あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)19
今日からいよいよ貴族学園での生活が始まる
騎士科の食堂は別の生徒とは違い独立している
騎士科は体力が勝負だ
他の科とは食事メニューも違う 体力維持のための栄養管理がしっかりとされている
学園は騎士の育成に力を入れていた
ジュリアーノは騎士服に着替えてテオと共に食堂へ やってきた
朝の食堂は寄宿生全員が集まり昨夜とは違い賑やかだった
ジュリアーノの容貌は目立つ ジロジロと見られるのには慣れてはいたが あからさまの視線に少々うんざりしていた
昨夜ジュリアーノに言いがかりをつけてきたアーテル・ロクスランが睨みつけている
少し不機嫌なジュリアーノにテオが
「気にするなよ お前の姿が珍しいだけさ 暫くの辛抱だ」
「ああ」と返事をしてさっさと食事を済ませた
学園の入学式が始まった
学園長の言葉に引き続き3年生のステファニー第2王子が生徒を代表して新入生に歓迎の言葉をかける
「私は騎士科3年のステファニー・グランドルだ 君達は今日からこの学園の一員となった 貴族としての立場をよく理解ししっかりと勉学に励んで欲しい ここでの体験はこれからの君達の人生を左右する
それを忘れずに学園生活を送るように 君達の入学を歓迎する」
それに対して騎士の試験で最高点だったジュリアーノは新入生代表で宣誓をした
黒髪で目立つジュリアーノの姿を見て生徒たち全員ががざわついた
「騎士科に入学したジュリアーノ・アランデールです 新入生を代表してこの場に立つことを光栄に思います またこの権威ある学園の一員になった事を誇りに思います
これから 先生方先輩方にはご迷惑をおかけすると思いますがご指導をして頂ければ幸いです
先程のステファニー王子から頂いた言葉を胸に刻んで学園生活を送ります」
さっきのざわめつきは止み 会場は静まり返った 無事に入学の儀式は終わった
学園の1日はまたたく間に過ぎて行く 土日講義は無いが生徒は各々課題に取り組む
特に1年生は学ぶ事も多い
身体を休める事をできるのは日曜日の夕方だけだった
午前中 他科の1年生と一般授業を受けた帰り騎士の寄宿舎に戻ろうとしたジュリアーノに女子生徒が声を掛けた
「ジュリアーノ・アランデール様 入学式の宣誓は胸が震えましたわ いつお声掛けしょうかと思っていした アランデール様 私は
貴族学科のルーラ・ロスクランと申します アランデール様とお近づきになりたいのです お友達になってくださいませんか 是非よろしくお願いしますわ」
以前から何かと目を合わせ笑いかけてくる視線をジュリアーノは不快に思っていた
(あの女子 やはり話しかけてきたか 鬱陶しい)
怪訝な顔をしたジュリアーノは言い放った
「たしか君は新興貴族ロスクラン子爵家の令嬢だとお見受けした 私は君に私の名前を呼ぶ許可は与えていない それに君はこの学園に何をしに来ているのだ」
「あら私の家の事をご存知ですのね 嬉しいわ」
「貴族年鑑を覚えるの貴族の基本だ 全くそんなことも知らないのか
私は君と友達ごっこをしている暇はない 金輪際私に声をかけないでくれ給え 失礼する」
ジュリアーノは冷たい視線を浴びせて足早に去って行った
その場にいる全員に見知られ 恥をかかされたと怒るルーラの顔は真っ赤になった
(フンなによ たかが財務大臣の息子くせに随分なもののいいようね こうなったら騎士科のアーテルお兄様に
言いつけてやるわ 見てなさい 私を甘くみたことを後悔させてやるのだから)
ジュリアーノは何故か同じ騎士科の3年の第2王子ステファニーからすれ違いざまや 図書館 食堂などでよく声を掛けられた ついでだからといって剣の稽古も付けてくれた
優しく声をかけてくれる先輩もいれば陰口を言う者もいる
「親の権力で新入生代表に選ばれた」
「あの黒髪は呪われている」
「あの体格で騎士科の試験に通るはずはない」
食堂ではあからさまに舌打ちする者もいた
とりわけ態度が悪いのがステファニー王子と同学年のアーテル・ロスクワンだった
妹から泣き付かれてジュリアーノに嫌がらせをしていた
日頃から不思議に思っていたジュリアーノはある日ステファニー王子に聞いてみた
「殿下はどうして私の事を気にかけてくださるのですか?何かお話があるのでは?」
「あー バレた?
ん ジュリアーノに話があるんだ この際だからいつものお礼としてお願いを聞いてくれる?」
「怖いですね 何のお願いでしょうか?」
「僕に力を貸してくれないかなぁ」
「はぁ??」
「実は君の能力を買って生徒会に引き込もうと企んでいるのだよ いきなりスカウトしても応じてくれなさそうでさ 少し回り道をしちゃったかな?」
ニヤニヤ笑いながらステファニー王子は答えた
「そういう魂胆があったんですね いきなりでは流石の私でもお断りしていたでしょう」
「本音を話したんだから 断るなんてできないよねー もちろん引き受けてくれるよねー?ん?ね?」
「殿下 随分強引なやり方てすね お断りしづらいお願いですね」
「物事をすすめるには外堀から攻めないとね ハハハ」
「はぁ そういう事なら仕方ありませんね 微力ながら生徒会お手伝いさせて頂きます」
「では僕の会長権限で君を生徒会のメンバーに指名するよ」
「どこまでお手伝いできるか判りませんがお誘いありがとうございました」
ジュリアーノは半ば諦め顔で引き受けた
この先 才能を認められて2年後生徒会長になろうとはこの時のジュリアーノは知る由もない
生徒会の手伝いがきっかけでステファニーとジュリアーノの関係がこの先長く続くことになろうとは誰も予想しなかった




