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41 : vs フィアーム・エイプ - その弐

読んでいただきありがとうございます!

毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。

楽しんでいただけると幸いです。

評価の方もよろしくお願いいたします。

煙幕は森で使えば拡散していく。


迷宮の中では通路に充満するので、その限りではないけれど、この階層においては木々の隙間を縫って広がっていってしまう。


前までは僕はこの問題に対処ができなかった。


でも、風を魔法で出せるようになってから、煙幕をとどめておくことができるようになった。


方法は単純で球体に渦を巻くように風を流すだけだ。


速度もいらないし、密度を濃くする必要もなく、またモノを切れるように薄くする必要もない。


だから、範囲が広くでも魔力量はそこまで消費しない。


それこそ、さっき地面に放った粘着性の蜘蛛糸の魔法くらいだ。


煙幕と火矢を使い、包囲を抜け出した僕はフィアーム・エイプの背後を取っては首を飛ばし、少し遠くの奴へと狙いを変えることを繰り返していた。


一体、二体、三体。


フィアーム・エイプたちも異変には気づいているようだけれど、ウロコヘビとは違って目に頼りきっている戦闘スタイルのため煙幕で視界さへ封じればこっちが先手を取れる。


もちろん、僕と同じように第六感で反応する個体もいるけれど、それでも標的を定めている僕よりは遅かった。


迷宮の魔獣は成長できない。

人は迷宮だろうが、外だろうが魔獣を倒せば強くなれる。

また外の魔獣においては他の魔獣を倒して魔石を食べている個体は強くなるなどの噂がある。

実際、長生きの魔獣ほど強力な傾向があるからだ。


でも、迷宮の魔獣はそれが難しい。

人を襲うように欲は設定されているようだけれど、魔獣同士で争う場面を見た冒険者はいない。


争いあわないと言い切れはしない。

でも、今まで迷宮ができてから数百年もの間、冒険者が誰も見ていないのだから可能性は低いだろう。


状況証拠として、同じ階層の魔獣の強さは常に一定であうという観測もある。


戦い方がうまい魔獣自体は話に昇ることがあるから、おそらく経験だけは強くなれる要素としてはあるのだろうけど。


対して、僕はフィアーム・エイプを倒すごとに少しずつ体のキレが増していくのがわかった。


何せ、ブロンズ昇格レベルの魔獣を何体も倒しているのだ。

黒のウロコヘビほど急激でないにしても、確実にこの瞬間にも強くなっていっている。


これなら、楽勝かもしれない。

何せ、死んでもなければ怪我すらもしていないのだから。


しかし、数え、二十体を倒した時、異変に気付いた。


まだフィアーム・エイプが残っている。


もちろん、さっきはざっとでしか数えていないから、数え間違えただけかもしれないけれど、

それにしては残っている数が多い。


走りながらも、周囲の気配を探っていると背後に当然フィアーム・エイプが現れた。


さっきまでは、何もいなかったはずなのに。


両手を組んで殴りつけられた僕は避けられずに頭に食らう。


気づいたら真っ暗な部屋にいた。


何かに殺されたらしい。


スクリーンには煙が晴れていく様子が映っていた。


それを見て、ギョッとする。


僕たちが戦っていた場所までフィアーム・エイプが来ていたのだ。


もちろん、一体だけだけれど。


もし、僕がフィアーム・エイプを倒した瞬間から、他の場所でポップした新しい個体がこの場所へと来るようになっていたら。


最悪もいいところだ。


なぜ、この場所なのか。

場所そのものが重要かもしれないし、特殊個体がいることが理由なのかもしれない。


でも、この自然を模した階層の中で、通常は群れで存在するフィアーム・エイプが、群れを為すには。


一体一体なら、ポップした場所から決まったルートを徘徊(はいかい)すればいい。


でも、群れなら。

群れごとリポップは難しいはずだ。


もし、迷宮内の魔獣を一定に保とうとするのなら、群れが全員やられない限りは再度リポップできない。

しかし、それでは中途半端に生き残りがいる場合、迷宮内の魔獣が一定にならない。


なら、どうするか。

別々にリポップさせて集合させればいい。


しかし、魔獣は決まったルートを徘徊する。

