5 : 駆引き前の作戦会議
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六歳になった。
あれから、おつかいの頻度は増していき、
今ではラーロン商会と付き合いのある商会には一通り足を運んだことになった。
神童ともてはやされることはなけれども、
よくできた子だと褒められることも増えてきた。
両親からの評価も上々で、
その証拠にもらえるお小遣いの量が月にパディ銀貨一枚へと増えた。
パディ銀貨は、僕の住むパディ王国の由緒正しき銀貨であり、
初代国王のパディ一世の肖像が象られている。
パディ銀貨一枚は日本円換算でだいたい五千円ほど。
この国の一般市民の平均月収が十五万円、つまりパディ銀貨三十枚だとすれば、
六歳にして、まずまずの金額と言えるだろう。
もっぱら使い道は貯金である。
折を見て、ミツミ商会で冒険者用のグッズを買い揃えたくはあるが、
場合によっては両親から買ってもらえる可能性もあるので、
今はただ蓄えるばかりだ。
さて、そろそろ頃合いと見て、意を決した。
冒険者になりたいと打ち明けるとしよう。
だが、焦ってはいけない。
六歳の今ならば、仮に間違えたとしても幼子の幻想という形で終わらせられる。
まずは撤退ラインを定めよう。
目安は父の機嫌が悪くなる、または母が僕の教育について口を出し始めたとき。
それ以上進んでも、僕の稼いだ信頼が落ちるだけで、メリットはない。
仮に取りつく島もないと判断したら、隠れてコソコソやればいいのだ。
まだ下町に降りたことはないけれど、一度おつかいの寄り道で冒険者ギルドに行くのもいい。
ミツミ商会から出てきた人の好さそうな冒険者に手ほどきを頼むのでもいい。
次に成功ラインは、僕に対して実際に冒険者をしていた人が師につくこと。
つまり、冒険者になることに賛成してくれた上で、バックアップも厭わない状態だ。
冒険者という職業は聞くところによれば、ほとんど何でも屋だ。
人対人の戦争は、相手に賠償を支払わせられるから、国も騎士団を抱えられる。
しかし人対魔物は、要は害獣駆除の領域に近いうえ、野山に籠る必要があるなど、
人件費がバカにならず、金になる魔獣でないと、赤字が確定する。
だからこそ、一山当てたい。
有名になりたいなどの、輩が夢を見て冒険者を志し、
また国も個人が武力を持つ冒険者という存在を認めるのだ。
まぁ、騎士団も訓練や諸外国への軍事アピールのために、
迷宮に潜ることはあるそうなので、さもありなん。
ラーロン商会の主な取り扱いは魔獣の素材を使った家具や衣服などの日用品だ。
だからこそ、身内、それも家業を継がせる気のない末子であれば、
魔獣の素材を優先的に卸すことを条件に応援してくれる可能性がある。
妥協ラインは、冒険者ギルドがやっているという講習会への参加を勝ち取ることだ。
これは引退した冒険者が行っているもので、
サバイバル演習や簡単な戦闘訓練、そしてお金になる草花や木の実などを教えてくれるらしい。
いくら文明レベルが総合的に見て中世ヨーロッパとは言っても、
現存する人が愚かであるわけではない。
バタバタと冒険者を名乗る存在が死んでいけば、
いずれ冒険者そのものが立ち行かなくなる。
信用は無くすし、次代も育たない。
それに、夢見る若人が進んで死んでいく事を喜ぶほど、
末期な世界でもないのだから。
そんな状況で開催される講習会は初心者向けとはいえ、
しかししっかり冒険者としての現実を見せつけられるそうな。
両親が、現実を見て来いと言って、講習会への参加を許してくれるのは、
妥協ラインとしては丁度いい。
さて、方針も定まったことだし、いざ行かん。
夕食後が勝負所。
その日の終わりということでリラックスしており、
また一日の疲労も抱えている。
さらには食後、胃に血液が集まることで脳の働きが悪くなる。
下手に考えさせないという意味では最適だ。




