17 : 十歳と冒険者登録
読んでいただきありがとうございます!
毎日更新を目指したいところですが、ぼちぼち書いていきます。
楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
十歳になった。
あれから、二年。
基本的には北の森の浅い部分を中心に、
実践訓練に明け暮れる日々。
家の手伝いは週に三日あったが、それも難なくこなした。
ネリは冒険者になってから、一年でアイアン級の冒険者になった。
十歳で登録した人の中では早い方で、普通は一年半から二年くらいは必要になる。
十歳の子供が冒険者になってから、
ちゃんと冒険者として活動できるようになるまでにはそれなりに時間がかかる。
しかし、ネリはベルトルトさんに師事をして実戦経験を積んでいたし、
僕もだけれど、フォレストハウンドや、
灰色の羽をもつフクロウのような魔獣のアッシュ・オイレの討伐もしていた。
ここ最近、森の浅いところでは危険を感じることもなくなり、僕たちの成長も鈍化していた。
今日は僕が冒険者登録をする日で、ネリは絶対についていくと聞かなかったから三人でギルドへ行くことになった。
朝食を済ませると、母が僕を呼び止めた。
隣には父もいる。
「バン、冒険者になるという夢、変わっていないわね」
「うん、変わってない」
今更やめろだなんて言われると困るけれど、どうしようか。
「それならいいわ。でも、私たちの心配も、頭の隅に入れといて頂戴ね」
「わかった」
そして二人は、いってらっしゃい、と僕を送り出した。
冒険者登録が大げさなものでないことはネリが冒険者登録をした日に一緒だったから知っている。
それに、僕は死んでも生き返る能力がある。
部位を欠損した場合にどうなるのか、はまだ確認してないけれど、
二人を心配させるようなことにはならないはずだ。
家を出ると、ネリがすぐ近くで待っていた。
いつもなら、僕からミツミ商会に行くから、珍しい。
「おはよう。どうしたの?」
「ううん。なんとなく、私もたまには迎えに行こうかなって」
ネリは十二歳になっており、
頭一つ分、僕よりも背が高くなっていた。
まだ幼さは残るものの、大人への一歩を踏み出しているのがわかる。
比べて、僕はまだまだ肉体は子供のまんまだ。
一緒に手を繋いで歩けば、ほとんど姉弟のように見られるし、
実際、受付嬢たちからはそういう扱いを受けていた。
ギルド前でベルトルトさんが立っていた。
ベルトルトさんは少し老いが見え始め、最近は白髪が生えてきたことを愚痴っていた。
この世界の平均寿命は知らない。
そもそも、そんな公的データは存在していない。
それでも、両親の祖父母などの話を聞く限り、
病気や事故などでなければ七十歳くらいで死ぬらしい。
ベルトルトさんは四十五歳になったばかりだから、
まだまだ余裕はあるけれど、初老と言っても差し支えない年齢だ。
まぁ、身体能力はあいも変わらず図抜けており、
僕とネリでは二人がかりでも勝ててない。
本人は、衰えた、と口にすることが増えているけれど本当かどうか疑わしい。
ギルドの中を真っすぐ進んでいると、
最初の講習会のときに一緒になった少年のルキトがネリへと話しかけていた。
「ネリ、パーティーの話、考えてくれたか?」
ルキトはネリに惚れている。
ネリは、少し評判の美少女へとなっていた。
傾国の美姫と呼ぶほどではないだろうけど、集団にいれば確実に注目を集めるくらいだ。
それに、ベルトルトさんの弟子でもあり実力も確かだから、パーティーの誘いは多い。
ネリは今、家の手伝いをやめている。
一週間の内、半分を僕と師匠と訓練。
もう半分は冒険者の依頼をこなしていると本人が言っていた。
それもあってか、前までは僕とネリは拮抗していた力の差も追い抜かれ気味だ。
剣の修行は続けているけど、それだけだとネリに負けるから、魔法の修練の割合が増えた。
蜘蛛糸の魔法は射出速度を高めたし、
また範囲も調節できるようにした。
練りこめる魔力量には限度があるから、結局数秒の足止めにしか使えないけれど、
前に指摘された隙は小さくなったと思ってる。
ただ、剣だけでゴブリンなどを倒せるようになったこともあり、
空を飛ぶアッシュ・オイレくらいにしか使っていない。
もし、同等か格上に囲まれたときに使えるかはまだ試せていなかった。
けど、僕も冒険者として登録したら、
ベルトルトさんが北の森の少し深いところへ連れてってくれると約束してもらっている。
「ごめんなさい。私、バンとパーティーを組むから」
ネリは僕の手を取って、見せつけるように握った。
「俺の方が強いだろ」
何度も断られているせいか、ルキトの目は僕への敵対心に満ちていた。
そこで、ネリは言いよどんだ。
さすがにどれだけ訓練をしたところでブロンズを目前にした十五歳相手は敵わない。
魔法を使って、かつなんでもありなら、チャンスもあるかもしれないけれど、
さすがに剣だけで正々堂々だと身体能力で簡単に負けてしまう。
ネリは強さに真摯だから、僕の方が強いなんてことは言わないだろう。
なにせ、ネリもルキトと模擬戦をして負けたと言っていたのだから。
それは複雑で、もどかしい。
せめてネリと同い年だったら、と思わずにはいられない。
僕は死んでも生き返る。
囚われないようにだけ注意して、もっと命がけのトライ&エラーを繰り返す方がいいんじゃないか。
そんな思いがここ最近、ずっと頭の中を駆け巡っていた。
「なぁ、ネリ。冒険者は命がけの仕事だ。仮に今の間だけであっても足手まといを連れていたら、取り返しがつかないことになるかもしれない」
正論だった。
しかも反論も難しい。
ルキトは現在でも同じ年齢くらいの二人の男の子とパーティを組んでいるが、
ネリが負けるのはルキトだけだった。
だから、なら私もルキト達にとって足手まといだ、とは言い返せない。
膠着状態になった僕たちを見かねて、ベルトルトさんが口を出す。
「坊主、今日はバンの登録のために来てるから、勧誘ならまた今度してくれや」
ベルトルトさんも、勧誘するな、とまでは言わない。
実際、ベルトルトさんから見ても、ルキトのパーティーはそれなりの有望株らしい。
またルキトの誘い方も強引ではないから、誘うこと自体は禁止しない。
そこに縋りたくなる自分が少しみじめになる。
事の成り行きを見守っていた受付嬢の人は、
最初の講習会で講師をしていた女性だった。
「はぁ、バン君たちがこんなに大きくなったのは感慨深いわね」
いつも、講習会で会うたびに口にされる言葉は、
前世新卒社会人まで生きていた僕としては理解できる言葉だった。
子供の成長は早い。
それは、ネリを見ていても、ルキトを見ていても、
自分の兄姉を見ていても思うことだ。
他の人から見たら、僕の成長も早いのだろう。
受付嬢は丁寧に僕の名前を薄い石板へと彫り込んだ。
『バン・ラーロン』
そう書かれた石板に紐が通され、その手で首にかけてもらった。
「細かい説明は省くわね。応援しているわよ、バン君」
大きくなったとは言いつつも、子供扱いは変わらなかった。
今日はこの後、三人で北の森へと入る予定だったため気を引き締める。




