25 : ランクアップと決闘
読んでいただきありがとうございます!
毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。
楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
ウロコヘビを倒してから数日、僕とネリは北の森の巡回へと戻っていた。
明らかに以前とは異なる力、速さが僕たちにはあり、
偶然発見したホブゴブリンの集落も問題なく二人で倒すことができた。
強い魔獣を倒すと、より強くなる、というのは俄然信憑性を帯びる。
北の森はだんだんと以前のような状態へと戻り始めたのを僕とネリは感じていた。
浅い層にはゴブリンやスライムしかいなかったし、オークなどの魔獣も滅多に見なくなる。
しかし、同時に僕とネリがこれ以上強くなるためには森の深層から連峰へと進むか、
もしくは戦闘経験をより詰むために別の都市へと旅立つか。
けれど、ベルトルトさんが言うには僕とネリではまだ連峰の魔獣は厳しいらしい。
ベルトルトさんですら、今行けば生きて帰れるかもわからないと言っていた。
もうじき、王都を離れることになるかもしれない。
それは、僕とネリがここ最近感じていたことだった。
まだ、王族へとウロコヘビの魔石は献上されていない。
でも、そうなれば、貴族の家にお呼ばれすることになるのかもしれない。
もちろんん、一冒険者である僕やネリが実際にやるべきことはないけれど、
商家の子供である僕たちは貴族とやりとりをするだけでも面倒なことを知っていた。
そうなる前、となれば、もうそこまで時間は残っていない。
ギルドへと行き、報告を済ませて、ベルトルトさんの家を訪ねる。
ベルトルトさんの家は何回か行ったことがある。
下町の中の一軒家だ。
そこまで大きくなく、しかし手狭にもならない適度な大きさの家は冒険者の美学を感じられる。
中へと招き入れられて、今後のことについて相談する。
冒険者の師匠は、単に戦う術を教えてくれるだけでなく、その道の先達としても導いてくれるから、有難かった。
これがもし、どこかの道場の門下生となっていたら、少なくとも師匠に身の振り方を聞くことはできなかっただろうから。
「俺は護衛依頼がおすすめだな」
ベルトルトさんによれば、護衛依頼はいい鍛錬になるらしい。
誰かを守りながら戦うことは、周囲をよりよく見ることを強制される。
さらには、盗賊など人相手の戦闘経験も積むことができ、
また戦闘に限らず護衛を雇う貴族や商人とのやり取りの経験もつめるということで、
高位の冒険者を目指したいのなら、やっていて損はないそうだ。
「まぁ、二人とも商家の子供だから、あんまし必要ねぇかもしんねぇけど。
ただ、ある程度安全に旅をするってことだけを考えても護衛依頼はいいと思うぞ」
正直、だれかについてきてほしい気持ちがあった。
ネリと二人なら、心細くはない。
でも、いざってときに頼れる大人がいない場所に行くのは不安だ。
「ついてかねぇぞ。それだと、俺に頼っちまうだろうが」
その通りなので何も言えない。
モノを教わるという意味では両親以上に親であったベルトルトさんが隣にいれば、
僕もネリもどこかで甘えてしまう。
「まぁ、そうだな。ブロンズの昇格祝いに装備を一緒に選ぶくらいならしてもいいぞ」
僕とネリは即座に飛びついた。
鉄剣は武器として悪くはない。
けれど、ウロコヘビと戦って、武器の性能に不満を持ったのも事実だったから。
それに何より、ベルトルトさんとどこかへ出掛けるのが久しぶりで、楽しみだった。
やってきたのは武器屋だった。
この鉄剣を買った場所だ。
改めて自分の剣を見ると、ところどころへこんでおり、表面には細かな傷が無数についている。
