表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80歳のおばあちゃんは龍の溺愛に気がつかない  作者: こもれびの空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/9

王宮への招待

 スイーツというのは、どうしてこうも幸せを運んでくれるのだろう?

 用意してくれていたのは、夕食を食べることを見越してだろう。

 小さなショコラティエが5粒。

 それとブラックコーヒーだ。


「ショコラティエ2粒は俺のだからな」


「言わなくても全部食べたりしないわよ。

 どれがいいの?」


「酒が入っている奴」


「それなら、ボンボンにすれば良いのに」


「ばーか。チョコとブランデーの相性は最高なんだぞ」


「じゃぁ、私もそれがいい」


「残念だなぁ。この世界で酒を口に出来るのは15歳からだ。

 お子様は無理だな」


「私はお子様じゃ」

 言いかけたところにポンとショコラティエが放り込まれた。


「甘~い、中もチョコだ。美味しいねー」

 ゆっくりと体温で溶けるチョコを堪能している間に、セレスはショコラティエを2粒食べ終わって、満足そうに珈琲を飲んでいる。


 私もコーヒーで口の中をリセット。

 チョコの後の珈琲は特別に美味しく感じる。

 ゆっくりと珈琲を堪能していると、ショコラティエの箱をセレスが閉じてしまった。


「何でよ。まだ1粒しか食べてないわ」


「後のお楽しみだ。時間がないのでね。

 誰かさんのせいで」


 その時ノックの音がして、人が尋ねてきた。


「入ってくれ、この娘だ。

 明日、王宮を訪問する。

 午前中の伺候になると思う。よろしく頼む」


「それではアフタヌーンドレスですね。

 御色のご希望はございますか?」


「青系統で頼む。私の婚約者なのだ」


「畏まりました、何点かご用意行ったしております。

 フィッテングルームをお借り出来ますか?」


 入ってきた女性は、持ってきた中から、いくつかの箱を選ぶと、それを隣室に運び込んだ。


「お嬢様、こちらへ」


 それからは着せ替え人形のように着付けられ、セレスのチェックを受けることを繰り返した。

 サイズを細かく測られ、記録される。

 その後はドレスを着たまま、細かくピンでとめてサイズを合わせる。

 そうしてようやく私は解放された。

 どの服が選ばれたのか、全く分からない。


「それでは薄水色のドレスは早朝。

 残りは夜までにお届けします」


 そう言って帰って行ったから、多分全部頼んだんだろう。

 どうでもいいけどね。

 疲れてちょっとやさぐれ気味の私にセレスはとどめを刺した。


「それじゃぁ、ちょと魔法の勉強をしとこうか」


 ちょっと散歩でもするかと言う気楽さでセレスは言った。

 魔法なんて使ったこともないのに。

 文句を言う暇もなかった。

 何故ならセレスが巨大な氷の槍を、私めがけて投げつけようとしていたから。


「ちょ!マテ!」


 私が叫んだ瞬間、槍は消えてしまい、セレスが私を抱きかかえていきなりキスをした。


 私がびっくりしていると、セレスはほっとした顔をする。


「あっぶねぇ、お前、魔法を放出し続けるような真似はやめろよ。

 危うく、俺もお前も魔法が使えなくなるところだった!」


「何わけわかんない事、言ってんのよ。

 それよりいきなりキスするなんて!」


 私が文句を続けようとすると、セレスが呆れたような顔をする。


「ナナお前、今どれだけ危険なことをしようとしたか、分かっているのか?」


「わかる訳ないじゃない。

 魔法なんて今始めて使ったのに」


 セレスはポイっとショコラティエの箱を投げてよこした。


「ほら、説明するから、それでも食べて落ち着け」


 私は座ってショコラを1粒口に入れる。

 最高に美味しい。

 じわっとした甘味が、心を落ち着かせてくれた。

 頃合いを見計らってセレスが珈琲を入れてくれた。

 落ち着く。

 しかもショコラはまだ1粒ある。

 私は、最後の1粒をセレスの口元に持って行った。


 ちょっと驚いた顔をしたセレスは、破顔するとパクリとショコラを食べた。

 セレスったら私の指まで食べてしまうのだから、余程ショコラが好きなのだろう。

 それなのに私に1粒余分にくれようとしたのだ。

 いい奴なのだ。本当に。


「今から説明することは、とても大事だから、その足りない頭にしっかり叩き込んでおけよ」


 相変わらず口が悪い。

 でもセレスが珍しく真剣だから、私も真面目な顏で頷いた。


「さっき、ナナが使った魔法は無効化だ。

 全ての魔法を無効にする。

 別名キャンセルともいう。

 それで、ナナは無効化の魔法を、槍を消した後も放ち続けていた。

 その場合、相手の魔法使いは、魔法を全て消滅させられてしまう。

 使った魔法だけでなく、魔法そのものがリセットされるんだ。

 そしてそれは、ナナ、お前も同じだ」


「えっと、相手の魔法だけキャンセルしたら魔法を止めないといけない。

 そうしないと、私も相手も魔法が使えなくなる。