特殊個体を除いては。


同じ場所にリポップさせても、一つのところに集合させてしまってはそこだけ、常にフィアーム・エイプがいる場所となる。


けれど、十階層の地図にはフィアーム・エイプのたまり場なんていう情報はなかった。

仮にあれば、僕たちは普通に避けて通っただろう。


そこで一つ、十階層の地図に書かれていた注釈を思い出した。

『十階層から下の階層において群れで活動する魔獣はルート探索には使えない』


最初は、そうなのか、くらいにしか思ってなかった。

でも、もし群れで活動する魔獣がボス個体を目印にして集合するのなら、どうだろうか。

これなら、徘徊するボス個体に対して他の魔獣は引っ張られるため、ルート探索には使えなくなる。


しかも、この階層のボス個体は、同時に階層主でもあるわけだ。

つまり、フィアーム・エイプは群れとしてランダムにいろんな場所に出現することになる。


カウントダウンが終わり、迷宮へと体が戻された。

この二日の疲労は取れていたから、死んだのは良しとしよう。


でも、フィアーム・エイプはもう十体は集まっていた。


これが、リポップと移動の結果なら早すぎる。

群れの数も調整されていたのだとしたら。


背筋が凍る。

ここから、どれだけフィアーム・エイプを倒しても、この階層全体からフィアーム・エイプはこの場所に供給され続けることになる。


氷柱の魔法が溶けた先、見えてきたのはゴルドラン兄妹が満身創痍(まんしんそうい)でボロボロになっている姿だった。

ただ、フィアーム・エイプの特殊個体も腕が一本、そして、体にも切り傷が多数入っている。


あの二人が倒しきるのを待つのは現実的かどうか。


今さらながらに、もう一つ勘違いに気づいた。

仮に囚われたとしたら、特殊個体と一緒に階層を彷徨(さまよ)い続けることになる。

つまり、助けを呼ばれたところで、そもそも発見されるかすらわからない。


僕としても二人を逃がすだけでは、実質的な死になる可能性もある。


ここで特殊個体を倒しきらないといけない。


僕は、粘着力を上げた蜘蛛糸の魔法をフィアーム・エイプの集団と、地面に二発放ち、

そのまま特殊個体へと突っ込む。


新しく来た個体は、さっきと同じように蜘蛛糸の魔法を警戒している。


その間に三人で倒しきる。


「ボスを倒す! 雑魚は無限湧きに近い」


もちろん、意味や意図が全部伝わらなくてもいい。

ただ、ボスを三人で倒す方向へ協力できればそれでいい。


前衛としてボスと戦っているグラモロスは返事を返す余裕すらなさそうだった。

体の至るところが青く打ち身ができている。


でも、ニリアは周囲に視線を走らせてフィアーム・エイプが一体増えるところを目撃した。


目を見開いたのは一瞬で、すぐにグラモロスへの援護へと戻る。


「僕ごとやっていい」


僕はそう叫び、ボス個体の背後に飛び掛かった。

そのまま、頭にしがみつく。


幼い子供が親の肩車中に頭を抱え込むように。

グラモロスが、隙を見逃さずボス個体の腕をさらに一本切り落とした。

ボス個体は着火の魔法でその傷口をすぐに焼き切った。


本能的な行動なのだろうか。

切られてすぐに出た火は僕の足ごとあぶった。


痛みでうめく。

ただ、それを前提で飛び込んだのだ。


時間はない。

僕は自分ごと、取水の魔法でフィアーム・エイプの頭を覆った。


僕を剥がそうと何度も殴ってくる。

肋骨が折れ、足も変な方向に曲げられる。


意識を手放す瞬間、浮遊感に襲われた。


再び来た真っ暗な部屋。


スクリーンでは、片足を切り飛ばされたボス個体が地面に倒れ、そこに氷柱が突き刺さる瞬間が映し出されていた。


僕の死とともに解除された取水の魔法はあたりを水浸しにしており、

僕の死体は氷柱が突き刺さってるわ、片方の足はただれ、片方の足はひしゃげているという散々な有様だった。


ボス個体はまだ息があるのか、二本の腕と一本の足で立とうとしていた。


でも、その隙を見逃すほどゴルドラン兄妹は優しくない。

ニリアがとどめとばかりにさらに氷柱を落とした。


カウントダウンが終わり、迷宮へと戻ってくる。


疲弊しきった二人に、他のフィアーム・エイプの相手はつらいだろう。


「あとは任せて」


僕はリュックから煙玉を取り出した。

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