第12話「操られし村人達」
この回からはいつも通り。主人公である不動海斗が一人称視点でお話が進みますのでお気をつけてお読み下さい。
やっと着いた。此処が最後の村だな。俺はクロバの動きを一旦、止めてから村の方を遠目で見つめた。すると、荷台で眠っていたライノがふと目を覚まし、朧気な声で喋り掛けてきた。
「ん~カイトくん、着いたの?」
「あぁ。もう少しで着くからエアノを起こしといてくれ」
俺がそう言うとライノはゆっくりと頷き、寝てるエアノを手で軽く何度も揺さぶった。その間にクロバを再び動かし、村の近くまで移動した。
「今回もまたお留守番ですまない。でも代わりに帰ってきたらクロバの好きなカニカマを腹一杯に食わしてあげるからな」
俺はそう約束をし、余り目立たない位置にクロバと荷台を待機させる。もし何かしらあった時に直ぐに駆け付けられるようにするために。そして、準備が整った俺達は村の入り口へと足を踏み入れた。
第4の村~ウォーグ村~
何だか村がやけに静かだ。村人にも全く会わない。やっぱり、この村も襲われたのか。だったら警戒しといた方が良いな。俺達は警戒しながら村を散策した。そしたら、ライノが急に大きな声で俺とエアノを呼んだ。
「あ!二人とも!村人、村人が居るよ」
ライノが指を差す方向に視線を向ける。そこには確かに村人が立っていた。だか、妙に怪しい。何でこんな道の真ん中でぽつんと立っているんだ?しかも逃げも隠れもせずに。もしかして……“!!”
咄嗟に勘づき危険を察知した俺は「ライノ!危ない!」と止めに入ろうとしたが、その前にライノが近付き声を掛けていた。
「村人さん、大丈夫ですか?」
声に反応した村人が此方に振り向く。同時に手に持っている鍬でいきなり襲い掛かって来た。
「な、何!?何で急に襲い掛かって来るのライノたちは味方だよ」
ひらりと躱したライノが襲って来た村人にもう一度声を掛ける。けれども村人の攻撃は止むことがなく。鍬を振り続けていた。
「ライノ、離れろ!コイツらは多分、村人に擬態したモンスターだ。だから、声かけはきっと無駄だぞ」
エアノが村人に向かって螺旋風を放とうとした途端、リエルが食い気味に否定。
「いいえ、違いますエアノ様。あの村人は本物の村人です!」
疑問に思ったエアノが首を傾けて問う。
「どうして?」
すかさずリエルは問いに答える。
「人間には見えてないかもしれませんが、あの人は操られているんですよ。糸みたいな物で」
糸で操られている?本当か?ちょっぴり気になった俺は村人を細目でじっと見つめた。
「(だから、人間の眼では見れないって言ったじぁないですか不動様。聞いてましたか私の話?)」
テレパシー越しに怒られた。いや~話は聞いていたんだけど、ちょっとどういう感じで操られているのか気になってつい。でも、その糸さえ切れれば操られた村人は解除されるんだろ?
「はい。それで解除が出来ると思います」
リエルの答えに攻略法を見出だした俺は早速実行しようとすると、ライノが慌てた様子で俺達の方に走り込んで来た。
「カ、カイトくん、やばいよ!なんか遠くから大勢の村人がこっちに来てるよ!」
流石に武装し、操られた村人を傷付けずに何十人も相手するのは厳しいな。仕様がないし、此処は一先ず……
「エアノ、ライノ。逃げるぞ!」
二人に合図を出す。その間に俺は足止め程度に
“闇のキセキ 黒罠„
設置し、どんどんと近付いて来る村人から背を向けダッシュで逃る。後に続いてライノとエアノもダッシュで逃げた。
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ハァハァ……フゥー、かなり走ったな。こんぐらい走れば村人から逃れられただろ。それにしてもエアノとライノ、結構走ったのに息が一つも上がってないなんて凄い。これが年の差ってやつかまさかこんな所で感じる……
「不動様!大変です。大変な事態になりました」
リエルが慌ただしく言うので「何だ?」と詳細を詳しく聞く。
「エアノ様とライノ様が私達の後を付いて来て居ないのですよ」
つまりははぐれてしまったと言う訳だ……でも、俺は無我夢中で走っていたし。一体何処ではくれたんだ?まぁ、良い。今から来た道を戻りエアノとライノを探すか。そう思い俺は来た道を戻ろうとする。そしたらリエルが突然、俺の腕に強くしがみつく。
「不動様、お気持ちは分かりますが、今はダメです。とっても危険です!」
それでも、俺は諦めずにしがみつき引っ張るリエルを無視して来た道を戻ろうとする。しかし、リエルも諦めずに説得を続けた。
「今、来た道を戻りますと、折角撒いた村人達にまた出会う可能性が高いからです。もしそれで不動様が取り囲まれてしまったらどうするんですか?」
「うぅ……だったら、エアノとライノを見棄てろって言うのか!?」
俺だって、バカな事をしているって分かってんだ。けど、仲間を見棄てるなんて出来ない。
「ハァー、分かりました。確かに私も仲間を見棄てるのは嫌ですからね」
俺の熱意に負けたのかリエルはしがみつくのを止め、協力してくれた。
「それじゃあ、来た道を戻るか」
そう言った途端に再度、リエルが俺の腕にしがみつき注意した。
「待って下さい。来た道を戻るのはダメです!」
「ならどうするんだ?」
