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4 : 初めてのおつかい

読んでいただきありがとうございます!

毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。

楽しんでいただけると幸いです。

評価の方もよろしくお願いいたします。

さて、恭(うやうや)しくもお手伝いを申し出ること、はや十数回。


遂にその日が訪れた。


「よろしい。もうじき六歳にもなることだし、一つおつかいを頼もう」


父はそう言って、棚から一つの小包を取り出した。


「少し歩いたところにあるミツミ商会にこれを届けてくれ」


そして、肩に吊るすタイプの鞄と、地図ももらう。


「くれぐれも物をなくさないように。寄り道をせず行って帰ってくるんだよ」


父は僕の頭を柔らかに撫でる。


「はい。行ってまいります」


僕は笑顔で家を歩き出た。


この世界に転生してからの僕の”世界”は家の中だけであった。


なにせ、幼子一人で歩かせられるほど治安はよくないし、

治安が良かったとしても想定外の事件や事故に巻き込まれないとも言えない。


さらに、中堅どころの商家の子息ともすれば、

狙われないとも限らないのだ。


だからこそ、基本的に一人での外出は許されず、

たまに家族で外食するときにだけ家から出ることを許された。


今の僕の体力は五歳の暮れごろにしては多い方であるし、

前世もあるから知能も高い方だろう。

しかし、所詮は子供だ。


神から最強の能力(チート)を得ているとか、

何か幼少の頃から鍛えれば望外の力を得られるだとか、

そうでもない限り、大人には敵わない。


そんな中、今日ようやっと父は僕の一人での外出を許してくれた。

これは、作戦がうまくいっていることを表すよい指標だ。


姉のイトスは十歳になるまでは家から出してもらえなかったことを考えれば、

大分進歩であるだろう。


まぁ、今回は近所と言って差し支えない所にある場所まで行くだけだ。

しかもミツミ商会はラーロン家の縁戚(えんせき)の家だ。

二代前にラーロン商会の次男坊が一部の事業を引き継ぐ形で独立したのがミツミ商会。

さらには、ここは裕福な家庭が集まる王都内でも二番目に治安が良い地区だ。

ちなみに一番は王場付近に近づくにつれ見えてくる貴族街となっている。


せめて六歳までには冒険者として、そして戦う者としての師を見つけたいところだ。

なにせ、前世では運動はからっきしだったのだから。


家を出ると微かに臭気が鼻につく。

まぁ糞尿を窓から投げ捨てる場所が、それなりに近くにあるとすれば仕方がない。

それに、我が家も含めて、基本的に庭に埋めているのだから、

その臭いもまったくしないというわけではない。


そう考えると冒険者というのは存外、良い身分かもしれない。

自然の中で生きていられるのだから、

命の危険と隣り合わせなことに目を瞑れば、森林セラピーもかくやのごとく、

清浄なる空気を肺にいっぱい取り込める。


うーん、最悪の場合は家でも視野に入れて活動しようか。


そんなことを考えているとミツミ商会の前までやってきていた。

地図を横目に歩くだけでもたどり着けるご近所さん。

ラーロン商会よりは一回りこじんまりとした商会は、

しかし客で賑わっていた。

扱っているのは冒険者や旅人のための、野外グッズ。

テントやリュックなどがメインだった。


小型の日用品も多いため、

一部都市暮らしの人にも需要がある。


そんな客層のせいだろうか。

ひどく汗臭い。


もう先ほどから臭い臭いとばかり言っている気がする。

家の中はお香が炊かれていて、人の臭気を感じさせないようになっていたがために、

余計にきつく感じる。


口で息をしながら、奥へと進む。

店番を任されたと見える若い女性が僕へと声をかけてきた。


「どうしたの。 僕」


「ラーロン商会の末子、バン・ラーロンです。ミツミさんにお届けものです」


メモ書きが縛られた小包を差し出す。


「あらあら、偉いのね」


女性は笑って奥へと入っていった。


しばらくして、どこか父の面影を感じる風貌の男性が出てきた。


「やぁ、見ない間に大きくなったね」


父とは違い人付きの浮かべる笑みではないものの、

落ち着いていて柔らかい笑みの御仁こそ、三年前に一度だけ会ったミツミ商会会長の、

リューゲル・ミツミだった。


「はい。お久しぶりです」


「覚えてくれていたとは嬉しいねぇ。それで何か届け物があるとか」


僕の手に視線をやったリューゲルに僕は小包を差し出した。


「ありがとう。確かに受け取ったよ」


軽くメモ書きを確認したリューゲルは微笑んだ。

そして、手に持った羽ペンでメモ書きの裏にまた何かを書き込んで渡してくる。


「それじゃあ、御父上によろしく」


メモに、寄り道するな、と書いてあったこともあり、

リューゲルは僕をすぐに帰した。


リューゲルと僕の関係は何て言うのだろうか。

父の兄弟ではなく、祖父の兄弟なのだから、

はとこ、だろうか。


まぁ、いいや。


とりあえず、これでおつかいは完了した。

さっさと家に戻ることとしよう。

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