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8 : 王都の外

読んでいただきありがとうございます!

毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。

楽しんでいただけると幸いです。

評価の方もよろしくお願いいたします。

王都は貴族の家々が自発的に作った塀により、貴族街と下町で別れている。


また、下町と外を、魔獣の侵入や、戦争時の防衛として一枚の壁が隔てる。


僕は今日、初めて王都から外に出た。


冒険者以外ほとんど利用しない連峰側の北門を列になって出ていく。


今日が講習会初めての僕、そしてネリ。

十二、三歳くらいに見える短髪の男の子。

もう少し年上、成人である十八歳くらいの癖毛のお姉さんは隊列の真ん中に配置されていた。


他は、基本的に子供や成人したての人ばかりで、

合計で十五人くらいの人数になっていた。


そこに冒険者を引退して、講師や後進育成としてギルドに雇われたという壮年の男性が一人。

ギルドの受付をやっている元冒険者の女性が一人。


それなりの大所帯となっていた。


僕もネリも獲物がなかったから、いざってときのために木剣をもらっており、

それを腰に携えている。


これなら、危険はないだろう。

まぁ、当たり前か。

死人を出すようなら、講習会にならない。


今日は北門から森に入って少ししたところにあるスペースを拠点にし、

散策をするのが目的らしい。


つまり、実践寄りの日だった。


ゴブリン程度しか出ないであろう森は、

元冒険者が二人もいれば十分に安全と言える。


さらには何度も講習会に参加しているストーン(最下級)の冒険者もいるのだ。


森の中は、清廉(せいれん)な空気に満ちており、

森特有の青臭さはあるものの、糞尿臭い王都よりも何倍もマシだった。


王都の下町は風化した糞尿や、まだ捨てられてほやほやのものも道に落ちており、

ほぼボットントイレと同じ臭いが当たり一面に立ち込めていた。


下町にも冒険者に夜間に道端の糞尿回収の依頼があるにも関わらず、だ。


もう他の街に行く気も失せてしまう。


それに比べて森の空気のなんと美味しいことか。


僕やネリはこの中だと、それなりに裕福な家庭の生まれということもあり、

下町の臭いはことさらにきつく、

対照的に森の匂いは何倍もよく感じる。


二人して、何度も深呼吸をしていると、

目標地点だった場所についた。


太陽の光がぽっかりと空いた場所を照らし、

木々のさざめきが静かに聞こえている。


「おしっ、では二班に分けて散策を開始する」


男性の講師が指示をして、

二つのグループに分けられた。


一つが男性の講師を含む比較的散策に慣れたメンバーのグループ。

行く先はもう少し森の深いところらしい。


そして、もう一つが受付嬢の女性を含む初参加など不慣れなグループ。

このスペース周辺を散策する。


日が落ちると夜行性の魔獣が動きだすため、

昼を過ぎた頃をめどに散策が始まった。


生える草木はパッと見、地球とあまり変わりがなかった。

強(し)いていうのなら少しばかり背が高いことだろうか。


講師は太陽の位置を意識することや、

木登りをして連峰と太陽の位置から方角を把握する方法などを教えてくれた。


僕は前世での木登りや一年間の体力トレーニングもあり、すんなりと登れたが、

ネリは結構苦戦をしていた。


浅い森にも生えている有用なキノコや薬草、食用の植物などを見つける方法なども教わる。


でこぼこの地面や、うねる木の根、湿って滑りやすい土など、

散策するだけでも疲労が溜まる。


途中から僕とネリは集団から遅れ始めていた。

特にネリは疲労の色が濃かった。


僕が大丈夫かと声をかければ、大丈夫と強がるけれど、

汗がびっしょり出ていて、足元もおぼつかない。


講師に言って、僕たちは拠点で休んだ方がいいかもしれない。


僕たちが追いつくと、

他の人たちは木の上での簡易寝床の作り方のレクチャーを受けていた。


講師が僕たちの方へと近寄ってくる。


「拠点の方で休憩する?」


心配そうな表情だ。


ネリはもう木に上るのも無理そうだし、

僕もここで無茶をすると帰りがついていけなくなる。


ネリが何かを答える前に、

僕は「そうします」と言った。


今の場所から拠点はそう遠くなかったはずだ。


講師に改めて道を聞いて、僕とネリは歩き始めた。


太陽はちょうど真上に来ており、正午だとわかる。


「ごめん」


ネリがぼそりと呟いた。


気持ちはわかる。

時間的にも、あと何個か演習をすれば、今日の講習会は終わっていたはずだ。


「いいよ。僕も限界だったし」


口ではそう言っても、まだ歩く僕の足を見れば、

半分は嘘だとわかってしまう。


そこはもう仕方がない。


ネリは、それ以上何も言わなかった。


拠点へとつくと他に人はいない。

二人だけになった森の中は知らない世界に迷い込んだようだった。


木製の水筒はほとんど空だ。

他の人達が戻ってくるまで、ゆっくり休もう。


疲れた体をほぐすように、僕は伸びをした。

ほら、とネリを見れば、ネリも僕の前をして伸びをする。


ネリはまだ八歳だ。

精神年齢超過の似非(エセ)八歳とは違う。


「どうして、バンはそんな元気なの?」


少し体力の回復したネリはポツリと言った。


「毎日、訓練してるから」


「どんな?」


「走ったり、飛んだり?」


ランニングはいいとして、HIT トレーニングは口で説明するのが難しい。

体力が有り余っていれば目の前でやることもできるけど、

今はこれ以上体力を減らしたくない。


「私もやろうかな」


顔を上げたネリの目は、悔しさと、そして何かの強い気持ちが感じられた。


「いいけど、朝早いよ。まだ日が昇る前くらいに起きないと」


「大丈夫。早く寝る」


「そっか。ネリは冒険者になりたいの?」


「ちょっと憧れる。ずっと王都で暮らすのもなって」


女性の冒険者はもちろん、剣士も多いけれど、

魔法使いも多い。


これはまだ解明されていないけれど、

女性の方が男性よりも魔法が得意な人が多いらしい。


「魔法使いとか?」


「使ったことがないからわかんない」


まぁ、そっか。

基本的に魔法を使い始めるのは学園に入ってからだ。


十二歳ともなれば、それなりに頭も働き始める。

また、補助として、詠唱を行うことでイメージを固めることもできる。

それらを習うのだ。


がさりと音がした。

他の人が帰ってくるのには少し早かったはず。


僕たちを見ていたのは、青みがかった透明色の物体。

俗に言うスライムだった。

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