を所持していなかったことを告げた。そして、自分の知っている形態はイツキの持っている薄いものではなく折りたたみできるものだったことを告げた。

「ってことは、あんたは俺より前の時代の人間だったってことか……転生ってのは、時代は関係ないのかっと、そろそろ行かないと。あんた、名前は?」

「龍」

「じゃあな、龍。また会おうな」

 そう言うとイツキは足早に立ち去って行った。元々何処かへ向かっていたのだろう。

 はじめて会った転生者――イツキ。彼のこと名から、他にも転生者がいるのだとわかる。それだけではなく、時代は関係ないようだ。龍のほうが生きていた時代は古いようだったが、イツキの見た目は30代だった。しかし、エルフであるためもっと歳をとっているかもしれない。

「龍は『イツキ』って名前だったのね」

 イツキと会話をしている間ずっと黙っていたエリスが龍を見て言った。けれど、教えてくれなかったことには不満そうだ。

「記憶が戻ったから名前は思い出したし、別に教えなくてもいいかなと……今は龍だから。それに、名前ってか苗字。名前は別にある」

「それは?」

「機会があれば教える」

 今は教えないという意味を込めて龍が言うとエリスは少し残念そうに「そう」と呟いた。

 そして、残されたエリス達は城から来る迎えを待つ間どうするかと話すことにした。このまま何もせずにここで待つのか、それとも観光でもするのか。

「ずっとここにいても暇だろうから、アクアセルシス王国を見て回るってどう?」

 リシャーナの言葉に、エリスが頷いた。1時間程度しか時間がないので、遠くに行かないことを約束すると、それぞれ分かれることになった。

 エリスは黒麒麟と白美とユキと一緒に店を見て回ることにしたようだ。そして、白龍はリシャーナとツェルンアイと回ることになったようだ。

 1人残されることになった龍に、「たまには1人で見て回るのもいろいろと発見があるかもしれないわよ」とリシャーナが微笑みながら龍にだけ聞こえる声で言った。どうやらリシャーナがいつも誰かと一緒にいる龍を気にして、たまには1人で行動させようと思ったようだ。

 手を振る白龍に手を振り返しながら龍は、「せめて初めて訪れた場所じゃない所で1人にしてほしかった」と呟いた。ここでは迷子になってしまうかもしれないと思いながら、龍も歩き出した。

 お土産屋や飲食店などが港の近くにはあった。何処も多くの人が入ろうとは思えない。お腹が空いているわけでもないので、龍は港から離れることにした。

 そして、あるものが目についた。それは荷物を持ち運ぶ1人の男性。見覚えがある気がして、龍は立ち止まり黙って見つめていた。そして男性を何処で見たのかを思い出した。ウェスイフール王国の闇オークション。

 ウェスイフール王国の闇オークションで見た誰にも買われることのなかった白髪の人よりの獣人男性だったのだ。

 何故ここにいるのか。海を渡り荷物を運んでいる姿を見て、彼の前に1人の男性がいることに気がつく。どうやらその男性が彼を購入したようだ。

 足取りが遅いことに怒っているが、彼の持っている荷物は男性よりも明らかに多く重い。何故か龍はそれを黙って見ていることができずに、2人へと近づいた。













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