43 : 十四歳と仮面舞踏会
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楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
十四歳になった。
フィアーム・エイプの特異個体を倒してから二年。
僕たちのパーティ『仮面舞踏会』は有名になっていた。
それは強さという意味よりも、ある特異性においてだ。
仮面舞踏会は十階層から十九階層までの全ての特異個体を倒している。
これは、現在三十階層を突破した攻略班でも起きてないことだった。
出てくる武具は、速さなら僕、魔力ならニリア、力ならグラモロスへと割り振り、
また防御力の上がるものは基本的にはグラモロスとニリアに渡す。
代りに僕は魔獣の素材を優先的にもらって実家へと送っているから不満はない。
そも、あれから死んだ回数は数知れず、最初はネリの面影もちらついていたけれど、
今では通常行動の一つとなっている。
幸いにも僕が生き返る力を持っていることをしっているのは、あれからもトルドーさんとゴルドラン兄妹だけだから、絶対にネリには黙っててもらう。
冒険者ランクは、僕たち全員がシルバーになったばっかりだ。
さすがに二十階層の特異個体を倒せるのはシルバーの上澄み以上になってくる。
そんなパーティーをブロンズにしておくのは、強さという指標を狂わせるかもしれないとの判断らしい。
二重階層を超えると、森のような雰囲気から一転する。
一言でいえば洞窟だ。
これだけ言うと迷宮自体洞窟みたいなものでは、と思われるかもしれないけれどそうではない。
本当に洞窟なのだ。
一階層から九階層までは人工物然とした迷路。
十階層から十九階層までは森やジャングルのような天然の迷路。
だとすれば、ここからは鍾乳洞や地下水脈などがある洞窟なのだ。
迷宮石は以前変わらず照らしてくれるが、その光は緑から青色へと変わり、夜の海のような雰囲気だった。
そして、二十階層は僕たち、というよりは僕にとって重要な階層になる。
『龍と姫』の童話における僧侶が宝玉を手に入れた階層も二十二階層だと言われている。
つまり、僕が迷宮に潜る目的は、もうすぐ手に入る。
もうじきネリを目覚めさせることができる。
かもしれない、ではあるけれど、予感がある。
僕たちは二重階層全部の地図を買い、また食料もリュックに入るだけ入れて迷宮へと入った。
今は荷物持ちはニリアがやっている。
いくつか理由があるけれど、後衛だというのが大きい。
あれからニリアの魔法はさらにパワーアップしていた。
十七階層の階層主が使っていた獣魔法は三百六十度把握するものはニリアが今最も多く使う魔法になっていた。もちろん多くの人にとっては情報量の多さから処理しきれない魔法であり、僕もグラモロスも自分たちから近い範囲しか探れない。
そして、それくらいの範囲であれば、魔獣を倒すことにより強化された感覚で普通に割り出せるから、使う必要もない。
ニリアがこの魔法を多用するのは、より正確に魔法を打ち込むためだった。
今、ニリアが二年前に遭遇した特異個体が率いるフィアーム・エイプの群れに遭遇しても、
ほぼ瞬殺に近いことができるだろう。
ただ、ニリアのこのパワーアップは一つ問題もあった。
一部が龍化し始めた影響なのだ。
もう今のニリアの目は完全に金色であり、また喉にはイボのように黒いできものがあった。
竜種にもみられる逆鱗だ。
今は黒のチョーカーで隠すのが日常になっているくらいだ。
これは僕たちとトルドーさんを含めた四人の結論だけど、
このペースならたぶん二年後には龍になってしまうくらいの龍化速度だった。
そして、龍化ではないもののグラモロスの筋力の成長も著しかった。
もともと魔獣をほとんど倒していないのに僕よりもパワーがあったからポテンシャルは高かったのだろうけれど、魔獣を頻繁に倒すようになってから顕著になった。
僕もグラモロスは十四歳になったことで体は大人へと近づき、二人とも声変わりも済んでいた。
しかし、それだけでは説明がつかないほどのパワーだ。
武具を外した状態ですら、トルドーさんに腕相撲で勝っていたのだ。
僕はまだ勝てていない。
そして、僕の成長は自体はまぁ普通だった。
もちろん、他の冒険者に比べて強くなる速度は速い。
でも、倒している魔獣を考えると、ゴルドラン兄妹に比べて異質に早いわけじゃない。
武具の影響もあり、個人の戦闘能力という意味では二人に置いてかれないで済んでいる。
けれど、それだけだと足手まといになるかもしれないということで、
僕は僕で前世の知識も活かした戦い方を身に着けようと、この二年修行した。
前世ではマジックなどで使われるミスディレクション。
それを応用したのだ。
もちろん、マジシャンでもなければ、マジックの練習もしたことない僕は細かい技能は知らなかった。
だから、一個一個試していった。
相手の視線を逸らす、誘導するテクニックくらいしかわからなかったから、
暇なときに、ゴルドラン兄妹やトルドー夫妻に相手をしてもらう。
最初はゴブリンの魔石など、小さいものをどっちの手に隠したかを当ててもらう遊びをしていた。
だんだんとコツが掴めてくると、今度は大きな魔石。
そして、それもできるようになったら、弱い魔獣に見つからずに正面から背後に回るなどといった具合だ。
あとは足音を立てずに移動したり、また息遣いでバレないように呼吸法をあれこれ試したり。
中途半端な知識ばかりであっても、知ってるだけでも方向性が決まるから、教養というのは馬鹿にならないのかもしれない。
僕たちは、どうせ出会うだろう二十階層の特異個体へと気を引き締めながら、洞窟然とした道を進んで行った。




