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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
番外編-Omake no hanashi-
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推し会議⑤


 続けてモフミニェが始めたのは、医療都市ホスサイトおよび終末医療集落ウバスティンでのことだ。

これもまたアニィにとってつらい記憶の一つではある。

というのも、『魔力隔壁』によってプリスとの魔力の出口の共有を断たれてしまったからだ。

一時とは言えプリスとのつながりを完全に断たれ、アニィは死すら考えたという。

その時に出会ったのがウバスティンの住人、ハイドソン父娘であった。


 「そもそもアニィ君達がホスサイトに立ち寄ったのは、アニィ君の症状のためなんだ。

  邪星獣に変化させられてしまうという恐ろしい魔術の症状を調べるため、っていう」


 別の生命体へと作り替えられるという、人類にとって未知の魔術である。

最先端の医学と医療技術をもってしても尚、完全な治療ができるかは不明…

というより、実質的には経過観察と発症時の対処しかできなかった症状だ。

幸運だったのは、それを内科医のナイア・カシンがすんなり受け入れ、理解を示したことである。

その前に強引に割り込んだラスメント・ヤブッシュに診断されていたら、何も知らぬままアニィは邪星獣にされていた可能性もある。


 「あ。それそれ、ちょっと聞いてよ」


 ここで苦々しい顔したモフミネリィが突然口を出した。


 「どうしたでゴザル?」

 「そのヤブッシュなるじーさんがさぁー、よりにもよってウチん町に来たんよ」

 「ちゅん~」

 「ポンポコ……」


 彼女が言った通り、ヤブッシュ元医師はアグリミノルまで逃げのびてきたのだ。

アニィ達の活躍と、その後町長メグがマルシェ夫人の義足を作ったことから、小さいながら医療の町として有名になったらしい。

そしてそこでなら資格を生かし、医師として再起できるだろうと踏んだのであった。

現地で町長、ニクラス・クリン医師、モフミネリィ、そしてバルベナが面談を行ったのだが…

モフミネリィは苦々しい顔から一転、憐れみを浮かべつつも厭味ったらしく笑った。


 「あンのくっそじじい、いきなりアニィちゃんの悪口言いだしてねぇ」

 「それは…もう駄目でゴザルな…」

 「ポンポコ」

 「まさにその通りなわけよ。で、激怒したのがクリン先生でね」

 「ちゅん」

 「どうなったの?」


 勢い込んでモフミーヌが尋ねると、モフミネリィは表情を崩さずに答えた。


 「腕関節バキ折り固め(アームロック)

 「えぇ~…」

 「があああってひっでぇダミ声で悲鳴上げててさ。しかもクリン先生がやたら冷静で。

  ありゃガチだね、ヒメ町長が『それ以上いけませんわ』って止めなかったら間違いなく折ってたね」


 折ってやれば良かった…などとは彼女は少ししか思わないが、それでもアニィを罵った老人に対しては、いい気味だとしか思わないモフミネリィであった。

横道にそれた話が終わったところで、モフミニェが1つ咳払いをする。


 「おほん、では話を戻そうか。アニィ君の診断が終わって次の日、邪星獣が襲来した。

  当時とにかく厄介だったのは、迂闊に斃すことができないことだったんだって。

  指1本程度の大きさしかないけど、1匹斃せば数倍から数十倍に数が増えるっていう。本当に虫みたいな奴」

 「くまくま…」


 大きさは記録されている邪星獣の中で最も小さいが、殺傷能力と機動力が桁違いに高い種類だ。

しかもその機動力を維持した通常のサイズの邪星獣まで出たのである。

恐るべきは頭部に巨大な角を持ち、大集団の突撃による殺傷や破壊を行うことだ。


 「特にヒナ君なんか、迂闊に刀を振るえば瞬く間に斃しちゃうからさ」

 「剣術の達人ゆえ逆に苦労したと、ヒナ殿は言ってたでゴザルな」

 「殺傷力という事でしたら、ある意味ではヒナ様が一番でございますからね」


 モフミノーラ、そしてプレムがうなずく。

一度刀を抜けば確実に敵を倒す切れ味抜群の剣術が、ホスサイトの最初の戦闘では逆に仇となったのだ。

命を奪わずに邪星獣の行動力を奪うすべを、不幸にして彼女は持ち合わせていなかった。

体術もできないわけでは無いが、相手が相手だけにあまりに危険すぎる。

実質的にチームでの戦闘手段を1つ奪われたようなものであった。

そもそもアニィ達のチームは攻撃能力が極めて高い。

通常の邪星獣相手ならそれで良かったのだが、ここではそれを逆手に取られてしまったのである。


 「斃せないだけならまだしも、住民の避難もしなくちゃいけなかったからね。相当大変だったらしい。

  そして厄介なことに、アニィ君の症状をさっきのヤブッシュ氏に見られてしまった」

 「モフミネリィの話だと、アニィちゃんのことを悪く言う方なんでしょ?

