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あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)05

アランデール邸にカタリナが運ばれたのは夜中に近かった

泥だらけのドレスを侍女に言って清潔なドレスに着替えさせた


(このドレスお気に入りだったよな

可哀想にこんな姿になって)


ブルワーノは溢れ出る涙を拭うこともせず

温かいタオルでカタリナの汚れた髪や顔や手を順番に何度も何度も優しく拭きとった


土や埃で汚れた髪の毛も顔も か細い指先もすっかりきれいになり ブルワーノが好きだった秋桜の様なカタリナがそこにはいた


カタリナを抱きかかえてベッドに寝せかせた

まるで眠っているかの様な姿だった

頬に手を当てるとまだ温もりがある

「リーナ リーナ リーナ…」何度も叫ぶ

「早く目覚めて!僕を置いて行かないでくれ」

その声は虚しく部屋に響くばかりだった


夜が明けるまでずっと手を握っていた

段々と冷たくなっていくカタリナに為すすべもなくブルワーノはベッドサイドにうずくまったままだった


翌々日 教会で溢れる程の花に囲まれたカタリナは棺の中に寝かされていた

「リーナ ゴメンな 秋桜の花で飾るつもりだったんだけど 今は春で秋桜が手に入らないんだよ」


お別れに来てくれた多くの人が落ち着いた頃

この国では珍しい黒髪の男の子を連れた女性がやってきた


マリエッタ・カッシュだ

「ブルワーノ様 お久しぶりです まさか

こんなことが起るなんて… リーナ痛かったよね… 」

次の言葉が出ない

泣きはらした目でブルワーノを見つめた


「来てくれたのか マリエッタ リーナも喜んでいるだろう」力の無い声で呟いた


3人は貴族学園での同級生で

カタリナとマリエッタは親友だった

結婚で隣国トラスト大公国に渡ったマリエッタ

二人は手紙でのやり取りをしていた続けていた

マリエッタが夫を亡くしグランドル王国へ戻った時もカタリナは心配して会いに行った


ブルワーノはマリエッタの側に立っていた男の子に気づき話しかける

「君の名前は確かジュリアーノ君だったかな?リーナのお別れに来てくれてありがとう」

「はいジュリアーノ・カッシュです マリエッタおば様には可愛がっていただきましたのでお別れにきました」

6歳のジュリアーノは大人びた口調で答えた


「ブルワーノ様 先程から オランジェちゃんの姿がみえませんが ご無事だったのでしょう?」


「身体は大丈夫だったんだがまだ目が覚めないんだ

屋敷の侍女が看病している だから教会には来てないんだ」


「では近々息子と共にお見舞いに伺ってもよろしいですか?」

「ああ その頃にはオランジェも目を覚ましているだろう」


泣いている母を支える様にジュリアーノは最後の挨拶をして教会を後にした


次の日 ブルワーノの希望でマリエッタの旅立ちを見送ったのはアランデール家の者のみ

ひっそりとマリエッタの棺は埋葬された

(リーナ 秋桜の花の様なリナ 今までありがとう

ゆっくりお休み)


項垂れたままのブルワーノは嗚咽を漏らした


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