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あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)33

トラスト大公国の首都へは馬車で5日程かかる 

1日中馬車に揺られ夜は宿に泊まる オランジェにとって初めての旅 移動は大変だった

(大好きなお義兄様と一緒に長い時間過ごせる機会は2度とこないだろうな 神様からのプレゼントかな?

この思い出を胸に秘めて忘れずに生きていこう)


馬車移動にようやく慣れてきた頃 遂に首都へ着いた


賑やかな町並みを抜けて住宅街の一角にあるひと際 大きなカッシュ邸が見えて来た

「ラン 長かったね 疲れただろう?やっと着いたよ 叔父上らしき人が見える」


玄関では叔父のスポルト夫妻が待っていた

馬車が停まった オランジェを抱きかかえ外へ出る ジュリアーノは優しく地面へ降ろした


「2人ともよく来たねジュリアーノ オランジェ嬢 それにしても大きくなったな 本当に兄さんによく似ている 

あんなに小さかったジュリアーノがこんなに立派になって考え深いよ」

「スポルト叔父上 お久しぶりです とはいえ私は幼かったので当時の記憶は無いのですが今回 義妹の為に快く受け入れて下さってありがとうございます」


「初めまして オランジェ・アランデールと申します」恭しくカーテシーをした

「遠い道のりで大変だったろう 今日 明日はゆっくりここで過ごすといい 診察は明後日だからね それでは部屋に案内しよう 

ジュリアーノ 食事の時にグランドル王国での話を色々聞かせて欲しい」

「叔父上 私に父の話を聞かせて下さい これから しばらくお世話になります」

「遠慮せずに過ごして欲しい」

「はい ありがとうございます さぁラン行こうか」


ジュリアーノはいつもの様にオランジェを抱き上げてカッシュ邸の中に入った


その夜は遅くまでスポルトとジュリアーノは話し込んだ 父の幼かった頃の話 貴族学校での話 王宮での仕事の話 医療発展の話 尽きる事は無かった


初めて訪れた大きな公国立病院の内部は白が基調の清潔な造りをしていた 

様々な治療ができるように症状に合わせて専門的な科が存在している 

ジュリアーノはグランドル王国との違いに驚くばかりだった 

病院の中を様々な階級の人が普通に出入りしている

早く王国にもこの制度を広ろめる努力が必要だと思うのであった


ジュリアーノとオランジェは公国立病院のスポルトの診察室へ通された


以前邸で受けた検査とほぼ同じだった 事故の状況や 痺れの症状 日頃の生活などの問診 触診 歩き方の癖

外科医スポルトの診察は丁寧だった


「マリエッタ義姉さんの手紙にあったように股関節に問題があるようだね

根本的な治療はやはり股関節の手術しかないな オランジェ嬢は手術を希望する事に変わりはないのかな?」

一瞬ジュリアーノの顔を見て頷きスポルトの問に答えた

「スポルト先生の手術を受ける為にトラスト大公国まで来ました 治る見込みがあるのなら是非手術を受けたいです」

「決心は固いね 安心して私が執刀するからね でも少し大掛かりの手術になるから覚悟しておいて欲しい 術後半年間はこの公国で歩行訓練を受けてもらうよ 大丈夫かい?」 

「はい」

決意を込めて返事をした

「叔父上オランジェを宜しく頼みます」


オランジェの手術が決まった


手術までの数日間 ジュリアーノは毎日欠かさず病室にやってきてオランジェの話し相手をしていた


「ラン 調子はどうだい? 今日は視察で病院の内部をくまなく見せて貰ったよ」

「ジュノ義兄様 視察のお仕事しっかりされているのですね 私も古文書を沢山持ってきたので仕事していました」

「明日は手術なのに無理しちゃいけないよ 全く仕事中毒は相変わらずたなあ」


「童話を中心にお仕事をパリトル室長から頂いてきたので解読してて楽しくて」

オランジェは微笑む


グランドル王国からオランジェの世話をする為に付いてきた侍女のハニが怒っている

「ジュリアーノ様もっとお嬢様を怒ってください! 私が言っても聞かれませんので!」

「わかったよハニ ラン仕事は程々にしなさいね 明日に備えて早く寝るようにしようね」


病室を巡回してきた看護師が微笑んでいる

「本当に仲がよろしいですね こんなに仲睦まじいご兄妹は珍しいです」

「そうなんですよお邸でもジュリアーノ様の溺愛ぶりは止まらなくて」

「ちょっとハニ恥ずかしいから止めて頂戴」

手術前の日にしては和やかな雰囲気に包まれていた


夜も更けてハニを先に返した

「ラン 眠るまで側にいてあげるから安心して眠りなさい」

病室の電気を消してジュリアーノはオランジェのベッドサイドの椅子に座った

窓の外には十五夜の月明かりが眩しく輝いている


オランジェは寝付けないのか握っでいた手に力が入っていた


ようやくスースーと寝息が聞こえてきた

眠ったのを確認したジュリアーノは手を離し

愛しいオランジェの髪を触るとそっとキスをした 

それから静かに病室の外へでてドアを閉めた


明日はいよいよオランジェの手術の日だ

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