リースの正体
「お帰りなさいませ旦那様。本日は外食との事でしたが、お早いお帰りですな」
そう迎えてくれたのは執事のセバンだった。
「ちょっと色々あって、食べられなかったんだ。悪いが、多めに作ってくれるか?」
「畏まりました。では、早速作らせますので食堂でお待ちくださいませ」
セバンは一礼をし、メイドに案内を任せ食堂に向かおうとする。
「ちょっと待って、私込みの多めだからね」
と魔法を解きリズの姿になりセバンに伝える。
「り、リズ。良いのか?トウヤ達の前だぞ?」
「良いも悪いも、シンの説明をするのにどうしても私の事を話さないといけないでしょう?誰かさんのせいで」
クライスは返す言葉を失い、トウヤ達はどこかで見た事のある姿に呆気に取られ、セバンは目を丸くし、ハッと慌てて言葉を紡ぐ。
「り、リズ様!気付かず申し訳ありません!本日は買い出しに行こうにもどこも閉まっている時間ですので、以前よりもお出しできる量が少なくなりましてその・・・」
「変装しているのだもの、簡単に気付かれてはショックだわ。それと、食事は二日分程を残す感じでお願い。急に来て準備なんて出来てないでしょうしね。後、美味しいデザートを二つ先に出してあげて」
「お心遣い感謝いたします。では、早速準備に取り掛かりますので私は一旦失礼させて頂きます」
セバンは深々と頭を下げ、足早に食堂へと向かう。
「リズさんってあの、勇者パーティーのあのリズさんですか?」
食堂に向かいながら、ライラは興奮を抑えながら問う。
「そうよ」
と短く返ってきた答えに、ライラは凱旋した時に姿を見てから、ずっと憧れていた事を熱っぽく語るがリズは全てに短く答える。
食堂に着き、各々が着席した中リズはふぅ、と息を吐く。
「ライラ、そろそろ落ち着きなさい。それとあなたはいつまで認識阻害の外套を纏うつもり?」
ライラは、すみません。と頭を下げる。
「そうは言っても脱ぐタイミングなんて無かっただろう?」
リズの指摘で外套を脱いだ者の姿にリズとクライスを除く全員が驚き、立ち上がる。
「あ、アイン王子!」
トウヤ達は口を揃えてそう言い頭を下げる。
「止めてくれ。頭を上げてくれ。ほら、メイド達も。今日はクライスの友人として来ているんだ、立場なんか忘れてくれ」
アインは慌てて、両手で頭を上げるように促す。リズはその様子を見ながら口元を押さえ、笑いを堪えながら見ていた。トウヤ達はアインに促されるままに頭を上げ、着席する。
「さてと、久々に慌てるアインも見られたことだし本題に入りましょうか。ねぇ、クライス?」
その言葉にクライスは青ざめた顔で立ち上がり、リズに頭を下げる。
「リズ頼む!あの会話を聞いた人の記憶を消してくれ!」
「いやよ」
「そこをなんとか頼む!アインからも言ってやってくれ」
その言葉にアインも立ち上がり、頭を下げる。
「リズ。今回は確かにクライスの不注意によるものだが、これはシンを守るためなのはお前もよく分かっているだろう?だからこの通りだ、頼む」
「はぁ。英雄と呼ばれ、ギルド長になった者が人命に係わる事をうっかり口を滑らせて、その尻拭いを人にさせようとするのがあなた達の立場での言い分ね。人の口に戸は立てられ無いって言葉、知っているの?」
その言葉に二人は、リズの近くまで歩み寄り再度頭を下げる。世界を救った英雄達が、王族となったこの国を将来背負う元勇者が、元メンバーに頭を下げる光景にその場にいる者は固唾を呑んでいた。
「本当にあなた達は変わらないわね。言っている意味分かる?最早、誰が知っているか分からないのよ?つまり、この国にいる全ての人の記憶を消すことになるの、分かる?」
「リズなら、時間があれば知っている者だけから消せると信じている」
アインの言葉にリズは溜息を吐く。
「まぁ、確かに出来ない事もないけれど。・・・良いわ、お望みどおりにしてあげる」
その言葉に二人は頭を上げ、感謝の言葉を贈る。
「但し、あなた達が私に勝てたらね」
その時、セバンがメイドを連れ入室し人数分の飲み物とデザートを二つ持って来た。
「あ、アイン様!」
セバンはアインの姿に気付き、連れて来たメイドと共に頭を下げる。アインは慌ててセバン達に頭を上げるように促し、セバンはメイドにアインの分の飲み物を持ってくるように伝える。
「気付かず申し訳ありません。直ぐにお飲み物をお持ち致しますので」
とセバンはアインに頭を下げる。
「それじゃあ、二人はゆっくりと準備してきなさい。その間に私は美味しいお酒を飲んで待っているから」
「準備?これから何かなされるのですか?」
セバンはクライスにそう聞く。
「これからアインと二人で、リズと久々に手合わせをするんだ。だから料理はゆっくりで良いぞ」
アインとクライスは食堂を出る。




