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44 : 二十階層と遭難

読んでいただきありがとうございます!

毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。

楽しんでいただけると幸いです。

評価の方もよろしくお願いいたします。

僕たちは細心の注意を払っていたと思うし、実際、それまで出てきた魔獣は問題なく倒せていた。


言い訳と言われれば、そうだけれど、あれを回避できる冒険者なんて、人間やめているプラチナランクしかいないだろう。


簡単に言ってしまえば、鉄砲水に押し流されたのだ。


地図にも書かれてなかった迷宮の異変。


狭い通路は逃げ場などなく、水の流れに沿ってひたすら下へのルートから離れていく。


僕もゴルドラン兄妹の二人も泳ぐことはできなかったが、ニリアの張った逆取水の魔法の中にいたおかげでおぼれることはなかった。


逆取水の魔法とは、取水の魔法が水を集めるのに対して、その名の通り水を決めた範囲から外に出す魔法だ。


僕が空気中の水の話をアイデアとしてニリアに話した時、ニリアは、ならば、と思いついたらしい。


ただ、空間を固定するのは難しいらしく、というのも入り続ける水をずっとその範囲から取り出す必要があってキリがないから。

ビニールのボールのように、空気の膜を作ってから、その中に水が入らないようにするという手順を取るしかなかったと言っていた。


もし、無限の魔力があれば、それもできたのだろうけれど、さすがにそんなことにはならない。


そこそこの激流が僕たちを運んだ先は、もうどこかもわからなかった。


迷宮内の水は透明度が高かったけど、ないせ薄暗いうえに流れていたせいでマップの把握すらできなかった。


ここが二十階層なのか、それともそれより下の階層なのかもわからなかった。


でも、僕たちは慌てることはなかった。


むしろ、宝玉へと導かれている。


そんな気がしていたから。


とはいっても、できればいつでも戻れる状態にしておきたかったのは事実だし、もしこれが当てが外れてただの迷宮内の事故ならば、一気に最悪な状況になる。


どの階層にも食料を素材としてドロップする魔獣がいることは知られているけれど、

でも、その魔獣に会えるかどうかは結局運次第なのだ。


そして、もう一つ。

スタート地点が不明な場合、魔獣が出てきた道が下へと繋がっているという攻略法が使えなくなる。


もし、元の本筋の道に逆方向から来た場合、魔獣は背を向けている可能性が高い。

しかし、自分が本筋の道に向かう方向に進んでいるのか、それとも離れる方向に進んでいるのかがわからない場合、魔獣の来た道がより離れる方向なのか、それとも本筋に戻れるのかは判断がつかない。


そこでニリアが出した提案は、すごくシンプルなものだった。


どっちから流されてきたのかはわかっているのだから、そのまま前へと進もうというものだ。

例えば上から下へと流されたのなら、そのまま下方向に進むという意味だ。


なぜ、上へと戻らないのかと聞けば、途中で道が折れ曲がっている場合、途中で迷宮の外に向かっているのか、それとも下へと向かっているのかがわからなくなるから、らしい。


けれど、鉄砲水で流されたことを前提にすれば、少なくとも本筋からより離れた方向に行ったことは確かなのだから、そのまま進んで行く場合に限り、まだ攻略法は生きている、と。


他に指針もないため、僕たちは真っすぐ前へ進むことにした。


ここ最近、パーティー内ではニリアの考えが採用される割合が高まってきた。

それは、魔法で普段から脳トレに近いことをしているからでもあるだろうけれど、

それ以上にもともとの性質も大きい気がする。


グラモロスに聞いたら、それこそ第一皇子よりも頭のデキはいいらしい。

皇子二人が妹に玉座を押し付けようとしているのは、何も嫌だからだけではないと聞いて少し安心した。


道を進んで行くと人魚の男(マーマン)がでてきた。

水路の中でじっと僕たちを伺っている。


次の瞬間、一瞬にして僕たちの背後の岩壁を放出された水が穿(うが)った。

僕がグラモロスを突き飛ばさなければ、もうグラモロスは死んでいただろう。


グラモロス自身は僕よりパワーはあるし、武具を外したときの移動速度はもうほとんど僕と変わらない。

でも、感覚的なものに関しては僕の方が一枚上手だった。


ニリアは、雷撃の魔法を水に向かって打ち込んだ。


雷が指向性を持って空気を切り裂く。

雷鳴が洞窟内を反響し、水面がはじけ飛んだ。


浮かんでいたのは、魔石だった。


「二十階層にマーマンがいるのは知っていましたが、魔法が想像よりもずっと強力ですね」


ニリアは魔石を回収しながら言った。

確かに、今あの魔法に対応しようと思ったら、僕が咄嗟にかばうか、それともニリアの探索魔法を常時発動するか、しかない。


ただ、他の冒険者たちとは違って僕たちにだけできる対処方があった。


「次からは水路側を僕が歩くよ」


これなら、いざってときに二人をかばえるし、最悪僕が肉壁になればいいだけだ。


「頼むわ」


グラモロスがそう言うと、ニリアは少しだけ渋い顔をした。

ここ最近、ニリアは僕が死ぬことに対して思うところがあるような素振りを見せる。


でも、僕も、そしてグラモロスも気づいていないふりをした。

グラモロスはニリアを助けるため、そして僕はネリを助けるため。

この力を有効活用しない手はない。


例えば、地雷が埋まっている平原だとしても、僕がいれば、地面にダイブしては地雷を除去することを繰り返せる。そうすれば進行速度は落ちない。


マーマンは魚肉を落とす。

生で食べた人はいないみたいだけど、着火の魔法がある冒険者なら、その場で火あぶりにできるから心配はいらない。


その後も何度かマーマンに襲われながらも、僕が回避をしてはニリアが雷撃を放つコンボで前と進む。

マーマンは自分から一番近い相手しか狙わなかったため、かばう必要もなくやりやすかった。


今は位置がわからないということもあり、魚肉がドロップすれば、魔石を捨ててでも優先的に拾っていく。


流されてから、この方、ほとんどがマーマンだっため、ほぼニリアしか魔獣を倒してなかった。

別に、倒したものだけが強化されるというわけではないけれど、でも一度もダメージを与えてない人が強化されるという話も聞いたことがない。


僕とグラモロスは確実に強化の機会を失っている。

たまに出てくる魔獣は僕とグラモロスが交代で倒しているけれど、でもそれだけだと不安だった。

この階層でも階層主と戦うことになれば、そのときにニリアだけに負担が集中するかもしれない。


水路は流れがあるから、泳いだことがない人が、その中で戦うことはできない。

また逆取水の魔法もニリアしか使えないうえ、あれも流されてしまうから、戦いようが限られてくる。


不安を募らせながらも進んで行くと、明らかに下へ通じるような坂道を見つけた。


その場所に行くまでに水路は先細りになり、ひとまず、いきなりまたマーマンばかりとの戦闘にはならなそうだった。


ただ、安心はできない。


僕たちは、おそらく二十一階層になる場所へと足を踏み入れた。


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