12 : 修行と魔法について
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楽しんでいただけると幸いです。
評価の方もよろしくお願いいたします。
「そんで、お前さんらが暇なのはいつだ?」
ベルトルトさんは地面に腰を下ろした。
僕たちも目の前に座る。
「だいたい週の半分くらい」
ネリが答える。
「僕もそれくらい。家の手伝いがあるから」
「そうか。まぁ、それでいい。そんで、今は何をやってる?」
そう聞かれて、僕は自身の体力とレーニングと瞑想のことを。
ネリは今日から一緒に僕と始めたことを伝えた。
「感心だな。冒険者にとって最も大事になるのは脚力だ。危険な相手や場所から逃げるのには脚力がないと始まらない。ここを怠るとあっけなく死んじまう。そうか、お前さんらはまだ七、八歳だもんな」
「そうだと、何かあるの?」
ネリが聞くと、ベルトルトさんは「見せたほうが早いか」と立ち上がった。
「冒険者にはいくつか使えたほうがいい魔法ってのがある。特に上を目指すならな」
そう言って、ベルトルトさんは手の平に水の球を出現させた。
それは僕がこの世界に来て、初めてちゃんと見る魔法だった。
例えば両親が料理をする際に火をつける魔法は使っていた。
しかし、危ないからという理由で基本的に近寄らせてもらえなかったから。
そして、それ以外の状況では日常生活で魔法を使う機会はない。
まぁ、そもそもこの世界の魔法は、魔術式でどうこうといった具合の汎用性や画一性があるものじゃないからなぁ。
「これは、言ってしまえば水を出す魔法だ。用途は多岐にわたる。傷口を洗う。体を清める。あとは、飲み水として使う、だな」
「飲めるの? それ」
単純に気になった。
何せ、どこから出てきたのかもわからない水だ。
「ああ、飲めるぞ。むしろ、自身が住んでいる地域から離れたところの水の方が腹を壊す」
ああ、そういえば前世でも引っ越した先や旅行先の水は飲むなと言われてたっけ。
「魔法、なんだよね」
ネリが確認を取るように言った。
「そうだな」
「つまり、それは魔力でできた水、なの?」
「いや、そういうわけじゃないらしい。この水を密閉した箱にどれだけ放置しても消えないからな。
まぁ、なぜなのかについては解明されてないから知らんとしか言いようがないな。
少なくとも冒険者としては、用途さえ知ってれば問題にはならんよ」
実際に俺は現役時代問題がなかったし、と説得力のある言葉が続く。
この世界は、それこそ空気の概念すらもまだあってないようなものだ。
予想だけれど、おそらく空気中の水分を集めているのだろう。
それならば、空気そのものが汚染されてない限りは安全に飲めるはずだ。
「それで次が火をつける魔法だな。家でも見たことあるだろ?」
ベルトルトさんは小指ほどの小さな火を灯して消した。
魔法を使える人は実はそこまで多くない。
理由は単純で、使えるようになる機会に恵まれないからだ。
確かにイメージを具体的かつ詳細にできれば魔法は発動できる。
しかし、ではイメージができるほどに身を賭して、現象を観察したり、
または魔獣と何度も戦って魔法そのものを観察したりする人がどれくらいいるのか、という話になる。
実際問題そういない。
文字がわかる人や、簡単な四則演算ができる人も少ない中で、
さらに魔法を使えるだけの思考力や想像力を鍛えている一般市民は少数派だ。
つまり、魔法を実用途として使うのは、
魔獣と何度も戦い、また必要に駆られて習得する冒険者。
生活に余裕のある商家や貴族、そして生まれ持った才能の豊かな庶子くらいになる。
学園に入るのにもお金が必要だからね。
僕たちが頷くと、ベルトルトさんは、続ける。
「冒険者をやってると、焚火は日常茶飯事だ。いちいち木をこすって火をつけるのも大変でな。
そもそも燃えやすい木を探すところから始める必要があるから時間もかかる。
だが、この魔法があれば、乾燥した枝葉さへあれば容易に着火できるから、重宝する」
ベルトルトさんはそこまで言うと、今度は右手の人差し指を天へと向けた。
指先はどんどんと明るさを増し、懐中電灯のような光を放った。
「今は日中だから、わかりやすくするために光を強めた。だが実際はもっと弱い光でも十分だな。
これは、光をつける魔法だ。魔獣が住み着く洞窟などは人のために作られたわけじゃない。
基本は太陽の光が届かない暗やみの世界だ。
迷宮はそのものに明かりを放つ石があるが、それでも薄暗いし、
場所によっては真っ暗だ。
しかし、地下だから火をつけることもできない。
そこで、使うのがコレだ。光を出すことができないと荷物持ちとしてですらパーティーに入れてもらえないぞ」
ベルトルトさんは光を消すと「とまぁ、こんな感じだ」と言った。
「今後俺が教えるのは基本的には三つの魔法の使い方。そして剣の振り方だ。ギルドでやってる講習会の方でも教えてるから、お前さんらは今後は講習会を毎回参加してもらうことになる。いいな?」
「「はいっ」」
僕とネリの声が重なった。
その日は僕たちが渡した銀貨を元手に最低限の装備、胸当てや靴、そして木剣などを買って終わった。
「バン、ネリ。毎日の体づくりだけはさぼるんじゃねぇぞ。幼少期に基礎を作れるかどうかは冒険者人生を左右するからな」
帰り際、ベルトルトさんは僕たちの頭を乱暴に撫でた。
初めて名前を呼ばれたため、僕とネリは顔を見合わせて笑った。




