22 : vs ウロコヘビ
読んでいただきありがとうございます!
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楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
真っ黒な部屋の中、僕はスクリーンを眺めていた。
また死んだ。
痛みや苦しみを感じる間もないほどに一瞬で。
画面の中では、ネリが体勢を立て直して木へと登り、枝の上を忍者のように飛び回っていた。
僕が生き返れることはネリも知っている。
それに、心を乱すな、はベルトルトさんの教えでもある。
ウロコヘビだと死ぬ前に思ったけれど、
よくよく見ると本当にウロコヘビかは怪しい。
ウロコヘビの色は藤色で、目は黒だと聞いていた。
しかし、今ネリを襲っているのは黒い鱗に金色の目の奴で、
配色は伝承に聞く龍と同じ。
それに、溜めた一撃が早いだけのはずなのに、
あの蛇の魔獣は移動速度そのものがずっと早い。
逃げ回るネリに追随するほどだ。
数年前に聞いたよりもずっと能天気な声がカウントを始めた。
魔獣がなんであるかはひとまず置いておこう。
まずは、どうやって倒すのか。
幸い、高低差を使えば逃げきる余裕はなくても、逃げ回る余裕くらいはある。
僕は気づくと地面に立っていた。
装備や服装は元通りになっていたことに首を捻りたくなるが、
今はそんなこと考えている場合ではない。
ネリが僕がリスキルされないために、遠くへと逃げてくれていたが、
あの魔獣はネリが一人で倒せるものじゃない。
僕は物音のする方へと全力でかけた。
修行のおかげで強化された肉体は、一回の跳躍で数メートル上にある枝へと着地する。
まずは小手調べだ。
僕は蜘蛛糸の魔法を移動するウロコヘビへとぶつけた。
強化も変化もさせていない昔と同じ蜘蛛糸は容易く突破される。
それどころか、僕へは一切目もくれず、淡々とネリを追い続けていた。
次は、前のものよりも魔力を練り、糸の強度上げてみたが、
これもウロコヘビの動きを遅くすることすらなかった。
蛇はピット器官と呼ばれる目と耳の間にある部位で温度変化を感知できる。
対象的に目は悪い。
ウロコヘビがどっちかはわからないけれど、
そこも確かめないことには逃げようもない。
ネリへと呼び掛けて僕の方へと来てもらうようにする。
ネリと僕が交差する瞬間、着火の魔法を空間に対して使う。
僕たちの姿を隠せるほどに大きく。
着火の魔法は火を出すことができるが、明らかに人の体温よりも高い。
もし、温度変化を感知することでネリの位置を特定しているのなら、
これで惑うはずだった。
しかし、上にいる僕すらもスルーしてネリを追い続けた。
熱感知じゃないのか。
それとも、追加で他の感知方法があるのか。
次にやることは煙幕だった。
対人間でも煙幕により相手の居場所を特定できなくさせるのには効果があるが、
目に頼る魔獣や動物相手なら、それ以上に効果がある。
人と違って、知恵を絞れない彼らは煙幕を吹き飛ばすことを能動的にはできないから。
背負ったリュックの中から動物のフンなどを混ぜた煙幕を投げる。
またネリに呼び掛けて、煙幕の中に突入するように誘導した。
煙幕は、その名の通りの効果を発揮しモクモクとあたりの木々を白い煙で覆い始めた。
閉じた空間じゃないから、時間は有限だけれど森の中だし、風もないから多少は残ってくれるはずだ。
しかし、煙幕は僕とネリにとっても危険な賭けであった。
なにせ、もしウロコヘビが目以外に感知方法を持っていたら、
僕たちだけが一方的に相手に位置を知られる。
これはあくまでも枝を飛び回っていれば、捕まらないことを前提にした作戦だったから、
いざってときは僕が囮になるためにも二人で並走して飛び回った。
後ろを振り返るとウロコヘビは先ほどと変わらぬ速度でついてきていた。
ならば、熱感知はやはりあるのだろうか。
煙幕の個数は後二個。
次は、着火の魔法と煙幕の合わせ技だ。
「煙幕お願い」
僕がネリに頼むとネリは片手でリュックの中を浅り煙幕を取り出した。
コンビネーションというほどではないが、
今まで一緒に修行した時間や、いざってときの対応のすり合わせのおかげで、
細かい説明がなくても行動を統一できるのは、僕たちの強みだった。
二人してタイミングを見計らい、ネリが煙幕を放ったタイミングで僕は着火の魔法を使う。
結果は成功だった。
ウロコヘビの動きが止まった。
今のスキに逃げようと、二人で森の出口方向へと動きだしたとき、
突風が僕たち二人を吹き飛ばした。
枝を蹴り上げた瞬間に風が襲ってきたため、
僕とネリはそのままバランスを崩しながら空へと舞い上がる。
木の高さの二倍ほどまでいき、そこから弧を描いて落下し始めた。
このままだとなす術がなくなる。
ウロコヘビが僕たちの落下地点へと着実に近づいてきてるのが見える。
そもそも、勢いを殺して上手く着地しなければ骨折は免れない。
この状況での骨折は、そのまま死を意味した。
しかし、今の僕には空中で推進力を生み出す魔法はない。
何か。
考える間もなく僕とネリは木の枝葉をこすりながら地面へと近づく。
目前にはウロコヘビの姿があった。
一瞬だけ、着地する時間が与えられれば、また木の上に逃げられる。
着火の魔法をできるだけの魔力を持って僕たちとウロコヘビの間へと出現させた。
火が出るのと同時に僕とネリは着地する。
僕がノータイムで木の上へと飛び上がったのと同時、ネリはその時間でウロコヘビへと剣を構えて突っ込んでいった。
「ネリっ」
思わず叫ぶが、出現した火の残像で上手く見れない。
そうか。
目の前に強い熱源。しかも火は光源ともなる。
最初から敵を目掛けて突っ込めば相手からも目くらましにできる。
すぐに視界が戻り、下を確認する。
ウロコヘビの固めには鉄剣が刺さっており、ネリはその脇をすり抜けると同時、
木の上へと戻ってきていた。
なんて度胸のある行動なのか。
ウロコヘビは痛みを感じているのか、その場でジタバタとする。
「ブイ」
ピースサインで笑うネリの顔は獰猛さが漂っている。
まるで、さっき殺された敵は取ったぜと言わんばかりだ。
そして、その目は同時にもう一つのことを語っていた。
僕のもつ鉄剣を寄越せ、と。
そして、今と同じ方法でもう片方の目を潰してやろう、と。
正直に言うと、そんな危険な方法はごめんだと断りたかった。
でも、他に有効打がない。
僕とネリではそもそもウロコヘビのウロコを貫通するだけの技はないから。
鉄剣を手渡して、下の魔獣を見下ろした。
残った目をまったく動かさず、僕とネリをじっと見つめてきた。
そして、龍のような足を生やす。
ゲームならこう言いたくなるところだろう。
第二段階、と。




