あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)02
気がつくと机に突っ伏して寝ていた 灯りもそのままに
(さすがに身体中が痛いな)
他国から取り寄せた医療関係の書類が開いたまま散乱していた
(ああ ちょっと休憩するつもりが寝入ってしまったんだな)
ジュリアーノは王宮の自室で目を覚ました
机に座り直し伸びをした後かけていた眼鏡を外し目頭を抑えた
昨夜も遅くまで第2殿下ステファニーと実務をこなしていた
グランドル国でステファニー王子の側近として忙しい毎日を送る日々
アランデールの屋敷から通うのは時間の無駄と判断したステファニー王子が王宮内に部屋を用意してくれたのだ
あれから2半年 ジュリアーノはすっかりこの殺風景でベッドと机 ソファーしかない部屋の住人になっていた
日当たりはいいが日中は誰もいない部屋
住人であるジュリアーノは寝に帰るだけなのにいい部屋を用意してくれたステファニー殿下に感謝している
ジュリアーノがアランデール邸に帰れるのは1ヶ月に一度それも3日だけ
残念だが前の休みは屋敷に帰れなかった
学園の騎士科を首席で卒業後 ステファニー殿下に乞われ側近になって3年
ジュリアーノは21歳になっていた
(今何時頃だろう?愛しいランはもう起きて朝食済んだだろうか?食が細くて心配だな 今度の休みには絶対に帰らなくては…
会いたい ランの顔が見たい)
着替えを済ませ眼鏡をかけ直すとコーヒーを王宮の侍従に頼んだ
熱いコーヒーで眠気を払いステファニー王子の執務室へと向かった
執務室の前にはテオがいた「ジュリアーノ早いな」
「テオ今日はステファニー殿下の警護か?」
ドアを開けるとステファニー殿下はすでに座っていた
「おー!愛するジュリアーノ おはよう 今日の機嫌はどうだい?」
毎朝言われる「愛してる」を軽く受け流す
「おはようございます殿下
殿下は今日もご機嫌ですね 何かいい事があったのですか?
でも頼みますから その(愛してる)は止めて下さいと言ってるではありませんか」
「ミーシャと同じくらい愛してるのは本当だぞ!
まあ 固い事言うなよ
僕が君に(愛してる)って言うことで僕達の関係を勘違いしてる奴らが多いのは僕らの作戦だろう?」
「確かに 結婚適齢期の殿下と私
気の乗らない婚約者探しに巻き込まれない為の防御策になってはいますがね」
第2王子のステファニーは結婚すると公爵に下り王宮を離れなければならない
やり始めたばかりの国内医療の発展に至るにはまだ結婚は早すぎると考えているのだ
一方 ジュリアーノは義妹オランジェへの想いを捨てきれない 義妹を愛してるなんて… 叶わない恋ならば一生独身でいたいと思っている
二人の考えは一致しておりお互いに了解済みだ
「聞いてくれ!昨夜は久しぶりに彼女が僕のベッドに来てくれたんだよ」
「それは良かったですね」
「そうだろう?長くて白い毛並みで長い尻尾をパタパタさせる姿が愛らしいミーシャ♥
その姿をずっと見てたんだ 今日も執務室へ連れて来たかったんだけどスティオネから止められちゃったんだ」
執務室長であり幼年の頃からのステファニーの補佐をしているスティオネは部屋の隅に立っていて飽きれた顔で首を横に振った
「殿下 片思いも大変ですね あまりしつこいと嫌われますよ」




