第13話「ファレーナソルジャー」
「不動様、ど、どうしましょうか?」
リエルがあたふたした様子で俺に聞いてくる。正直、俺も動揺しているが表情に出さず、脳内で必死に突破口を考える。せめて此処に居る村人達が全員モンスターなら少しは勝ち目があるのに、操られた村人だとかなり厳しいからな。加えて、逃げようにも全方位を囲まれてるし、それに俺は背中には気絶した村人を抱えてるし、一体どうすっかな?
絶体絶命的な状況を説明していたら、不意に何処からか声が聞こえた。
「此方だ!!」
爽やかな男性声の呼び掛けに釣られ、聞こえた方向に振り向く。そしたら、何もない壁から異次元の空間と共に片腕が俺達を招き寄せていた。その何とも珍妙な光景を見た俺は直感でこう思った。
「(怪しいな。敵じゃないか?)」
そう思い、テレパシーで一応リエルに聞く。すると、リエルも俺と同じく怪しんでいた。
「(不動様これは多分、敵の罠ですよ)」
そんな考察をしている最中、俺の背後から物凄い勢いで鍬が飛んできた。幸い狙いは外れてかすり傷で済んだ。ちっ!どうやら、考えている暇はないみたいだ。なら此処は一か八かで……
「リエル!呑気に選んでいる時間はないから、あの異空間に行くぞ!」
俺がそう伝えて走ると、リエルも急いで異空間に向かう。その後ろで追い掛けて来る村人達に対し、俺は煙幕のように黒罠を向かい来る村人達に踏ませて、奴等の目を遮り。そのまま異空間へと入って行った。
消去法で仕様がなく入ったが、一体どんな所に繋がってるんだ?もしかしたら、ボス本体のところとか。それとも、毒ガスが充満した密室空間とか。どちらにせよ、用心はしておこう。
そして、俺達は異空間を通って別の空間へと辿り着いた。そこは辺りがとても真っ暗で何も見えない空間だった。なので手探で辺りを調べる。
「フギャ!!」
調べてる途中に何処かで聞いたことのある声色の悲鳴と一緒に動く人形のような物を手に取った。何だこれは?と疑問に思い更に調べようとした途端。
「不動様!私ですよ!ガイド役のリエルですよ!」
リエルの声に反応して慌てて返事を返す。
「何処なんだ?リエル、何処に居るんだ?」
「だから、此処ですよ!」
今度は少し声量を上げて喋るも、声が響き何処からリエルが喋って居るのか、見当もつかずに困り果てた時だった。
“トン…トン…トン…”
ゆっくりとした足取りで此方に近付く足音が俺の耳に届いた。冷静に俺は一旦、背負っている村人を降ろし、それからうつ伏せの姿勢を取った後に眼を閉じ、近付いて来る足音に耳を澄まして様子を見る。
どうするか?明らかに向かって来ているのは敵だよな。幸い足音的には一人しか居ないから、隙を見計い此処から逃げれば良いんだが、リエルは一体何処に居るんだ?まぁ、兎に角今は敵が来るまで静にじっとしていよう。
そうして、遂にピッタと突然、足音がしなくなり。俺は目の前まで来たんだと思いながら、気を引き締め様子を見た。
「確かこの辺りだったかな~」
先程、俺達を呼んだ爽やか男性ボイスの人が何かを探しているかのような口振りで呟き、明かりを点る。
“カチッ”
明かりが点いた事で一気に真っ暗だった場所が一瞬で明るい場所へと変わって行った。同時に俺の目はまるで閃光玉でもくらったかの如く目がチカチカし、慣れるまで数秒と掛かった。
「と、居た居た。お前が不動海斗だよな?」
俺を発見するなり唐突に名前を呼ばれた。ん?何で俺の名前をコイツは知ってるんだ?不可解な疑問を持った俺は警戒しながらも、問い掛けようと試みる。
「あの~不動様そろそろ、私を離して下さいますか」
その前にもう一人弱々しい声で俺を呼ぶ声が聞こえ……そうだ!リエル!リエルは一体何処に居るんだ?思い出した俺は焦ってリエルを探し始める。
「なぁ、お前。リエルを知らないか?小柄で羽根の生えた奴なんだけど」
そうとう焦っていた俺は敵かもしれない見知らぬ男性に聞いた。男性は冷静に俺の足元に向かって指差しながら答えた。
「それって……不動の足元にいる奴じゃないのか?」
思いもよらなかった回答に思わず「え?」と返してしまい。恐る恐る、足元を見た。すると、気を失ったリエルが俺の足の下敷きに成っているのが見付かり。たまらず俺は叫んだしまった。
「リ、リエルーーーーー!!」
~数分後~
「全く。不動様は酷いですよ。何で人形みたいな物が私だと思わなかったんですか。しかも、私を踏みつけたりして、散々でしたよ」
目を覚ましたリエルは汚れてしまった服を手で軽くはたき。ブツブツと文句を言う。そこに仲裁で割って入った男性がリエルを落ち着かせようと話を切り替えた。
「まぁまぁ、リエルちゃんだっけ?話はその辺にして終わろうぜ。それと不動は俺に聞きたいことがあるんだろ?なら此処じゃなんだし、もっと話しやすい場所へと移動しようぜ」
場所移動を提案してきたが、俺にはどうしても確認したい事が在ったので、移動する前に男性に聞いた。
「そうだな。その前に確認しておきたいんだが、お前は本当に敵じゃないし、操られてもいないんだよな?」
「あぁ、そうだぜ」
爽やかに答えた後、目的地へと案内しようと歩き始める。安堵した俺は忘れずに床に降ろした村人を再度、背中に背負わせて、男性の後ろを着いて行った。
然して、男性に案内された俺達は然程広くも狭くもなく。テーブルと椅子だけが置かれている甚く殺風景な部屋に連れられた。
