39 : 階層主
読んでいただきありがとうございます!
毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。
楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
次の日もまた、昨日と同じ隊列で迷宮の中を進んでいく。
ゴルドラン兄妹は早くも歩き方に慣れ始めたのか、進む速度を少し上げてもついてくるようになった。
道中、ポイズン・スパイダーに遭遇したが難なく倒すことができた。
僕が先陣を切って片側の足を二本切り落とし、それにより速度の落ちたポイズン・スパイダーにニリアが風刃の魔法を放つ。
さらに足を削られ、動きを止めた瞬間をグラモロスが脳天をかち割った。
ポイズン・スパイダーに出会うのは初めてだったけれど今の僕とだと僕の方が少し早い。
僕も、ブロンズの中堅レベルくらいにはなれただろうか。
そんな自分の成長を嚙み締めつつも、ゴルドラン兄妹の強さに驚く。
魔獣を倒し始めたのは迷宮都市リビランに来てからだそうなので、それこそ一年足らずでここまで強くなったらしい。
しかも、戦闘方法は城にいるときに習ったとはいえ、こっちに来てから倒した魔獣はよくてオーク程度らしい。
それなのに、そこまで強くなれるのだろうか。
僕とはポテンシャルの差を感じていた。
ただ、龍を倒す仲間が強いに越したことはないので、嫉妬よりも素直に喜ばしい。
「二人はアイアンになって、まだ日が浅いんだっけ?」
進むのに余裕が出てきたので、聞きたかったことを口にした。
「ああ、それこそ、一か月くらい前じゃないか。ニリアが冒険者登録したのが、八か月まえだから」
「それがどうかしたんですか?」
「ああ、ポイズン・スパイダーは僕のいたパディ王国の王都近くの森でも出る魔獣でね。ブロンズへのランクアップの指標に使われるくらいの強さだったから、ドロップした魔石を出せば二人ともブロンズに上がれないのかなって」
「難しいと思いますよ」
ニリアはトルドーから聞いた、迷宮都市特有のランクアップについて教えてくれた。
この都市では、通常の依頼よりも迷宮からの採集依頼の方が多い。
そこには、魔石からドロップ品、そしてオーク肉やポイズン・スパイダーの蜘蛛糸などの素材がある。
しかし、例えば誰も依頼を出していなかったけれど、有用なものがドロップしたとしたら。
迷宮都市の冒険者ギルドでは、それも成果としてカウントする方式を作った。
それが、逆依頼。
逆依頼と言っても、冒険者が依頼するのではなく、その価値をギルド側は判断して、それに応じて依頼を達成したことにする制度だ。
これにより、迷宮にひたすら潜り強くなっていく冒険者や、攻略班に参加しているシルバーランクやゴールドランクなどが、信頼度や強さにも関わらずランクアップが遅れるという問題を防いでいるらしい。
しかし、ゴルドラン兄妹はまだアイアンになって日が浅く、基本はトルドーさんの言いつけ通り、まずは外でも狩っていたゴブリンやスライム程度しか狩ってないないらしい。
それらの魔獣は大陸中どこでも出現するし、当然ドロップ品の価値も高くない。
アイアンになるのは簡単だけれど、さすがにブロンズレベルへはまだまだ逆依頼の達成数が少ないそうだ。
「まぁ、バン様と一緒に十階層付近を探索していれば、すぐにランクアップはできそうですけど」
そう言って、ニリアは自身が背負うリュックを上半身を回転させる形で見せてきた。
ここまで、魔石以外は基本全部ドロップ品を捨ててきたけれど、それでもリュックの外からも魔石のふくらみがわかるくらいにはドロップ品が溜まっている。
それは、僕とグラモロスのリュックも同じだった。
「俺らがブロンズであった方がいい理由があるのか?」
グラモロスが怪訝そうに聞いてきた。
「ないけど、パーティーメンバーとランクが違うって、ゴールドとかプラチナレベルじゃない限り、あんまり聞かないからさ。同じ方がいいかなって。二人だって、僕のおこぼれをもらってるとか言われても嫌でしょ」
そう口にしながら、もしネリが目が覚めたときシルバーに僕がなっていたら、ランクが違うことになるのかと思ってしまう。
「「気にしない」」
二人の声が揃った。
「俺が強さは変らないから、どうでもいいな」
「隠れ蓑にできるというのなら、むしろ都合がいいです」
きっぱりと告げる二人を見て、少し眩しさを感じる。
こういうウジウジした部分があるのは僕だけなのだろうか。
前世の影響なのか、それとも僕個人の問題なのか。
はたまた、二人がリアリストなだけなのか。
ネリがいれば、聞けたのになぁ。
「そっか。ならいいんだけど」
僕は少しバツが悪くなって、地図を確認することを提案した。
ついでにお腹も減ってきたから休むことも。
地図は代表してニリアが持っており、それによるとこの階層の全体の四分の三くらいの進度らへんに休憩できるスペースがあるらしい。
そこまで進み、腰を下ろす。
歩きなれていない二人がいるとはいえ、おおよそ七、八時間は進み続けて十階層の四分の三。
しかも、地図があって、だ。
この下の階層はまた、少し大きくなっていることも考えれば、それこそ一日頑張って二階層くらいが限界かもしれない。
「下へ降りる道を見つけたら引き返すのが良さそうですね」
ニリアの意見に、僕もグラモロスも頷いた。
食料は途中で倒した魔獣からのドロップ品を食べればなんとかなるし、一日くらいは何も食べずとも問題ない。
けれど、もし疲弊した状態で、強い魔獣と出会ったら。
それを考えると無理をしないに越したことはない。
いくら冒険者と言っても、冒険イコール無謀をするというわけではないはずだ。
休憩の後、さらに進んでいると、周囲の森がざわざわと騒がしくなった。
風のない迷宮内で木々がさざめくのなら、魔獣か、人か。
ただ、階層の広さから言っても特定の階層で他の冒険者に会うことは滅多にない。
地図に書かれたルートを歩いていれば、たまにすれ違う程度だけれど、その場合は進路の方向からしか音が聞こえないはずだった。
つまり、周囲が騒がしくなるのなら、それは魔獣であるだろうと予想ができる。
僕たちは一斉に戦闘態勢を取った。
この階層で見られる魔獣は、ポイズン・スパイダーやホブゴブリンなど北の森にも生息する魔獣から、
他の地方の森や、山に生息する魔獣まで幅広くいる。
けれど、多数で群れを成す魔獣はホブゴブリン、そしてフィアーム・エイプだけだった。
黒のウロコヘビを倒したことにより、磨かれた感覚は即座に危険を察知した。
これは、少なくともこの階層レベルの魔獣じゃない。
ポイズン・スパイダーすら危険だと感じなくなった僕の体が、鳥肌を立ててるのだ。
しかも、気づいたときには囲まれていて、僕を囮にして逃げる作戦すらも使えそうにない。
先陣をきって出てきたのは、黒い毛皮に赤い瞳、大人と同じくらいの背丈で、四つ腕の猿だった。
その後ろから、白い毛皮で赤い瞳、最初に出てきた個体よりも一回り小さい体の、四つ腕の猿も出てくる。
フィアーム・エイプ。
強さは、ポイズン・スパイダーやウロコヘビよりも少し強い程度。
それが群れを成すことが脅威度を上げているのに、しかも、最初に出てきたのは特殊個体だ。




