あの月の下で私と踊って(お義兄様と私の物語)11
叔父のステラ子爵家夫婦は僕の黒髪で黒い瞳を好まず別邸には滅多に近づかなかった
言葉を交わした事は数えるくらいしか無い
未亡人で風貌の珍らしい子供を連れて帰った妹が噂好きの社交界の注目を集めるのが嫌だったらしい
こんな容姿の僕でも祖父母は沢山愛してくれた
本邸から別邸へ遊びにきてくれた
祖父は僕を背負って遊んでくれ 追いかけっこをした思い出もある 剣が持てる頃には相手をしてくれた
祖母は隣に座って食事やお茶のマナーを教えてくれた
サンドイッチやお菓子を自ら作って食べさせてくれた事もあった
祖母と母上と庭の手入れをした思い出もある
夏になると庭園には百合の花が咲き乱れていた
また庭で楽しく祖父 祖母 母上と僕でお茶を飲む事もあった
ステラ子爵家夫婦はあまりいい顔をしなかったのだけれど
母上は僕がおもしろいと思ったものは何でも学ばせてくれた
医学に興味を持った時は医学書を与えてくれ
剣に興味を持った時は元騎士を先生を付けてくれ
天文学に興味を持った時は望遠鏡を与えてくれた
母が唯一親交を持ったのがカタリナ・リメント様だ
カタリナ様は母上の学友で親友でもあったそうだ
夫を亡くし傷心でこの国に帰ってきた母上
母上を心配して様子を伺いに何度も訪ねて来てくれたそうだ
別邸に来るたびに僕にお土産を用意してくれていた
僕をぎゅっと抱きしめて「お母様の支えになってね」とよく言われていたのを朧げに覚えている
幼すぎて言葉の意味はわからなかったけど「はい」と小さい声で答えていた気がする
ある日「やっとリーナがブルワーノ様と結婚するのよ どんなにこの日を待ちわびていたかジュリアーノ分かる?」とこれ以上ない笑顔を湛えて親友の結婚を祝福していた
「母上はカタリナ様が大事で大好きなんですね」
「そうよ 学園で共に学び共に遊び共に時間を過ごした大事な大事な親友」
祖父母は僕が6歳になる頃相次いで亡くなった
また母上が大好きだったカタリナ様が亡くなったのと同じ時期だった
母上の悲しみはどんなに深かったのだろう
今思うと よく耐え忍んでいられたな
カタリナ様の残された1人娘が事故の影響で足に麻痺があると聞いた
心配した母上は僕を連れてアランデール邸へ赴いた
初めてオランジェと出逢った日だった
忘れもしないその日
シルバーの髪が揺れていてオレンジ色の瞳が僕を見つめていた
この僕の黒髪と黒瞳を綺麗だと言ってくれた
幼いオランジェを見た僕は胸の奥が締め付けられた
オランジェを愛しむ感情が生まれてきたのがわかった