鉄剣より上の装備となると、鋼鉄の剣、そしてそれ以上になるとミスリル。
さらに上はアダマンタイトとなっている。
ミスリルの剣はルキトも持っているもので、一本で金貨が何枚も飛ぶ。
アダマンタイトになれば、もはや貴族すらもおいそれと買うことはできず、
ゴールドランクの冒険者の上位層か、ともすればプラチナランクくらいしかない、
希少かつ強力な武器となる。
ベルトルトさんが進めてくれたのは鋼鉄の剣だった。
鉄剣よりも強度が高く、その分だけ薄くされていることで切れ味や取り回しのしやすさが上がった武器は、鉄剣の上位互換とも呼べる。
試しに振ってみると、その軽さに驚いた。
ただ、軽すぎる気もした。
「これだと叩き潰せない」
ネリは不満そうな顔をした。
僕も同じ意見だ。
鉄剣であれば殴り倒せる敵も、鋼鉄の剣だと難しそうだった。
「当たり前だ。これは切ることを前提にした剣だからな」
店主が、わかってないな、とでも言わんばかりに鼻を鳴らす。
「ネリ。ウロコヘビをぶつ切りにできないのは、お前らが未熟だからだ。
そして、その未熟さを鉄剣はカバーしちまう。
なにせ、鈍器として殴れば相手が倒れるとなれば、剣の腕を磨かなくなっちまうからな」
「それは・・・そうだけど」
ネリが反論できないのは、僕やネリの剣の腕が最近伸び悩んでいることもあった。
もちろん成長はしている。
けれど、身体能力の成長に比べて、剣は人並み程度にしか伸びていない。
「まぁ、俺のはあくまでもより技術を磨くためのおすすめであって絶対じゃない。
ゴールドランクに昇る奴の中には最初は剣だったが、後々単なる棒を武器にして殴殺するような奴もいる。身体能力でゴリ押すのだって、勝てれば立派な戦術だからな」
ネリは少し悩んだ末、鋼鉄の剣を買うことに決めた。
僕はもともと悩んでいない。
今はまだ体が小さいから、身体能力で押すのには限界があるし、
そもそも仮に成熟しきっても体重的に上には上がいるだろうから。
それに、龍を殴りで殺せるとは到底思えない。
今は、龍を倒すという目標はおいているだけのような状態だが、
それでも、そこを目指して強くなろうという気持ちは消えてない。
僕とネリは自分たちの財布からお金を出した。
ここで師匠に出させないのが弟子孝行だと思ってる。
ベルトルトさんは出しかけた財布をしまい、生意気な奴らだと笑った。
その後、防具は少し上等なものを買い、中に着るも同様に耐久性の高いものにする。
いよいよ、王都から離れる準備が整ったとき、両親へと報告をする。
二人はウロコヘビの話も知っているからか、信頼して送り出してくれることになった。
また、兄のガルーダは、魔獣の牙で作られた短刀をプレゼントして送ってくれた。
そして、学園を卒業し、家を手伝い始めた姉のイトスからは新しい水筒をもらう。
護衛依頼の商家は、何度か僕がおつかいに行ったことがあるところで、
扱っているのは森で取れる薬草や、それをもとに作られたポーションなどだ。
僕もネリも顔見知りであり、また若くしてブロンズに上がった冒険者ということもあり、
快く雇ってくれた。
護衛依頼は少し特殊で、魔獣の素材の納品依頼が素材を納品すれば冒険者が誰であっても問題ないのに対し、護衛依頼はあらかじめ面談がある。
だから、護衛依頼を専門とする冒険者は身なりにも気を遣うし、顧客として長く雇ってもらうために信頼関係の構築もかかさない。
そんな中で商家の子供であるという利点を使ったことは後ろめたさもあるけれど、
そこは働きで返していこうと開き直っていた。
待ち合わせよりも早く南門を出る。
けれど、もう今日護衛するプルトット商会の馬車はそこにあった。
そして、もう一人。
見知った顔が待っている。
「おい、バン」
ルキトだった。
「俺と決闘しろ」