疑問に思った俺は問い掛ける。リエルは自信満々な表情で答えた。
「私に考えがあります。他の道を探索するのはどうでしょうか?他の道でしたら村人と出会う確率は低いですし、エアノ様とライノ様も見付けることだって出来るかもしれませんよ」
確かにそうだな。じゃあ、他の道から捜索して見るか。納得し、来た道とは違う方向の道から探そうと歩き始める。
次はあの曲がり角を曲がるか。その方が村人達に見付かり難いしな。と俺は曲がり角を曲り、別の道へと足を踏み入れた。すると、不意に村人と目と目が逢ってしまう。その瞬間、好きだと気付いてしまった。村人も顔を赤く染めながらもゆっくりと此方に近付く。こ、これが一目惚れと言うやつなのか?そうして、俺も村人に抱き付こうとした時。
「不動様!目を覚まして下さい」
咄嗟に聞こえたリエルの声に俺はギリギリのところで正気に戻り、襲ってくる村人の攻撃をかすり傷程度に済まして回避した。あ、危ない。危うく一目惚れの抱き付きで殺られる所だった。
「ふぅー、私が居なかった危なかったですよ、本当に。何でこんな時に限って目と目が逢う瞬間に一目惚れしちゃうんですか?」
「ち、違うよ。な、何かの引力が働いたんだ。きっとそれに違いない。それよりも、村人が一人しかいないんだったら、糸を切って助けられるんじゃない?」
「そうですね。このまま逃げるよりも糸を切って助けた方が得策ですし、やりましょう!」
俺の提案に乗ってくれたリエル。そして、俺は村人を出来るだけ傷付けないようにするために剣を鞘に納めた状態のまま武器を構える。
「それで何処にその操っている糸が在るんだ?俺には全く見えないから教えてくれ」
リエルに頼んだが、内心本当は俺にも見えるんじゃないかと考え付き。つい目を細めてまた見つめてしまい。気付いたリエルが呆れ顔で話し掛けてきた。
「だから不動様、何度とやっても同じです。人間の眼では見えません……と在りました。背中に在りましたよ。背中から腕や脚に掛けて糸が張り巡らされています。ですので背中の糸を切れば腕や脚に絡まった糸も連鎖して切れると思いますから背中に在る糸を切って下さい」
分かった。村人の背中に在る糸を切れば良いんだな。よし!やってやるよ。気合いを入れ、意気込んだ俺は村人に向かって突っ走り、傷付けないように軽く武器を振った。
けれど、村人だからと手加減し過ぎたのか村人は俺の攻撃をすんなり避けて、カウンターの如く鍬をなぎ払い反撃し出した。予想外の行動に俺は反応できなく。そのまま直で当たり、激痛が走った。
イタタタ……くっ、せめてこの村人がモンスターだったら遠慮せずにキセキを使えるのに。でも、突破口は見えた。
「リエル!アレを頼むぞ」
作戦を思い付いた俺はリエルに視線を向けながらそう言って伝えた。リエルは理解した表情で返事を返す。
「はい!分かってます。あの村人の動きを遅くすれば良いんですよね」
“時のキセキ 遅時の世界„
リエルがキセキを唱え、村人の居る位置の真下に向かって遅時空間を作ろうとした。その時、村人はまるで糸に引っ張られたように体が少し浮き上がった状態で不自然に後ろに下がった。
コイツ!まさか、リエルの攻撃を避けたのか?……くそ!かなり厄介だ。
「どうしますか?もう一度同じキセキを唱えます?」
「いや、多分また避けられると思うから唱えなくて良いぞ。それよりも俺が村人の気を引くからその間に遅時空間を作ってくれ」
リエルにお願いしてから再度村人の所へと突っ込み、今度は甘く見ないで強目に何度も攻撃する。一方、村人も俺の攻撃を何度も何度も鍬で防ぐ。しかし、たかが農具用の木で作られた鍬なので耐久値は高くなく少しずつだが、割れ目が広がっていた。
それを俺は意図的に狙っていた。理由は単純で鍬が邪魔だったからだ。逆に言えば鍬さえ無ければ、あまり怖くないと言うことだ。だから、俺は強く何度も鍬目掛けて攻撃を当て、元々在った小さな割れ目を少しずつ広げたのだ。そして、だいぶ広がった割れ目に最後の一撃を加える!
俺は広がった割れ目に向かって強い一撃を加えた。当然、鍬は真っ二つに割れ、その隙にリエルがキセキを唱えた。
「今度こそ当たって下さい」
“時のキセキ 遅時の世界„
そしたら、操り主が感ずき再び逃げようとする。だが、相手が悪かったな。俺は逃げようとする所に盾を設置し、逃げるのを防いで足止めをした。その後、遅時の世界に入った村人の操っていた糸を見えないのでリエルに教えてもらいながら無事に切り離した。
「フゥー、何とか成功できたな。さて、この気絶した村人はどうしよっかな?」
一息吐き安堵の言葉を吐く。それで目の前で気絶し倒れた村人をどうするか悩みながらもリエルに相談。すると、リエルは冷静に返答した。
「安全な場所まで運び込んだ方が良いてすよ。また操られるかもしれませんから」
そうだな。また操られでもしたら、かったるいだろうし。面倒臭いが、確りと村人を背中に背負わせる。
「じゃあ、安全な場所まで運びこ……」
思わず話が途中で切れてしまい。周囲の光景に唖然としてしまった。そこには辺り一面に武器を持った村人が俺達の周りを360度いつの間にか包囲されていたのだ。
「この状況は絶対絶命だな…」
俺はそう呟き、ちょっぴり冷や汗を掻いた。
のこり残機《84》