 そう言う事なの?」


「そうだ。無効化魔法はとても希少で威力が大きい。

 魔法を使うには代償が必要だ。

 小さな魔法なら、魔力を消費するだけの事だ。

 けれど、大きい魔法は代償も大きくなるのだ」


「でも私、止め方なんて分からなかった」


「そうだね。だから発動条件を付けておくとよい。

 キャンセル、でも良いし、無効化と言うのでもよい。

 こころの中で言うのでも良いから、符丁となる言葉を決めて置け。

 そして使用するのは、その言葉を使った瞬間だけにするのだ。

 無効化魔法は持続する必要はないし、持続してはいけない。

 わかるな」


「少し練習しよう。僕が魔法を使う。

 ナナがそれを取り消す。分かったな」


 セレスは指先に小さな炎をだした。

「ノー」

 私が言うと炎は消えた。

 次に水、氷、つむじ風。

 全部「ノー」の一声で消えてしまう。

 凄く便利だ。


「ちゃんとやれているんだけれどさ。

 ノーって何なの?

 なんだかちょっとイラッて、するんだけれど」


「うーん、昔犬を飼っていてさ、いけない事をするとノーって教えていたから」


「もしかして、あれか?

 俺、犬扱いされてたのか?」


「違うから。

 たださっきみたいに急に攻撃されると、とっさに技名なんて出ないもの。

 でも、ノーって駄目って意味だから、とっさに出しやすいし」


「わかった、分かった。降参だ。

 とにかく制御さえしてくれるなら、それでいいよ」


「でもセレス。

 私、魔法なんて使ったことないのに、いきなり攻撃するなんて無茶でしょう?」


「今出来ないと、いざって時に使えないだろう?

 まさかいきなり、固有魔法ぶっ放すなんて誰が思う?

 普通の奴は防御魔法を使うんだよ。

 盾とかシールドとか結界とかさ」


「そんなの思い浮かばないよ。

 そういうのはゲームとかしている男の子とかが、得意そうだけれど」


「異世界人は魔法が得意なはずなんだけれどなぁ。

 想像力に長けていて、すぐに魔法を使いこなすって聞いていたぞ」


「もしかして、魔法ってイメージなのかな?」


私は、さっきセレスが使った、炎、水。氷。つむじ風を出してみた。

成る程。簡単に使えてしまった。


「ちぇ、見てただけで、もう使えるのかよ。

 やっぱりナナも異世界人なんだな」


「それよりさぁ、セレス。

 さっき言っていた固有魔法って何?」


「そいつだけが持つ固有の魔法のことさ。

 ナナは簡単に操ってみせたけれど、普通、魔法は勉強しないと使えない。

 けれど、固有魔法は発現すればすぐに使えるようになるのさ。

 普通、発現には身内のサポートや魔石が必要だから、ナナがいきなり固有魔法を使ってびっくりした」


「うーん。多分魔法のことまったく知らなかったから、命を守ろうとして発現したんだろうねぇ」


「実際に危なかったのは、こっちだけどな」


セレスはまだ根に持っているみたいだ。


「いつもセレスが守ってくれているのに、私が魔法を使う必要あったのかな?」


ちょっとだけゴマを擦って置く。

途端にセレスは上機嫌になった。

単純な奴で良かったよ。


「必要になるのさ。

 どうせ明日には女王との謁見になる。

 その場で仕掛けてくる奴がいそうだからな」


セレスがそう言うのと、王宮からの使者がきたのは同時だった。

王宮からの使者は、明日朝10時に女王陛下に謁見するようにという書簡を届けてきた。

勿論文面はとても回りくどく、丁寧だけれど、要約すればそういう事だ。


「凄い!どうして判ったの?」


「他国の皇族が来ているんだ、素通りさせる訳ないだろう。

 いろんな意味でな」


「それが、さっきの練習に繋がるのね。

 でもアストラル皇国とセレスティア王国とは友好国なのでしょう?」


「昔、偽物騒動があったんだ。

 それでどの王国も、魔力で自分を証明するまでは信じないのさ。

 偽物は魔力がほとんどないからな」


「魔力がないなら、すぐにバレるんじゃないの?」


「魔力も偽装出来るんだよ。魔石を仕込むことでな。

 身体に埋め込む輩も多かったのだ」


「そこまでして、何をしたかったの?」


「未来を奪いたかったのさ。

 魔法使いは同じ魔力量を持たないものとは子供が出来ない。

 美しい娘に魔法使いを偽装させて、王宮や貴族家に送り込む。’

 その家の子孫は絶えるって寸法さ」


「なんて迂遠な計画なの!」


「ところがそれが上手くいきかけたんだ。

 実際かなりヤバかったらしい」


「でも子供なら、側室とか愛妾とか持つこともできたんじゃないの?」


「魔力量の高い娘がこっそり入れ替えられているんだぜ。

 相手自体がいないだろう」


「親、兄弟は偽物に気がつかなかったの?」


「そっくりだったらしい」


「入れ替えられた本物の娘はどうなったの?」


「さぁ、そろそろ夕食を食べに行こうぜ。

 腹が減っただろ。ナナ。」


セレスは答えをはぐらかしてしまった。

つまりは、それが答えなのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