あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)31
王国病院の医師が約束通りにアランデール邸に往診にやってきた
この日はジュリアーノも特別に休暇を貰って昨日から邸に滞在している
玄関で医師を迎え早速 客間へ案内する
客間には既にオランジェが待っていた
「始めましてオランジェ・アランデールです 今日お越しいただいてありがとうございます診察 宜しくお願いします」
医師は座る間もなく言った
「始めまして では早速ですが診察を始めましょうか」
医師はまずはオランジェの脚の状態を詳しく聞き つま先 脚 腰 背中と触診していった 特に脚の付け根を何度も確認した その後オランジェの歩く姿を見定めていた
1時間に及ぶ診察が終わり考えを巡らせた後 診断結果を2人に伝える
「アランデール様 幼い頃の事故の話や歩き方 触診を総合的にまとめるとお嬢様は股関節に問題があります 詳しくは変形性股関節症だと思われます」
「先生 変形性股関節症というのは病院での治療を受ければ治るものなのでしょうか?」
「方法は1つてす 手術すれば治る可能性はあります
私ではその経験が未熟でこの国で股関節の手術が出来る人物はいません 私の恩師でありトラスト大公国の外科医であるスポルト・カッシュ先生なら確実かと 遠いですがトラスト大公国へ行かれカッシュ先生の診察を是非受けられる事をお薦めします」
「今スポルト・カッシュ先生とおっしゃいましたか?」
「トラスト大公国の先生をご存知なのですか?」
「スポルト・カッシュは私の叔父にあたる人物で間違いないと思います 父の弟かと 私の容姿を見ていただける分かると思うのですがトラスト大公国の生まれで実父はプルヴィア・カッシュと言います 内科医をしていました」
「スポルト先生に内科医をしていた兄君を病気で亡くされたと伺った事があります 多分間違い無いでしょう アランデール様の叔父上とは何と奇遇なのでしょうか 留学中の私を受け入れてくださり教えてくださったスポルト先生には感謝しかありません」
「ランはどうしたい?遠いけどトラスト大公国に行って診察を受けてみるかい?僕はランの脚が治る可能性があるなら行って診察を受ける価値はあると思うよ でも決めるのはランだよ 僕はランの選択を尊重する」
今まで黙っていたオランジェが口を開いた
「脚が治るかもしれないないのですね 突然のお話でまだ頭の整理が追いつきません お父様 マリお義母様にも相談したいのです 暫く考える時間をくださいませんか」
「そうだね 両親と話し合おうね 先生今日はお越しいただいてありがとうございました 家族で相談します 後程ご連絡いたします」
「決心がつかれたらガッシュ先生に手紙を書きますのでご安心下さい それでは前向きにご検討されて下さい」
ジュリアーノは早速アランデール領にいるブルワーノに手紙で知らせた
手紙を受け取ったブルワーノとマリエッタは急いで領地から王都の邸に帰ってきた
「義父上お呼び立てして申し訳ありません」
「ランに関する事だから急いで来たよ」
「ランちゃん元気にしてた?」
少し日焼けしたマリエッタは馬車から降りるなりオランジェを抱きしめた
「マリお義母様 領地での暮らしは楽しいですか?」
「思ったよりやる事が多くて充実した毎日を送ってるわ ひまわりの花が庭一杯に咲いたの 領地暮らしがこんなにも楽しいものだなんて想像以上なの」
「お父様おかえりなさい」
「挨拶はゆっくりでいいから早速ドローイングルームへ移動しようか」
4人は部屋へ入った ソファーに座るなり
「ランの希望の光を知らせたくれてありがとうジュノ」
「家族の長年の想いが報われるかもしれません」
「ランの気持ちは決まったのかい?」
「私の意志は決まったのだけれどお父様とマリお義母様のご意見も聞きたいと思ったの」
「ブルワーノ様と話したのだけれどランちゃんの考えを尊重しようって」
「ランはどうしたいのだ?」
「私は手術は怖いけど左脚のしびれが治り 普通に歩く事ができれば手術を受けたいわ もし失敗してもそれはそれで受け止めます」
オランジェに迷いはなかった
それを聞いた3人はオランジェの言葉に頷いた
「我々はランの決心を後押ししよう」ブルワーノは力強く言った
「では私からスポルト様に手紙でお願いしてみます」
「母上にお任せしてもいいですか?」
「もちろんよ 可愛い義娘ランちゃんの為だもの
私に任せてね」
オランジェは新たな未来に向かって進みだした