「お、お邪魔します」
こう言った部屋を見ると他人の家に入った感が漂いつい反射的に礼儀正しいくしてしまう。それで俺が座ろうとしたらば、男性は口を出した。
「先ずはその背負っている村人を別の部屋に移そうぜ。先からずっと気になってしょうがなかったんだよ」
此方としても有難い提言なので即決で了承。そして、気絶した村人を別の部屋に休ませてから俺達は本題に入った。
「で話は戻るが、何でお前が不動海斗を知ってるんだ?」
率直に聞く。すると、男性は素直に言う。
「それはだなっ……」
男性が答えようとした途端に突如、背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえて、後ろを振り返った。
「カ、カイトくん!?」
そこには驚きと喜びが入り交じった表情をするライノの姿が在った。
「あ、カイトさん。無事だったんですね」
その後ろからひょいと顔を出したエアノが大して驚きもせずにほぼ無反応で話した。そんな事よりもライノ達がこの場所に居るのが不思議に思い問い掛けた。
「エアノ、ライノどうして此処に居るんだ!?」
俺が聞いくと、聞いてもない男性が閃いた様子で喋り出した。
「やっぱり、そうだ!お前がライノ達が言ってた不動海斗で間違いじゃなかったんだな」
まだ閃いていない俺は「どう言うことだ?」と首を傾ける。見かねたライノが説明をしてくれた。
「実はね…この人はライノ達を救ってくれた命の恩人なの!」
ハッキリ言ったリエルに「命の恩人?何でそうなったんだ?」と気がかりになって俺が聞こうとする。より先にリエルが優しく尋ねた。
「ライノ様、命の恩人とはどう言った経緯でそうなったんですか?」
多分、リエル本人は気付いていないかも知れないが、地味に圧を感じる。そんな無意識な尋ね方にライノは少しあたふたしながらも答えた。
「ライノ達がカイトくんとはぐれちゃて、どうしようか悩んでいたらね。偶然この人と出会って、それで今に至ったんだよ」
ざっくりした説明だったが、大体は理解した。兎に角二人にまた会えたのだから正直、経緯はどうでも良かったりする。
「それで、これから不動達はどうするんだ?この村を出たいなら俺の“空間のキセキ”で逃がせれるけど、どうする?」
話が一段落したのを見計らって、男性が俺達に問い掛けた。けれど俺は即座に断り、気合いを入れ直す。
「すまないな。俺達は王様の命で此処に来たんだ。おめおめと帰れるかよ」
完全に言い切る。それに男性は手を差し伸べ、協力を申し立ててきた。
「そうか。だったら、俺に協力してくれないか?」
その差し伸べた手に俺は喜んで握って返事を返した。
「あぁ。良いぞ。二人を助けてくれた恩返しもしたいしな」
協定を結んだ俺達は早速、話し合いを始める。最初は男性が話を振ってきた。
「それじぁあ、何から話そうか?」
質問に対して、俺よか早くエアノが食い気味に手を上げ、聞き返す。
「名前を教えてもらいますか?僕たちはまだ貴方の名前を知りませんので」
エアノに先を越された。まぁ、俺も知りたかったから静かに聞いた。男性は清々しく答えた。
「そうだな。俺の名前はセファだ。よろしくな!因みに、俺の職業はファレーナソルジャーだぜ」
耳にした事もない職業だ。とてもマイナーなんだろう。そして、セファがそのまま喋り続ける。
「分かりやすく言えば、凶暴化した蜘蛛とその巣を駆除するスペシャリストだな」
皆、何となくは把握出来た。すると、エアノがさらりと呟く。
「ふーん、と言うことはこの村の元凶はその凶暴化した蜘蛛たちが原因なんだね」
強ち間違えでもない発言に同感した後にちょっとだけセファの表情が険しくなった。
「確かにそうだが、今回のケースはかなりイレギュラーなんだ」
「どうしてイレギュラーなの?」
疑問に思い質問するライノのに、セファは淡々と解説し出した。
「それはな。先ず第一に凶暴化した蜘蛛は人を襲ったりするんだけども、人を操ったりするなんて事は一度もなかったんだ」
「でも、何でわざわざ人を襲わずに操ってるの?」
又してもライノが頭に?(クエスチョン)マークを浮かべながら聞いてくる。困った様子でセファは自分の推測を示した。
「それは俺にも分からない。多分、人間の方が遥かに蜘蛛よりもデカくて強いから操ったら生存しやすいんだと理解してると俺は思う」
本当にそのような目的なのだろうか?何かもっと違う目的で村人達を操っている気がする。そんな憶測が俺の脳裏を一瞬過ったが、気を取り直してセファの話に耳を傾けた。
「次いで第二に蜘蛛達には必ずと言って良いほどの確率で女王蜘蛛が居るんだ。そいつは二本足で立ってて歪な人間擬きの姿をしていたんだ」
「見間違えとかじゃなくて本当にか?」
信じがたい話につい疑ってしまい真偽かどうかを確める。
「あぁ。長年やって来た俺の勘が見間違えるはずはないんだぜ」
長年の勘を信じるセファは強く否定。それに反論する気もなく。微妙に質問を変えた。
「それで、その女王蜘蛛は何処に向かったんだ?」
「分からない。見たのは一時だったから」
申し訳なさそうにセファは言う。
なるほど。女王蜘蛛の位置を知らないのか。困ったな……いや、一つだけその女王蜘蛛を見付け出せる方法が在るかもしれない。少なくとも試す価値はある!
のこり残機《84》




