あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)32
ブルワーノは口を開いた「ランの手術の件は問題解決だな それとは別にもう1つジュノに話があって来たんだよ ジュノ そろそろ婚約者を決めてアランデール家を継いでくれないだろうか?」
ジュリアーノの顔色がサッと変わった
「義父上 また急に何を仰るのですか? 義父上 私が爵位を継ぐのはまだ早すぎます 私はこの夏で22歳歳になったばかりですよ」
「爵位を継ぐのはまだ当分先の話だが 貴族なら婚約者を決めるのは早い方がいい」
「義父上がそろそろ そのの話をされるのではないかと内心思っていました でも私は王宮での仕事が忙しく婚約者など迎える気持ちは全く無いのです」
「結婚はともかく婚約者だけでも決めて欲しいと思うのだが」
ジュリアーノは食い下がった
「すみません義父上 ありがたいお話だと思います がこの婚約者のお話はお断りさせて頂きます」
暫 誰も何も言わない沈黙が続いた
決意した様にジュリアーノは誰にも言わなかった心の内を語った
「私の本音を言っても構わないでしょうか……
実は私には心に想う人がいます 決して叶わない想いだと知っています
ですので生涯誰とも結婚は考えてはいません
実子でもない私に侯爵家の跡継ぎにとお考えくださるのは大変嬉しい事と思います
幸い私はバロンの爵位がありますので侯爵家は親族のどなた方にお譲り下さい お願いします」
ジュリアーノは申し訳なさそうに頭を下げた
ジュリアーノの突然の告白にブルワーノ マリエッタ オランジェは何も言えなかった
思いもしなかったジュリアーノの告白にブルワーノ呟いた
「考え直す余地はないのか?」
「義父上 これ以上考えても私の気持ちは決して変わることはありません わざわざお話を頂いたのに期待に答えられず申し訳ありません」
言葉を残して部屋を出ていった
(ジュノ義兄様には思い人の殿下がいらっしゃるから婚約者のお話はお断りになったのね 結婚もされないなんてやはり私の想いも届かないのね)
夕食後 晩夏の夜 夏も終わりに近づいていくのか時折涼しい風が吹いる ジュリアーノは空に浮かんで輝いていた三日月を眺めていた
部屋にいると息が詰まりそうでワインを片手にバルコニーでくつろいでいた
そこへ母のマリエッタがそっと近づいていた
「ジュノ私にもワインを注いでくれないかしら?親子2人で飲むなんて初めてじゃない?」
「母上 グラスをどうぞ」
「昼間のジュノの話には少し驚いてしまったわ ジュノ 相手の方にはあなたの想いは伝えたの?」
「いいえ 私はその方の側にいるだけで満足なので」
「ジュノ 愛する人がずっと側にいるなんて考えちゃ駄目よ ブルワーノ様も私もある日突然 愛する人を失ってしまったの知っているでしょう?」
「でも今の私にはその方に私の気持を伝える勇気がありません 口に出すとその方が居なくなりそうで怖いのです」
「怖がってないで伝えなさい 愛する人の側にいるだけじゃだめなのよ
後悔する前に気持を伝えるのよ
受け入れてもらえるか もらえないかは解らないじゃないの
その先にその方と共に歩む人生が待ってるかもしれないのに 何に拘っているのか解らないけど
言わなくて後悔するのと言って後悔するのではどちらがいいか あなたなら解るはずよ」
そう言い残すとワインを飲み干しジュリアーノの肩を小さく叩いてマリエッタはバルコニーから部屋へ戻った
マリエッタは早々にスポルト・カッシュへ手紙を送った大切な娘をどうか治してやって欲しいと切実なお願いをした
スポルト・カッシュからの快諾の返事は早かった
ステファニー殿下の執務室にいたジュリアーノの元に 快諾の返事が貰えたとマリエッタから短い手紙が届いた
「ジュリアーノ 良かったな」涙ぐむテオ
「おめでとうジュリアーノ長年の願いが叶うな
それでは君にトラスト大公国への医療視察を命じる しっかりと最新医療をその目で見てくるんだぞ」
「殿下 行っても良いのですか?」
「オランジェ嬢と共に行ってこい 但し期間は一月半だ ジュリアーノがそれ以上留守だと仕事が回らないからな」
「殿下の御配慮に感謝致します」恭しく頭を下げた
用意が出来次第 直ちにオランジェとジュリアーノは初秋の朝トラスト大公国へ旅立った




