あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)18
アランデール邸を出てからどのくらい馬車で揺られていただろう
執事のゾーンが言った
「ジュリアーノ様もうそろそろ到着です」
賑やかな町並みから外れ 草原地帯が広がっている
(王都とはいえ随分王宮から離れているんだな
突然遠くの方に大きな建物が見え始めた
あれが貴族学園か?)
貴族学園の教育期間は4年 街の喧騒とは離れ貴族が学べる場として建てられた由緒ある学園である
ブルワーノもマリエッタもこの学園の卒業生だ
学園の同じ敷地に寄宿舎がある
明日の入学式に備え入寮する生徒の姿が数多く見受けられる
進む学科によって寄宿舎も分けられているらしい
学園は騎士科 貴族学科 文官科 経営科の4つ
1・2年生の間は午前中 語学 数学など一般授業を科を越えて受ける
午後からはそれぞれに分かれて適した科目を学ぶ
3・4生になると一般授業が無くなりそれぞれの科に分かれ より専門的な講義が始まる
特に騎士科は地形学 戦略学 戦闘学 戦場で負傷する場合もあるので医学など 座学の他に実践や武器を携帯しながらの乗馬など 他の科より多くの事を学んでいく
騎士科の卒業生は将来 一般騎士の指揮や管理運営を担うリーダーになる
エリート養成集団だ
定員は30名 だが離脱率が高く騎士科として卒業していくのは毎年10名以下だ
騎士科だけは学園入学前に予備試験がある
予備試験に受かるそれだけ実力が物を言う
また騎士科は他の生徒とは制服も違い騎士服を身に着け寄宿舎の待遇も違った
貴族学科は貴族としての一般教養を学ぶ 女子の殆どがここに所属する また騎士科で脱落した者も貴族科に転属する
文官科と経営科は貴族の次男 三男の多くが所属する
彼らは爵位を継げないため家を離れ庶民に下るか爵位持ちの令嬢と結婚する他に道はない
もし庶民になれば文官や経営者になって生活しなければならない 稀に文官になりたい女子や領地の経営を学びたい長男や女子も在学する
貴族の世界も厳しい身分制度に縛られている
18歳で卒業後の人生に備えるため貴族学園でしっかりと学ぶのだ
ジュリアーノはゾーンに言った
「行ってくるよ 義父上に無事に着いたと報告してくれないか」
「かしこまりました ジュリアーノ様」
別れを告げ騎士科の寄宿舎入っていった
両手にトランクを持って自室へ運び込んだ
新入生は建物の一番上の階に入寮が決まっていた 寄宿舎でも序列は厳しく学年が上がって行くに連れ下の階が与えられる
部屋の中は殺風景だ 貴族の邸とは違い机とベッドとクローゼットのみ
すでに先に運び込まれていた荷物とトランクの整理が終わった頃ドアがノックされる
「いきなり失礼 俺は隣の部屋のテオ・アンブラと言う 同じ年だからタメ語でいいよな」
「僕はジュリアーノ・アランデール 今日からよろしく」
「君が噂のジュリアーノ・アランデールか 財務大臣の息子なんだってな 眼鏡かけて そんなヒョロヒョロした成で入学試験トップだなんて嘘だろ? もっとガッチリした体格だと思ってた!」
「思うのは自由だが本人に言うことか?」
「まあ とにかく 何かの縁だと思って 仲良くしてくれよ」
後に生涯の友となるテオ・アンブラとの出逢いだった
ラフな格好でテオと早めの夕食を食べに行った
寄宿生はまばらで人は少なかった
その中でいきなり上級生らしい生徒から声をかけられた
「お前がジュリアーノ・アランデールか?財務大臣の息子なんだってな 親のお陰で騎士科に入ったんだってなぁ いいよな 偉い親がいると」
吐き捨てられるように言い放った
ジュリアーノは表情も変えず無視して食事をしていた
「お高く止まってるのも今のうちさ 騎士科の講義についてこられるか見ものだなぁ」と言って去っていった
これから顔を合わせる度に何かと何癖をつけてくる3年生のアーテル・ロクスランだった




