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シンコウ  作者: わらうクジラ
フール諸島国編
33/36

☆お茶会準備☆

わたしはササッと調理器具を用意する。

 子どもの好きなお菓子ってなんだろう。とりあえず、お腹を出して寝ているマニを叩き起こして好きなお菓子を聞いてみた。曰く、


「クッキーとかでいいんじゃない?」


だそうだ。

 すぐに私の布団を引っ張って顔を埋めて寝た振りをする。

 ここで昨夜のことを思い出す。私のベッドに寝させたバランがいない。


「ねぇ、マニ、バランを……」

「バランちゃん……? ここにいるよぉ……」


マニが足を上げると捲り上げられた布団の中からバランが出てきた。

 バランはゆっくり目を開けて、体を起こす。


「ここは……」


目を擦り、立ち上がろうとしたが眠かったのか動きが止まる。朝も早いし起きなくて良いのだが。

 そう思ってバランを抱き上げ私の枕に彼女の頭を置く。

 マニから私の布団を奪うようにとり、バランにかける。


「お花の……匂い……」


お香の匂いだろうか。それとも、私は私が思っているよりもずっと"お花の匂い"を纏っているのかもしれない。


「おやすみ」


私は部屋を出る。

 今回はクッキーをメインにスコーンも作ろうかな。

 まずはルーヴァを呼び、炎の準備をしてもらう。

 黒き炎でキンキンに冷やした卵を割り、砂糖を三回に分けてぶち込む。

 次に、ヴィーヴルの権能、『五輪権能(グループ) 黄輪(ナヴィ)』で土の人形を作りかき回してもらう。

 泡立て器を持ち上げてメレンゲが崩れないくらいまで混ぜればいい。

 

「あたくしは何をすれば良いですの?」

「じゃあ、このボウルに砂糖とバターを入れて潰して」


小泡(シャオ・パオ)はすぐに混ぜ始めた。頃合いを見てベーキングパウダーを入れる。

 見計らってメレンゲと牛乳を入れ、思いつきでチョコレートもいれてひとまとまりにする。

 丸くしてサイズを見ながらいい感じに分ける。今回は20等分だろうか。

 あとはルーヴァに任せよう。

 次はクッキー作りだ。ルーヴァの近くにバターを置けば溶けるから置いておこう。

 少し時間がかかりそうだし、朝ごはんでも作っておこうか。

 今回は適当に、パンを焼いて蜂蜜をかけるだけでいい……のつもりだったが、甘いものを食べたあとにクッキーは違うかもな。

 パンを焼いて手作りタルタルでもかけて食べようかな。

 毎朝丁寧に料理を作るのもいいが、ご飯のメニューを考えるのは思ったよりも手間なのだ。

 

「ただいまぁ! オリちゃん、いい鳥が取れたよ!!」

「ザキル速いって……」


鳥肉か。しかし、リートに鳥肉を提供するのは気が引けるな。


「鳥か。なんの鳥だ?」


最悪のタイミングで現れたのはリートだ。

 有翼人(ハーピィ)の目の前で鳥肉を捌くと精神的ショックで死んじゃわない?


「えっとねぇ……七色羽の……? なんだっけ、オリちゃん?」

「ちょ……ザキル……」


なぜ私に話を振るんだ。ヴェレーノも声が小さくてザキルには届いてないし。


「まあ、名前などどうでもよいな。おらが捌こう! 鳥肉は旨いからな。どう調理しようか? 丸焼きか? フライドチキンも旨いなぁ。悩ましい限りだ。はっはっは! そう言えば最近は食べてないな。オリは鳥が苦手か?」


それは嫌味か? それとも、単純に申し出てるのか? 

 しかも生きてるし。待てよ……?


「いや……まだ生きてるみたいだし、飼おうよ! かわいい子だし! 名前でもつけちゃおうかな!」


私、ファインプレー! 続いてヴェレーノと、黙っていた小泡(シャオ・パオ)も乗る。


「そうしよう!」

「ええ。あたくしも賛成ですわ!」 


しかしまだ気がついてないのか、リートが、


「なぜだ? ずいぶん弱ってるようだし、食べてしまうのがその子にとってもよいだろう! 子どもたちも鳥肉は食べやすくて好きな子が多いと聞く──」


そこまで言って私たちが気にしていることに気がついたようだ。おそらくリートの翼が視界に入ったのだろう。


「もしや、おらが有翼人(ハーピィ)だから、気を使っているのか!?」

「なるほど……」


なるほどって何? 

