あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)14
家族が増えて数年が過ぎた
いよいよ明後日ジュリアーノが貴族学園の寄宿舎へ行く 今日は全ての授業を休んでジュリアーノとオランジェは馬で二人でピクニックに行こうと計画していた
乗馬の先生にお墨付きをもらうまでに上達したジュリアーノは前方にオランジェを横抱きにして馬に跨った
馬はタ・タ・タ・タと常歩で進む
「ラン 大丈夫かい?揺れない?何かあったらすぐ僕に言うんだよ」
「わー ジュノお義兄様 馬の上から見る景色ってこんなにも素敵なのね」
「ランは馬に乗るのは初めてだもんね 馬で駆け抜ける気分は最高だよ」
「お義兄様が羨ましい 私もいつか一緒に並んで駆け抜けたい また一つ夢ができたわ」
しばらくすると青いネモフィラが一面に咲き乱れる丘に着いた どこまでも青に染まったその景色は息を飲む様だった
「わーお義兄様 ネモフィラがこんなにも沢山咲いてるなんて!!」
「乗馬の途中でここを偶然見つけたんだよ ランにこの景色を見せて上げたくて」
「こんな近くの素敵な場所でお義兄様とピクニックができるなんて 最後にいい思い出ができたわ」
「最後じゃないよ また連れてきてあげるよ」
「そうね… でもお義兄様は学園に入られるから中々おうちに帰るのが難しくなくって?」
「うん 確かにピクニックは無理かな でもランを馬に乗せてあげることは出来るから楽しみに待ってて」
広場に着くと馬を木に繋いだ
地面に毛布を引きオランジェを抱えて下ろし座らせた
隣にジュリアーノも座る
風が吹いて 銀色の髪と黒色の髪が共になびく
サンドイッチを頬張りながら二人は話す
「いよいよ明後日お義兄様は 家を離れちゃうのね」
「全寮制だから 暫くは会えないな
4年か… 短かったなぁ 僕らが家族になって 僕はランが妹になってくれて嬉しかったんだよ」
「私も同じ気持ちよ お義兄様」
「一緒に住んでみて初めてわかったんだけどランって意外と好奇心旺盛で行動的だよな」
「お義兄様は真面目で慎重派ね 私は出来る事は何でもやってみたいの だって できない事も沢山あるから」
「ランが木に登ろうとして義父上に酷く叱られた事があっただろう?」
「ああ あの時ね だって登ってみたかったんだもの不貞腐れた私が部屋に鍵を掛けて篭った時ね」
「その日1日 部屋から出て来なくて心配したんだぞ」
「次の日のお義兄様が来てくれてくれたわ サンドイッチを持ってきてくれて一緒に食べたわね 今日みたいに」
「あの時のサンドイッチの味は忘れられないな」
「お義兄様これをどうぞ
寄宿舎に是非持って行ってください」
オランジェはリボンの付いた小さな箱を渡した
「ラン 何かな?開けてもいい?」
「はい 気に入ってもらえると嬉しいわ」
箱を開けるとダークオレンジ色の組紐が現れた
「髪紐?」
「義兄様の長い黒い髪に似合うかなと思って選びました 私のは黒色です」
「ありがとうラン 大事に使うよ」
ネモフィラの丘で
二人は懐かしむ様に取り留めのない話をした 幼い頃の話はいつまでも尽きる事は無かった




