9 : vs スライム
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楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
スライム。
ファンタジーではおなじみの魔獣だ。
ただ作品によって強さがマチマチだ。
某有名 RPG ゲームなら最弱モンスターだし、
かと思えばライトノベルではそこそこの強敵であったりもする。
この世界ではどうかと言えば最弱の魔獣である。
何せ、水風船のような体なため移動速度そのものが低い。
感覚器官も発達しておらず、体を揺らす振動や、接触したものなどを頼りに周囲を把握するしかできない。
しかし、あくまでも戦える者にとっては、という注釈がつく。
魔獣は魔獣。
野生で生き残っていることからも生存能力が低いわけじゃない。
とりわけ危険と言われているのが消化液の噴射だ。
水鉄砲のように、対象にめがけて消化液が噴射される。
そして、溶けた肉液ごと取り込んで自身の体積を増やす生き物。
それがスライムだ。
スライムの厄介なところは消化液を振動源に向かって放出する手の早さだ。
しかも、消化液自体は物質だけれど、放出は獣魔法であるため、
方角は問わず、またそれなりに早い。
気づかずに近づかれ、一歩を踏み出した瞬間に足に消化液をかけられる事故は、
ストーンの冒険者を中心によくあると聞いた。
消化液自体は、すぐに水で落とせば軽いやけど程度で済むものの、
長時間放置すれば、ジュクジュクと皮膚や肉を溶かし始めるらしい。
木剣ではスライムは切ることができない。
膜を切れば、消化液が流れでて、核が露出する。
しかし、外部からの衝撃で核を叩くには僕たちでは力が足りなすぎる。
つまり、会った僕たちがするべきなのは立ち止まってやり過ごすか、
それとも、一か八か走って逃げること。
立ち止まることの危険性は仮にスライムの体が接触したとき、
鼓動を聞かれてしまえば即座に消化液が噴射されること。
逃げることの危険性は、そのまま後ろから狙い撃ちにされること。
それに僕としては溶けて死ぬのは勘弁願いたい。
まずは折衷案、木剣をスライムの出てきた方の木にぶつけて、隙を見る。
僕が木剣を抜こうとしたとき、ネリが転んだ。
初めて魔獣に合う恐怖。
そして、疲労の溜まる中で一か八か逃げ出すことを選択した判断ミス。
それらが自然とネリを地面に叩きつけた。
すぐさまスライムから消化液が噴射された。
しかし、幸いにもネリにはかからなかった。
転んだことにより姿勢が低くなり、また子供の身長だったこともあり、
斜め上へと噴射された消化液がそのままネリを通りすぎる。
スライムはじりじりとネリへの距離を詰めていく。
仕留めたと勘違いしたのかもしれない。
しかし、このままスライムに覆いかぶされれば、ネリは食べられる。
僕は振りかぶった木剣で近づいてきたスライムのわき腹をゴルフみたいに殴り飛ばした。
切れなくても少しでも遠くにやれば。
そんな僕の願いはポヨンとした軽い感触に断ち切られた。
迂闊だった。スライムの大きさはひざ下くらい。
つまり、直径二十五センチ程度の球体だ。
それの主成分が水と同じなら。
質量は一立法メートルの水が一トンであることから、
十キロくらい。
しかも、それが不定形で衝撃を逃がすとなれば、
子供の腕力で、しかも木剣で殴るだけならダメージなんてほとんどない。
スライムはちょっと動いただけで、すぐさま僕へと消化液を噴射した。
胸当ては至急されていたが、他の装備は特にない長そで長ズボンの僕。
至近距離で噴射された消化液は僕の両足へとかかった。
焼けるような痛みに座りこんでしまう。
しかも、近かったため、スライムは僕の足へと張り付いた。
片足が丸ごと飲み込まれる。
痛みで叫ぶ。
飲み込まれた足はみるみる溶けていき、
体積の大きくなったスライムはもう片方の足も飲み込む。
体の力が入らない。
痛みと失血で朦朧とする僕が最後に見たのは、
スライムへと木剣を振りかぶるネリだった。