 まあ、ザキルを庇うために思い当たる節があるとするなら、ザキルは機械系統だから有翼人(ハーピィ)と鳥系統の魔物では分けて考えていたのかもしれないということだ。

 

「ど……道理で父と母に鳥料理を出した時、顔が引きつるわけだ……!! 市販食材が気に食わないのかと思い、自ら捕獲をしようと考えていた。も……盲点であった……」


こうなると何を言ってもふさわしくない。

 

「し、しかし! 牛の獣人に誘われて牛肉パーティをしたこともあるぞ! しかも、どちらが多く食べれるかの競争をして負けた!」


リートは記憶を探り回したあとそう言った。


「やはり鳥肉を食べたい……。おらに調理させてくれ!」

「反論はないけど……私が下処理しようか……?」

「おらは血抜きから何から何までできるぞ! 夕食まで待っててくれ、無駄なく調理する!!」


そう言うなり外に行ってしまった。多分羽の処理をしてくるんだろう。

 羽の処理を終えたら私が回収しようかな。冷蔵庫よりも冷やせるしな。


「朝ごはん簡単に作るね」

  

パンを用意してチーズを乗せ、上からタルタルソースを適量のせ、ルーヴァに頼んで焼く。

 ほかの料理と違ってすぐに家族分が賄えるのがポイント高い。

 とりあえず起きている人たちに配り、スキルを貸してくれたヴィーヴルとルーヴァ、トルンにもあげる。

 本当はもう少し手をかけた料理をあげられたら良いのだが、今回は許してね。

 多分革命が終わってもしばらくはフール諸島国に居続けるだろうし。そしたら、マニの補助でカオスの力が回復しきるだろう。


「アタシにもあるのかい!?」

「ええ。適当だけど、それでよければ食べてみて」


そう言うとヴィーヴルはトーストを取り、豪快にかぶりつく。


「うめぇ!」

「たしかに旨いな……」


ルーヴァは静かに口に入れ続けている。トルンはパンと一緒に悦びまで噛み締めているようだ。かわいいな、こいつら。


「私も食べようかな。これでいいならみんなの分も作るけど」

「あら、あたくしも頂けますの? ふふ、阿莉(アー・リー)の手料理ですもの。頂かないと損ですわ」

「そ、そう? 褒め上手だね……」

「あたしは2枚食べる!」

「俺は3枚食べる。リートさんにも持っていくから追加で2枚くれ」


ここまで来て思い出した。たぶんリートにも全然鳥の卵出してたわ。このタルタルにもゆで卵を刻んだやつ混ぜてるし。

 っていうか、ホテルの時リートが真っ先にフライドチキン食べてた気がする。そのあともチキン料理ばかり取ってなかったっけ。

 じゃあ純粋に鳥肉好きなんだな。

 そんなことを考えていたら、結局みんなの分を焼くことになっていた。

 まあ別に乗せて焼くだけだし手間じゃないから良いんだけど。

 準備していると、そろそろパンが尽きそうなことに気がつく。

 フールにあるパン屋さんで買おうかな。たしか、"居場所かふぇ"で食パンも販売していたはずだ。

 そうこうしてたらバターがいい感じになってきたみたいだ。

 薄力粉をふるいにかける──必要はない。というのもすでにやってあるからだ。

 やっぱりそういうところで料理の手際の良さが出るのだ。


「オリヴィアちゃん。これダマになってる」


急にふるいを振りたくなってきた。そういう時のために私はあえてまだふるいにかけてない薄力粉を用意したわけだ。

 だから決して、私が間違えたわけではない。断じて、私が前フリをしたわけではない。

 私はふるいを使ってダマを取り除く。

 ちなみに、ふるいを使うのは好きだ。だから先にやっておいたというよりかは我慢できなくなってやったと言ったほうが正しい。


「……よし、次はお皿にオイルを塗る。そうすれば焼いたときにくっつかないからね」


次にボウルを用意してバターと砂糖を入れる。しばらくかき混ぜればふわふわになる。

 そこに卵黄を入れて混ぜ、そして紅茶葉を入れて混ぜる。

 ふるった薄力粉を加え、ヘラを用意して切るように混ぜる。私だけしか食べないのなら武器に『三権権能(グループ) 堕霊(おれい)・断罪』を貼ってヘラにするのだが、人のスキルが直接触れた料理は食べられない人もいるしやめる。

 少しすると塊になってきて、粉っぽさもなくなる。

 あとはなぜか多量にファーニンが持っていたラップというやつで包む。これは革命ですよ。

 私はファーニンの家にある装置類は怖くて触ってないが、こういう料理に使える小物は助かる。

 ファーニンはあまり料理が得意ではなく料理に関する家電は買わなかったという。ヴァルメシを食べれば良いというのもあり温めるための家電すら買わなかったとか。──あ、ファーニンと言えば、人魚はなんかのタイミングで武器を授かるみたいなことを彼女から聞いたな。まあ、どうでもいいか。

 小泡(シャオ・パオ)が何かを温めようと『電子レンジ』とやらを探していた時にファーニンがそんなふうに説明していた。

 

阿莉(アー・リー)、『オーブンレンジ』が無いけどどうするのかしら?」


ほら、また知らない固有名詞だ。

 

「それってどういうものなの?」

「えっ……? ……確かに電子レンジもご存知なかったですわね。電子レンジよりも多機能の家電ですわ。温め、焼く、揚げる、蒸すなどなど……。機構国が発明した非常に菓子作りに適したアイテムですの」


なんということだ。次の目的地が決まったな。


「よし、次行く国は機構国だね」


私がそう言うと小泡(シャオ・パオ)はクスリと笑った。


「あとは冷蔵庫に突っ込んで冷やそう」


だいぶ慣れたこの装置。

 音かごとも連携させることが出来、購入した商品がそのままここに直接送れる機能もある。

 冷やしている待ち時間の最中に子どもたちが起きてきてご飯を与える。

 楽しい一日が始まりそうだった。


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