55 : 次手 【残り二話】
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毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。
楽しんでいただけると幸いです。
真っ黒な空間。
龍は自分へと傷をつけたグラモロスへと執拗に岩石を落としていっていた。
グラモロスも素の速度なら僕と同じくらいあるから、避けに徹すればできないことはない。
でも、どんどんと追い詰められているのが見える。
それに、ネリ達のグループとも明確に分断が図られているのがスクリーンから俯瞰してみればわかった。
馬鹿なはずはないと思っていた。
なにせ、神が自らの手で始末するのは力を使い過ぎるとためらうほどの存在。
でも知恵比べでも負けたら、いよいよ僕たちでは勝ち目がなくなる。
いつもの能天気なカウントダウンがまったく始まらないことに気づく。
ずっと、スクリーンが出ているまま、僕はただそれを見せられていた。
僕の死体はもう、岩の下敷きになっているようで見えない。
グラモロスをある程度、遠ざけた龍は、ネリ達へと向き直った。
何をするつもりなのか。
嫌な想像が頭をめぐる。
おとぎ話では龍は自身の番にと、姫を望んだ。
では、龍の呪いで龍と同じ存在になろうとしている異性が現れたら。
捕まえるのではないだろうか。
龍は自分の体から黒い靄をゆっくりと放ち始めた。
ニリアの魔法が空気を切り裂き、鱗を一枚砕くけれど、まったくお構いなしだ。
アレに触れれば、ネリもニリアもどっちも、龍になる。
そんな気がした。
早く戦場に戻りたい。
それでも、カウントダウンは始まらない。
グラモロスが一度稜線から降りて、反対側の二人の場所へとたどり着くのが見えた。
龍の体から立ち上る靄は光を吸収し、そこだけ世界に穴が開いたように見える。
撤退。
その二文字が僕の頭をよぎる。
たぶん、三人もそうなのだろう。
こういうとき、一番現実的な選択を提案するのはグラモロスだった。
何かを言っているグラモロスに対して、ネリは首を横に振った。
いつもなら、復活していておかしくない僕が戻らない。
僕を死なせないと言ったネリなら、撤退を選ばないことはわかってしまう。
ニリアも同様だった。
戦線離脱は数秒でも仲間には負担が向かう。
それは迷宮内で何度もあったし、だからこそ、無駄死は避けるようになっていた。
今回の僕の行動は何も間違ってないはずだ。
グラモロスを助けた。
グラモロス一人でも、僕が生き返るまでの間なら死なずに耐えられると考えた。
それはその通りだった。
僕が生き返らないことを除いて。
真っ黒な空間は徐々にその色を失っていく。
まるで、龍の黒い靄に力を奪われるように。
どうして、神の空間は真っ白なのに、僕が死んでたどり着く場所は黒なのか。
考えなかったことがないとは言わない。
黒は、龍の色だ。
能天気な声が誰のものなのか、と思わなかったわけではない。
神ではないのなら、他に誰の声なのか、と。
スクリーンでは龍が口を開いていた。
ブレスなどの攻撃じゃない。
ゆっくりと、まさに今から話すように。
「この数年、なぜか儂の力が消えていくものだから、一体なんなのかと思っておった」
話している間にも靄は大きく、そしてより黒くなっていく。
ニリアやグラモロスが攻撃をしようとする度に、その眼前には魔力の寝られた真っ黒な黒曜石が出現し、遮られている。
「じゃが、まさか、誰かが儂の力の吸い出しておったとはのう」
僕の死んでも生き返る力。
龍を殺すチートは渡せないと言われたにも関わらず、何度もトライできる生き返りの力はもらえた。
それだけでは敵は倒せないとはいえ、しかし、まったくの使えない能力なんてわけではない。
むしろ、まるでゲームの勇者のように、死んだら教会で生き返るのと変わらない。
強くなるためにはあって損はない能力だった。
そんな力をどうして神は僕に授けたのか。
もとから、その世界にある力を別のところに移すだけだとしたら。
龍が一定程度弱まれば、神がその存在を消しても、余波という意味で問題がなくなるとしたら。
「でも、これで繋がりも切った。もう、あの小僧は・・・生き返らんよ」
三人の動きが止まった。
「そも、人の身には過ぎた力じゃろうて。まぁ、儂が言っても説得力はないのだがのぉ」
スクリーンからでは三人の表情ははっきりとは読み取れない。
でも、良い顔をしてないのだけはわかる。
今すぐにでも駆けつけたい。
けれど、それももうできない。
前世での死はそこまで僕にとっては重くなかった。
別にやりたいこともない人生だったから。
大切な人もいなかったし。
でも、今世は違う。
龍を倒すという目的はともかくとして、ネリや家族、ベルトルトさんに、グラモロス、ニリア。
ちゃんと、大事だと正面から言える人ができた。
そんな人と、こんな別れ方なんてしたくない。
「神が作った世界に一体だけの存在、それが儂じゃ。けれどのぉ、神は儂を作ってすぐに眠ってしまわれた。儂に、世界を見守れなどという意味のわからん命令だけを下してな」
龍は淡々と三人に語りかけていた。
そして、その間も靄はまだまだ出ている。
反対に、僕のいる場所は漂白されたみたいに白くなり始めた。
スクリーンすら、もうぼやけて見えずらくなっている。
死ぬのか、本当の意味で。
「じゃから、神が寝ている間に儂は力を貯めた。元から備わった敵などいないはずの力を、さらに強めたのじゃ。そうして、わかった。神は儂を殺せない」
もう音だけが聞こえている状態だった。
「それは強すぎるという意味ですか」
たぶん、ニリアの声だ。
気丈に振る舞っているけれど、震えている。
「いやいや、さすがに直接戦って神に勝てるなどとは言わんよ。ただ、儂も神の力を引き継いでいるせいで、少なくとも儂と神が争えば、せっかく作られたこの星もボロボロになる。それはそのまま、神自信の体を傷つけるのと変わらん」
「ならよ、俺らがお前を倒すのをやめて山を下りるなら、別にしてもいいのか?」
グラモロスの声だ。
声変わり前も覇気はあったけれど、今はそこに厚みが出てきている。
本人は、皇帝は向いていないというけれど、良い皇帝になれるんじゃないだろうか。
「そうはいかない。随分と儂の中の神の力が削られているからのぉ。少なくともお前さんだけは儂は食らわねばならんよ」
「そっか。俺さえ犠牲になれば二人は助かるんだな」
「いや、一人は残ってもらうぞ。反旗を翻すためには儂も儂と同等の存在を増やすしかないからのぉ。それこそ、お前さんらが徒党を組むのと同じじゃて」
聞こえる声すらも小さくなり始めた。
だんだんと瞼が重くなる。
僕たちは負けたのか。
そして、ほとんど意味もなく死ぬ。
今更ながらにあの神に腹が立ってきた。
僕が死ねば死ぬほどいいのなら、最初からそう言ってくれればよかったのに。
一度だけでいいから文句が言いたかった。
できることなら、せめて三人だけは助けてほしかった。
意識を手放す瞬間、神の声がする。
『龍を倒せ、それがお前の使命だ』
本話を含めてあと二話で完結です!
今日中にあと一本、投稿する予定ですので最後までお楽しみください。
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