53 : 登山と自然
読んでいただきありがとうございます!
毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。
楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
山のふもとまでは簡単に来れた。
もちろん魔獣はいたけど、もう僕たちの相手にはならなかった。
四人で連携すれば難なく倒せる。
僕たち全員迷宮に慣れ過ぎたせいで、魔獣がドロップ品に変わるのを待つ瞬間があるせいで、地上に慣れるまで毎回もたついたけど。
ここからは、正真正銘未開の地。
少なくとも、連峰に対して、北の森側から登った人はパディ王国の歴史上誰もいない。
「ニリアちゃん、準備はいい?」
ネリがニリアに甲斐甲斐しく質問する。
目覚めてから一年で、ネリはニリアを妹認定していた。
同じ龍の呪いを背負っているというのもあったけれど、僕たちの中で最年少で、
しかもネリは面倒見が良かったから。
「ネリさん、何度も言ってますけど子供扱いしないでください」
素っ気なく返すニリアも、もう何度も見ていた。
でも、ニリアもネリに心を許しているのは僕たちは知っている。
ニリアは皇女ゆえか警戒心が強い。
相手を否定したり、拒絶したりというのは、そもそも僕たち相手くらいにしかしない。
商家の娘として小さなころから多くの人を見ていたネリが見逃すはずもなく、
ニリアの言葉に「それはよかった」と笑って返していた。
そんな二人に僕とグラモロスも肩をすくめて笑う。
「それでは、行きます」
ニリアが全員の顔を見渡した。
前は三人だったから、パーティー内でのリーダーは特に決めてなかった。
でも四人、しかも僕とネリ、ゴルドラン兄妹で二対二になって意見が分かれる可能性が出てきたことで、
リーダーが必要になった。
といってもリーダー決めはすぐに終わった。
ニリア以外の三人が全員、ニリアを推薦したから。
ニリアは最初は渋っていたけれど、全員から頼まれ最終的には折れてくれた。
今の隊列は、ネリ、グラモロス、ニリア、僕という順番だった。
ネリが先頭でタンクを、グラモロスが隙を見て攻撃を、ニリアが指示出しと魔法での援護、場合によっては大技を、僕は一番後ろで状況を見ながら援護や攻撃などを。
今まで、僕が先頭だったから、一番後ろからゴルドラン兄妹の姿を眺めるのは新鮮だった。
そして見れば見るほど、グラモロスとニリアは兄妹だった。
動き方の癖などがほとんど同じだった。
ただ、グラモロスは少し豪快で、ニリアは少し繊細な動き方なのは、性質の違いだろう。
先頭を歩くネリは、実直かつ確実にずんずんと進んで行く。
最初は一人で戦うことも考えていたのに、今では仲間が三人もいる。
そのことが僕にとっては心強かった。
魔獣はそれなりに出てきた。
それなり、というのは迷宮よりは少なかったからだ。
そもそも、迷宮の魔獣は僕たちを見れば向こうから近づいて襲ってくる。
一部例外はいるけれど、弱いスライムから、強いブルー・ホーンまで、全部侵入者を殺すために動く。
けれど、森の魔獣はそうじゃない。
僕たちと同じで無駄な戦いはなるべく避けたい。
迷宮の魔獣と違うのは、生きるために戦うことが明確な点だろう。
だからこそ、気配は感じても襲ってくることはない、なんてことは一度や二度ではなかった。
これが、もし僕たちが弱ければ容赦なく食い殺されただろうけど。
自然の魔獣と迷宮の魔獣、どっちが強いかは冒険者の中でもたびたび議論にいなるけれど、
現在進行形で考えるなら迷宮の魔獣だというのが僕たちの総意だった。
何せ、迷宮の魔獣は死んでも気にしない体で戦いを挑んでくるから。
倒した魔獣の肉を食べ、流れる川の水を飲み、そしてさらに上へと進む。
前世なら、断崖絶壁はほとんどの人が登れないとなるものも、
身体能力が上がっている僕たちにとってみれば相対的に難易度は低くなる。
わりかし、スイスイと進む道中は、僕たちにとってはもはやレジャーのようだった。
夜は満点の星空が、朝は澄んだ空気に砕ける木漏れ日が。
森の中だからそこまで大声では話さないものの、和気あいあいと山の獣道を踏みしめる。
この旅が終われば、少なくとも仮面舞踏会は解散だ。
龍を倒し、呪いを解けば、もうグラモロスもニリアも皇子皇女として国に帰る。
十二歳で出会ってから三年。
それこそ、中学生が高校生になるまでずっと一緒にいるみたいなものだ。
仲良くならないはずがない。
でも、二人に仕える気もないから、一緒にはいけない。
皇都までなら、一緒に行ってもいいかもしれないけれど。
グラモロスとニリアがどう思っているのかは怖くて聞けてない。
どうでもいいと言われたら、連携に支障が出るくらい傷つきそうだし。
山肌に生えている木がなくなった。
森林限界だ。
空気が薄いせいで木が生えることのできる高さは決まっている。
そして、そこに足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのがわかった。
空気が冷たいこともある。
でも、それ以上に強大な存在が待っているのがわかる。
今の僕たちで倒せるのかは、わからない。
でも、ネリとニリアの龍化速度から考えてもこれ以上は準備ができなかった。
やるしかない。
作戦は一応考えてきていた。
それが全部だめなら、僕とネリで敵の攻撃を引きつけながら、その都度作戦をニリアが考えて指示を出す。
吹き荒れる風を斬るようにして僕たちは歩みを進め、そしてとうとう山の頂上へと足をかける。
連峰ではあるけど、山の一つ一つが小さいわけではない。
そして、今登っている山は連峰の中でもひときわ大きい。
登り切ってから、初めてわかったことだけれど、山の中心部にへこみがあり、そしてへこみを囲うようにして稜線がある形だった。
砂山の一番上に小さなお椀をめり込ませたみたいな感じだ。
その中心部、空気がカゲロウのように揺らめくほどの魔力に身を包んだ一体の魔獣がいた。
黒い鱗、金色の瞳。
そして、ブルー・ホーンを三倍ほど大きくした巨体。
この世界の頂点、龍だった。




