あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)36
ジュリアーノの手紙が励みになったのかそれからのオランジェは気持を切り替えてリハビリにより励んだ
(脚の運びがスムーズになってきた 歩行訓練の先生も最近は褒めて下さる 長時間歩いても疲れない 階段も難なく登れるようになったし生活する分には困らなくなってきたわ)
大公国病院の診察の日スポルト医師が告げた
「傷跡だいぶ目立たなくなってきたね オランジェ嬢は若いので回復が思ったよりも早かったよ もう大丈夫だよ 訓練士から卒業の許可も貰ったし いつでも帰国できるよ でも叶えたい夢があるんだろう? 約束通りご褒美をあげるね ダンスの先生が来週から邸に来るよ」
「リハビリは卒業なんですね 嬉しい スポルト先生本当ですか?
ダンスのレッスンを受けられるなんて!ダンスをマスターしてお義兄様に迎えにきてもらいます」
邸にダンスの先生がやってきた
少し高めのヒールの靴を履いて正しい姿勢で立つ
体重移動に気を付けながら
リズムに乗る
最初のステップは脚がおぼつかなくて躓いてしまった
足を出す位置に気をつけていても油断すると何度も先生の足を踏んでしまう
初めてのレッスンは散々だった
(なんて難しいの いきなり踊れるとは思ってなかったけどこれ程までに酷いとは… 歩行練習とダンスの練習とではこんなにも大差があるのね
こんなんで私ダンスが踊れるのかしら?
十六夜の月の下で義兄様と踊ろうだなんて大それた夢だわ ああ 落ち込むわ リハビリの時よりも大変な気がしてきた こんなに挫折感を味わったのは初めてかも)
ジュリアーノに会うのが少し遅くなってもいい 完璧に踊りたい
必死にレッスンを受け続けた
無謀にもワルツを踊りたくて 3拍子のゆったりとした音楽のリズムに乗る 難しい基本のスピンターンを何度も何度も練習した
先生の足を踏む回数も減ってきた レッスンがない日も気がつけばステップを踏んでいる自分に気が付く
(最近ようやく形になってきた 先生と踊れる様になってきたわ もう少し 頑張らなくちゃ 義兄様と踊るためだもの)
オランジェはなんとか努力を積み重ねて1ヶ月で華麗にワルツを踊れるまでになった
(これでやっと王国へ戻れるわ 約束の半年で帰れる お義兄様に会いたい 迎えに来てくださいの手紙を書かなくちゃ)
ジュリアーノはオランジェからの手紙を待っていた (まだリハビリに時間がかかっているのだろうか?転んでまた怪我をしてなければいいが…)
待ちに待った手紙を受け取ると即ステファニー殿下に休暇願いを出した
予め殿下には手紙を受け取ったらオランジェを迎えに行きたいと伝えていたのでOKの返事を貰えた
(やっとジュリアーノが動き出したね 慎重過ぎる性格も困ったもんだ オランジェ嬢と上手く行くように願っているよ 健闘祈る 頑張ったおいでジュリアーノ)
荷物は予め纏めてあったので手紙を受け取った翌日にトラスト大公国に向けて旅立った
逸る気持ちを抑えてスポルト邸へ急ぐ あの角を曲がれば邸が見える まだ雪が残る道を進んで行った
玄関には寒い中 見慣れたコートと白いモコモコした肩掛けを羽織ったオランジェが立っていた
慌てて馬車を降りたジュリアーノは駆け寄った
「ラン 寒かっただろう?邸の中で待っていればよかったのに」
「ジュノ義兄様に早くお会いしたくてお待ちしてました お迎えありがとうございます」
「叔父上は仕事なんだね 風邪を引くといけないから早く部屋に入ろう」
いつもの癖でオランジェを抱き上げようとした
「お義兄様 私は1人で歩ける様になったんですよ」
「ああそうだったね でも足元が悪いからランを抱き上げても良いかな?久しぶりだし」
「ふふ わかりました でも今日までですよ」
隣でハニが笑っていた
半年ぶりの再会に叔父家族と楽しく夕食を取った
「ジュリアーノは仕事の合間を縫って来たのだろう
今回の滞在期間は短いのだろうか?
「今回は視察ではなく休暇なので馬車移動を含め半月の予定です ランとトラスト大公国を楽しみたいので5日程滞在をお許しください」
「ああ 勿論だとも 中々こちらに来ることが難しいだろうからゆっくり楽しむといい 市場に行ってごらん 面白い商品が並んでいるから見てて飽きないよ」
「おすすめは何ですか?」
「革細工が盛んだから サーベルのソードベルトがお薦めだね ジュリアーノは剣も扱うんだろう? 軽くて質が良いと評判だよ」
「丁度ソードベルトを探していたので楽しみです」
「オランジェ嬢は何が楽しみかな?」
「私は異国のお菓子が食べてみたいです」
「お菓子も沢山店が出てるから期待するといいよ」
和やかな雰囲気で食事会は終わった




