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転生召喚『黒龍』記  作者: 緑楊 彰浩
第一章 船に乗る
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船に乗る8








******






 リシャーナは海底へ向かってひたすら潜っていた。エリスが攫われてから時間がたっている。人間は改定へ潜っていけば、水圧に耐えきれなくなる。それだけではなく、息ができなくて死んでしまう。

 ――早く見つけないと。

 そう思いながらリシャーナは潜っていく。周りにはいつの間にかウミヘビが集まり始めているが、リシャーナが気にすることはなかった。

 潜り続けて3分ほどがたった頃、リシャーナは漸く目的のものを見つけた。しかし、それはその場に止まっており、まるで誰かが追いかけてくるのを待っていたようにも見える。その様子を見てリシャーナは不思議に思ったようだが、今はエリスを助けることが優先だと思い止まっているイカに近づいて行く。

「エリスを返してもらえないかしら? 人間は酸素がなければ死んでしまうのよ。……近くにあなたの主人がいるんでしょ? 聞いているんでしょ? このイカを殺されたくなかったら、エリスを放しなさい!!」

 リシャーナが水中でも言葉を発することができるのは、ゼグロウミヘビの血が混ざっているからだ。まだ意識のあったエリスが、口元を両手で覆いながら驚いたようにリシャーナを見ていた。エリスも知らなかったのだ。

「解放しないのなら、手加減はしない!!」

 そう言うとリシャーナの首の後ろにある鱗が体や頬に広がり始めた。それは、リシャーナが力を使おうとしているために広がっているのだ。リシャーナは今まで一度も力を使おうとしたことはない。誰かに鱗に覆われた姿を見られたくなかったからだ。

 それだけではない。リシャーナの力はウミヘビを強制的に操ることのできるもの。たとえ、ウミヘビが嫌だと思っていても関係なく操るためリシャーナはできるだけ使いたくないのだ。

 しかし、今は手段を選んでいる場合ではない。それにリシャーナにはわかっていた。周りに集まっているウミヘビ達が協力してくれるということを。

「お願い。エリスを捕らえている触手を攻撃して、エリスを助けて」

 静かな声で言ったリシャーナの目は赤くなっていた。そして、リシャーナの周りにいたウミヘビ達が言葉を聞いて触手へと向かって行く。

 毒をもつウミヘビも中にはいる。ウミヘビ達が大きく口を開け噛みつこうとした時、イカはエリスから触手を放した。

 ウミヘビ達は以下の側から離れず様子を見ており、リシャーナはエリスの腕を掴んで引き寄せた。まだ意識はあるようだが、意識を手放すのも時間の問題だろう。

「いい判断ね。もしもエリスを放さなかったら、どうなっていたか……ね」

 何もいない方向を見て言うリシャーナにエリスは疑問に思ったようだったが、いい加減酸素が吸いたくなり右手でリシャーナの服を軽く引っ張った。

 それだけで何を言いたいのかを理解したリシャーナは一度頷くと海面へ向かって泳ぎだした。ウミヘビ達はイカの側に止まり続けてついてくることはなかった。

 しかしリシャーナは知っている。2人が海面へ出たと同時にイカは海底へと潜って行ったことを。止まっていたウミヘビが教えてくれたのだ。水中にいたウミヘビの言葉はリシャーナに届いていた。

 ――それなら、あのイカの主人だかも一緒に潜ったのかしら? そのうちあったら一言文句を言ってあげなくちゃね。

 そう思いながら、リシャーナは船から投げ渡されたロープに繋がれた浮き輪を受け取った。





 無事船に戻ったエリスは小さく息を吐いた。濡れた服を着替えなくてはいけないが、怪我もなく戻れたことに安心したのだ。

 そして、戻ったエリスを心配する黒麒とは違い、龍はリシャーナを見て固まっていた。エリスを助けに行く前と見た目が異なっていれば驚くのも仕方がないだろう。

「力を使ったのよ」

 龍の様子に気がついて答えたリシャーナに、ゆっくりと目を閉じてから龍は口を開いた。

「クウォーターだったもんな」

 力を使えば、人間よりもゼグロウミヘビの血が強くなるから鱗で覆われるのだろうとリシャーナの言葉に龍は納得した。

「目も赤いけど、治るのか?」

「目は1時間くらいで戻るわ。鱗は明日には消えるから心配ないわよ」

 その言葉に龍は「そうか」と頷いた。手に持っているリシャーナのマフラーとバッグを渡し、エリスの元に向かおうとした時、壁に腕を組み凭れ掛かっているブランがいることに気がついた。

 いつからそこにいたのか龍にはわからなかった。しかし、黙って龍達を見ているブランの様子に龍はエリスの元に向かおうとしていた足を止めた。

 それによりどうやらブランは、龍に見られていると気がついたようだ。目を合わせると口元に笑みを浮かべて右手を軽く上げると船内へと入って行った。

 騒ぎに気がついて様子を見に来たのかもしれないが、龍は何故か騒ぎに気がついて様子を見にきたわけではないと思っていた。

 ブランとはこの船に乗っている時だけしか関わることはないだろう。だから気にしても仕方がないのだ。

 龍は横を通りエリスの元へと向かうリシャーナの後ろに続いてエリスの元へと歩き出した。

 船員からタオルを受け取った黒麒がエリスとリシャーナに手渡す様子を見ながら龍は、エリスとリシャーナが無事戻ったことに漸く安堵したのだった。っていることしかできなかった。













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