リズとの対決
10分後。庭にはリズと装備を整え、構える二人の姿があり少し離れた場所ではトウヤ達が見守っていた。
「今まで、成功したことがないけど自信は?」
「あるわけないだろうが。だが、せめて一太刀はいれる」
「そう。それじゃあ、それがあなた達の勝利条件で良いわ。世界を救ったのだものこれぐらいは簡単でしょう?」
アインの言葉にリズはそう笑う。
「俺達は自分の力で世界を救ったとは思っていない。お前がいなければ倒せなかった事ぐらいは自覚している。おかげで、あれから鍛錬を欠かした日はないぞ。なぁ、アイン」
「ああ。」
アインとクライスに魔力と気が漲り、混ぜ合わさる。
「相変わらず見事な魔技ね、アイン。クライスも魔王を倒した時のアインに匹敵するぐらいのレベルにはなっているじゃない。本当に鍛錬をしているのね。その力だと、折角の料理が台無しになりそうだから結界を張らせてもらうわよ」
と、リズは三人を包むように結界を張る。
「勇者とはこれほどの差があるのか・・・剣鬼と呼ばれていた自分が恥ずかしくなるな」
アッシュはアインとの差に自然と笑みがこぼれ、頬を伝う汗を拭う。トウヤ以外の三人はその力に圧倒され、トウヤだけは笑みを浮かべていたがその足は震えていた。
「行くぞ、クライス!」
「おう!」
二人は左右に別れ、リズに迫る。アインは左手を向け、雷を落し更に地面からリズを覆うように土壁が現れる。
「「うおぉぉぉぉ!」」
二人の強烈な一撃が土壁ごと切り裂く。
「なっ」
「マジかよ」
二人は即座に距離を取り、構える。崩れた土壁から出て来たのは両手を上げた状態のリズだった。
「あら?追撃はしないの?ドラゴンの首ぐらいなら一太刀で切り落とせそうな一撃だったのに。連撃すれば当たるかもよ?」
「ばか言え、そんな事をすれば剣を止められて最悪、剣が使い物にならなくなるだろうが」
クライスは頬を伝う汗を拭わず、口元だけに笑みを浮かべる。
「さすが、魔王よりも強いだけはある。今ので毛程の傷も与えられんとは。今の土魔法は中にいる者の防御力を下げられるのに、魔法も使わずにそれか」
「アイン。魔王みたいなお山の大将と比較するなって何度も言ったでしょう?また特訓したいの?」
リズの笑顔にアインの手が震えるが気合で何とか止める。
「い、いやそれには及ばないさ。一応、王子だからな。他にやる事が山積みだ」
「うまく逃げたわね。まぁ、いいわ。そろそろ食卓に食事が並んだ頃だと思うし、終わりにしましょう。特別に強化魔法を掛けてあげるわ。魔王戦よりも強力なやつをね」
二人の体に何重もの強化魔法が付与されていく。
「これは、確かにあの時よりも強い。やっぱり、あの時の最後の強化って言葉は嘘だったか」
「嘘?バカな!一体何のために・・・あっ、もしかして?」
アインはクライスの目を見て頷く。
「あぁ、恐らく魔王ですらリズにとっては特訓の一環だったのだろう」
「あら?それは違うわ。魔王討伐があなた達の目的だったのだから、あれは卒業試験みたいなものよ」
「はは、卒業試験か。なら、卒業後も鍛えていた生徒の全力をくらえ!」
二人は魔技を更に練り上げリズに剣を振り下ろす。
「「天地剣」」
二人が放つ攻撃の衝撃で結界内の木々は折れ、攻撃をくらうリズの足元の地面は半円に抉れる。
「へぇ。クライスも使えるようになったのね。凄いじゃない。ね?あなたなら諦めなければ会得出来るって言ったでしょ?でもまぁ、それでもまだまだ私に傷は負わせられないけどね」
粉塵が晴れ、剣を指で止めたまま笑顔でそう言うリズを見て二人は驚愕する。
「これでも無理なのか」
「よし、リズ。とりあえずここまでにして食事に戻ろう」
落胆するアインと、機嫌取りに走るクライス。
「そうね。それじゃあ、一分コースで良いかしら?」
「ちょっと待ってくれリズ」
と二人はそう言いながら同時に倒れ込む。リズは二人の剣をその場に投げ捨て、結界を解きトウヤ達に屋敷に戻るように促し、アッシュには二人が起きたら連れてくるように言い、屋敷に入る。




