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29 : 迷宮第一階層

読んでいただきありがとうございます!

毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。

楽しんでいただけると幸いです。

評価の方もよろしくお願いいたします。

食料を買い込んだ僕は迷宮の中へと足を踏み入れた。


順番待ちの列は昼過ぎになっても変わらず存在し、時間を測る道具もないから体感にはなるが、

三十分ほどかかった。


何でそんなに、と思ったが、まず登録時に渡された証明書、そして冒険者プレートをパーティーメンバー分確認していたのだ。


僕は一人だったから、すんなり進めるかと思ったが一人で入ること自体を訝(いぶか)しまれていくつか質問された。


この年でブロンズであることも作用して信じてもらえはしたけれど、他の冒険者からの視線も珍しいものをみるようだった。


そのときに言われたのは、一人で迷宮に入るのはプラチナランクの冒険者が大半で、少なくともゴールドよりもしたの冒険者では見たことがないとのことだった。


僕も元々は一人で来ようとは思ってなかったのだから、さもありなん。


十数人が横一列に並んでも入れるような巨大な階段を下に降りる。


迷宮の中は遊園地にある室内型のアトラクションのように冷えていて薄暗かった。


迷宮石と呼ばれる薄緑の自発的な発光をするタイプの石が壁に埋め込まれてなかったら、

暗闇だっただろう。


この石自体に大きく利用価値があるとも思うけれど、迷宮の壁は原則として壊せず、

また壊せるだけの力を加えてしまったら石も一緒に砕けるから、迷宮外では使われていないのだとか。


迷宮と聞くと、入ってすぐに小道が枝分かれした迷路があると想像していたけど実体は全然違った。


最初に入った部屋は大広間のような空間で、それこそ上に立っているパルテノン神殿風の建造物と同じだけの広さが確保されているように見えた。


そこには、武具類の最終チェックをしている冒険者などがいる。


また迷宮から出ようとする人、入ろうとする人で、ぎゅうぎゅう詰めではないけれど、混雑していた。


入口で検査に時間がかけられたのは、もしかしたら、入ろうとする人のタイミングをわずかにでもズラす意味もあるのかもしれない。


さて、ここには魔獣は湧きそうもないから、先へ進もう。


この迷宮いやらしいのが一本道ではないところだ。


入った最初の空間から、もう五本の道に枝分かれしており、

そのどれもが二メートルの正方形くらいの広さの道であった。


どこを選んでも下の階層へと行けるらしく、またどの道も中で繋がったりもしているらしい。


十年前、この道の先が大きく変化したことにより、

一階層、つまり今いる階層、ですら、まだ完全なマップが作られているわけではないらしい。


おおよそ百年周期で道が変わるというのは、迷宮の攻略を阻んでいるようにも思える。


実際、現在の到達記録は三十二階層であるし、

童話に出てくる僧侶が潜ったとされるのも二十階層程度だとされていた。


最深部は何階層で、そこまでにどれだけ強い魔獣が出てくるのか、については誰も知らない。


さらにお宝まで得られるとすれば、多くの冒険者が地上の魔獣討伐ではなく、迷宮へと魅せられるのも納得だった。


ちなみに、今の三十二階層の記録は三十年前、プラチナランクの冒険者がパーティーを組んで到達したところらしい。


ただ、三十二階層の魔獣があまりにも強すぎて、それ以上は進めなかったそうだ。


迷宮内の地図はギルドで販売されており、僕は一階層の地図だけを買っていた。


全部買わなかったのは、そもそもお金にそこまで余裕がないのと、

地図がどこまで信頼できるかを一度確かめたかったからだ。


地図によると、迷宮に入って、左から二番目の通路を通ることが、

もっとも早くに階層へと行けるらしかった。


歩いて観光しながらでもいいけれど、買った食料にも限度があるし、

一階層は冒険者とすれ違う可能性があるくらいには人が多いから、

走って見て回ろう。


僕は、王都でしていたランニングのような形で、迷宮を走り出した。


前世だと人が多い場所では走ってはいけませんと教えられていたけれど、

この迷宮ならその限りではない。


というか、勝てないほど強大な魔獣に襲われれば脱兎のごとく逃げるしかないのだ。


おあつらえ向きに通路も広いし、走ることに注意する人もいない。


もちろん、慎重に進まなければならない階層だと、どうしたって歩くことにはなるだろうけど。


死体や糞尿が消えるせいか、迷宮内は魔獣の巣窟であるにも関わらず、清浄な空気を感じる。


それこそ森の中のように思わず深呼吸したくなった。


迷宮石も遠くを見れば光る星のように瞬いており綺麗だった。


魔獣もほとんどいないから、道さえわかっていれば本当にただのランニングだった。


一階層は出たとしてもゴブリン程度であり、さらにはアイアン以上しか冒険者がいないのだから、

出てきても瞬殺されるのだろうか。


ものの数十分で下への階段を見つけた。


ファンタジーとかだと、階層ボスみたいなのが下への道を塞(ふさ)いでいたりもするけれど、

この世界の迷宮にはそんなものはなかった。


もし、迷宮で階層ボスというものを定義するとしたら、特異個体の魔獣だろうか。


必ず、同じ瞬間に一体は存在するとされ、また一度倒すと一日は見かけないという、

なんともシステマチックな出現をする魔獣だ。


もうこれは自然にできたなんてことはないと確信できる。


ただ、どうして神がコレを作ったのかもよくわからなかった。


可能性があるとすれば、神からの贈り物を渡すのに都合が良かっただけなのかもしれない。


この迷宮だけに特殊ルールを付与することで、世界への関与を限定的にできる。


ただ、それをするのなら、龍を倒す存在は、最初からプラチナランクの冒険者に頼めばよかったのでは、という気がしないでもない。


まぁ、今考えても仕方がない。


さて、地図は正しかったし、魔獣に出会わなかったこともあり、むしろ、

誘拐などの犯罪に巻き込まれるかもしれない王都の下町の方が危険なのではないだろうか。


下への階段を下りるが、周りの様子は一階層とあまり変わりがない。


ただ、こっから先は道を知らないから、手探りで迷路を踏破することになる。


現状下へ向かう道筋が分かっているのは二十四階層までだから、そこまで地図を買ってしまってもいいけれど、そこから先は自分で道を見つけていく必要がある。


二階層目をチュートリアルとして、自分の足で下への道を見つけようかな。


しかし、わかっている道をただ走るだけで数十分。

迷宮は下の階層へ行くほど、階層全体の面積が大きくなるらしいから、

思った以上に難敵かもしれない。


単純な実力が化け物のプラチナ、ゴールドランクの冒険者が攻略に挑んでも、まだ二十四階層であるということが、作った人間の性格の悪さを伺える。


人はしょせん動物であるということをつきつけられたみたいだった。

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