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あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)01

またこの夢だわ


何度も見ている夢


夢とはわかっているのに毎回私を幸せな気持ちにさせてくれる


愛するジュノ義兄様と十六夜の月光の下 オレンジ色の靴を履いて 軽やかに

お義兄様と踊る自分の姿


私には絶対に叶わない夢


わがままだけど夢の中だけでもお義兄様を独り占めできる…


でも夢から覚めて現実に戻ると夢の中で感じた幸せは何処へいくのか…


絶望感に涙してしまう姿


いつもそこで目が覚める


ジュノお義兄様への恋心は誰にも悟られてはいけない

お義兄様には好きな方がいらっしゃるのだから


オランジェはベッドから身を起こし左脚を少し引きずりながらソファーに座った


長い間 朝焼けの中 沈みゆく 欠けた月を眺めていた

どのくらい座っていたのだろうかドアの外からノックの音がする

「お嬢様 おはようございます 入ってもよろしいですか?」と侍女のハニが言った

「どうぞ おはようハニ 

今日はどんな髪型がいいかしら?」

「お嬢様のシルバーの御髪はとても綺麗なので今日も上だけリボンで結んで流した髪型にしますね」

「ドレスはいつもの動きやすいのをお願いね」


朝の身支度を終えて朝食の為に食堂へ向かう

今日の朝食はクロワッサンとチーズオムレツとコーヒー

紅茶は気分転換の時には飲むがどちらかといえばブラックコーヒーが好きだ

義兄の真似をしてコーヒーを嗜んでいたら いつの間にか生活の一部になってしまっていた


父親と義母は仲良く領地にいるし

お城で勤務している義兄は ほぼ家には帰って来ない

オランジェは家族がいない一人の朝食にも慣れてしまった


クロワッサンもチーズオムレツも口にしたのは半分程だった

コーヒーの最後の一口を飲み干すと

(私もそろそろ仕事部屋に行かなくちゃ)

席を立って食堂を後にした


寝室の向いにある仕事部屋へ着くとカーテンと窓を開け放った 爽やかな春の風がオランジェの銀髪をサラサラと揺らす


机の上には古文書が高く積まれている

城にある難解な古文書を読み解くのが18歳のオランジェの仕事だ


古文書の種類は500年以上前の王家の執政書や貴族との契約書 中には童話やおとぎ話などありとあらゆる書物がオランジェの元に届けられる


(古文書解読室長のリッテラ・パリトル様がいらっしゃるのは明後日ね 早く仕上げないと渡せないわ)



風に煽られて1枚の紙がひらひらと舞ってしまった


【月の雫のファーブラ】

春の十三夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて手を繋ぎなさい


夏の十四夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて見つめ合いなさい


秋の十五夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いてお互いの髪に触れなさい


冬の十六夜の月の下 瞳と同じ色の靴を履いて踊りなさい


そうすればアルテミスに愛され その恋は成就するだろう


3年前 解読依頼の仕事を始めたばかりの頃 オランジェが手がけた【月の雫のファーブラ】というおとぎ話にあった言葉が心に残り思わず書き留めてしまった

永遠に叶うことのない夢


オランジェは仕事の手を止めて少し左脚を引きずりながら その紙を拾い胸に抱いた

ジュノ義兄様…

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