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あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)34

早朝 ハニと共に馬車で揺られ大公国病院のランの病室にやってきた


「お義兄様おはようございます 今日はいいお天気ですね」

「ああ ラン昨夜はよく眠れたかい?」

「はい お義兄様のお陰でよく眠れました」


2人の会話中 手術の準備の為に看護師達が慌ただしく動いていた

昼前にスポルト医師が入ってきた


「いよいよだね オランジェ嬢 私も最善を尽くすから君も頑張るんだよ さあ 行こうか」

「ジュリアーノ達は手術が終わるまでこの部屋で待っていなさい」

「叔父上 宜しくお願いします」

ベッドに寝せられたオランジェは2人に小さく手を振って行った


手術が始まった 

大腿骨の骨を削って角度を変える手術はかなりの時間がかかる

数多くの手術を熟してきたスポルト医師は手際よく進めていった


時計の針は午後5時を回っていた 部屋の椅子に座ってじっと待っていたジュリアーノはハニが淹れてくれたコーヒーを飲み干した


(時間が過ぎるのが遅く 待つことがこんなにも もどかしいとは… 初めての感覚だな )


午後6時を回った頃ベッドに寝かされたオランジェが病室へ戻ってきた 名前を呼ぶと返事はするが目は瞑ったままだ 術後のせいか顔色は悪い


スポルト医師がやってきた

「手術は無事に成功したよ オランジェ嬢は若いので人工関節は使わなかった 手術直後だから安静が1番の薬だよ」

「叔父上ありがとうございました」

「これからオランジェ嬢は歩行訓練が待っている 大変なのはこれからだよ」

「ランは頑張り屋なのできっとできると信じています」

深々と礼をして見送った


「ランの意識がハッキリするまで僕が付き添っているからハニは邸に戻っていなさい 目が覚めたら連絡する」


(また あの夢だわ

愛するジュノ義兄様と十六夜の月光の下 

オレンジ色の靴を履いて 軽やかに踊る自分の姿


でもいつもとは違って踊った後 お義兄様は誰かの元に行くのだろう 後ろも振り返らず黙って去って行ってしまった


お義兄様 お義兄様 行かないで 私の側に居て 愛するお義兄様!)


「お義兄様…行かないで…」

うなされているオランジェの手を握り

「ラン どうした大丈夫か? 僕はここにいるよ 何処にも行かないよ ランの側にいるよ」

その言葉が聞こえたのかオランジェの寝息は落ち着いてきた


暫く握っていた手を離してジュリアーノは額の汗を拭こうとタオルが置いてあるテーブルに近づく


テーブルにあった1枚の紙を見つけた


【月の雫のファーブラ】


春の十三夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて手を繋ぎなさい


夏の十四夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて見つめ合いなさい


秋の十五夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いてお互いの髪に触れなさい


冬の十六夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて踊りなさい


そうすればアルテミスに愛され その恋は成就するだろう


(ランが解読した物語だな 王宮の図書館に新刊として並べてあった本だ 

訳者がランだったので手にとって読んだ覚えがある その本の一説だったな 


この言い伝えが本当なら月光の下 

ランと手を繋ぎたい 見つめ合いたい 髪に触れあいたい 

一緒に踊りたい)


朝方 看病していたジュリアーノは束の間ウトウトとしてしまっていた

オランジェの荒い息遣いで目が覚めた 巡回の看護師がやって来て素早く処置をしてくれた

「術後 熱を出す方が多いので心配はありませんよ このまま様子を見ておいてください」


ジュリアーノは再び手を握りオランジェの回復を祈った


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