  どんな反応をしたの? 避難中に悪口ばかり言ったとか?」

 「それがね、姉さん…実に面倒なことをしてくれたらしくて」


 深いため息をつくモフミニェ。質問したモフミナーサは、嫌な想像と共に答えを待った。


 「ナイア先生が言うに、金づるの人たちとそろってアニィ君を追い出そうとしたらしいんだ」

 「えぇー…」

 「まあ邪星獣変化のことを公表しなかったアニィ君も、確かに問題はあった。

  迂闊に街に近寄れない症状だからね。ホスサイトに寄ったのは、必要だけど対処を若干誤った気もする。

  …ただ、ヤブッシュ医師は邪星獣に関する協会からの告知を、全く読んでいなかったらしくて。

  アニィ君達が邪星獣を連れてきた、なんてでたらめを吹聴してさ」


 うわぁ…とこの場にいる全員が顔をしかめる。

公式の告知を無視し、怪物の生態を知ろうともせず、そのくせ知らない事の責任を他人に丸投げ。

老齢の医師でありながら、まるで年齢にそぐわない行いだ。


 「この時の事が決定打となって、彼らの避難、それとアニィ君達の邪星獣への対処が遅れた。

  その結果アニィ君はまたも邪星獣に変化させられかけた」

 「くま…」

 「『創星の竜』様の魔力のおかげで防ぐことはできたのですよね?」


 モフミーヌが尋ねると、モフミニェとクマさんがうなずく。


 「何とかね。問題はその後、そのタイミングで邪星獣が魔力隔壁を発動したんだ。

  で、その騒動での傷がもとで行動が困難になって、プリスさんはやむなくアニィさんだけを逃がしたと」

 「やっぱあいつくそジジイじゃん。バキ折りは止めるべきじゃなかったなぁー」


 憎々し気につぶやくモフミネリィ。まあまあちゅんちゅん、とその膝に座るジャッキーチュンが宥める。

モフミネリィが落ち着いたところで、モフミニェが話を続けた。


 「アニィ君は魔術を使えなくなって、やむなくウバスティンに逃げた。

  ティアさんに会ったのがそこ。何とか逃げのびて休養して、プリスさんの魔術を借りて、その後状況を打破したんだそうな」


 仮にハイドソン父娘に会わなければ、逃げる途中で邪星獣に変化させられていたかもしれない…

とは、この件について語ったアニィの言葉である。

ヤブッシュの件はともかく、この出会いはアニィとティアの双方にとって幸運であった。

魔術を取り戻してプリス達を救助したアニィ、琥珀色のドラゴン・アンベルの『ドラゴンラヴァー』として再起したティア。

結ばれたティアとの友誼が、のちにオーダムでのアニィ誘拐・監禁事件の解決につながったのである。


 ちなみに邪星獣との戦闘に関して言えば、実は特筆すべき点は無い。

しかしその少し前、アニィが魔力隔壁を消滅させた技は、今なおホスサイトで語り草になっている。

街を完全に完全に封鎖した巨大な隔壁を、超巨大な魔術の剣の一撃で完全に消滅させてしまったのだ。

討伐よりむしろそちらの方で、ホスサイトでの功績は有名な程だ。


 「ティアさんが言ってたわ、あの瞬間に気持ちが全部晴れたって。

  アンベルさんとも仲良くなれて、お医者様としても復帰できたって」

 「きゅっ」


 モフミナーサの言葉に、良かった良かったと全員が喜んだ。

ということで、ここでモフミニェの話は終わりである。

エクスマ、ジェネシエンド、ホスサイト(とウバスティン)と、アニィ達と最も長く話したのが、モフミニェの密かな自慢であった。



 そしてアニィ達が旅の末に到着したのが、政権都市オーダムである。

本来なら邪星皇との決戦に備え、討伐軍への編入を辞退しながらも闘う準備を整える必要があった。

だがそこでアニィ達を待ち受けていたのは、恐るべき邪星皇の魔術の一端。

そして、アニィ達を陥れんとする邪智を極めた奸計であった。

前者でアニィ達は恐慌状態にいたり、更に集まったはずの邪星皇討伐軍は恐れをなして解散してしまった。

特にフリーダの恐怖はただ事ではなかった。彼女は天才ではあるが、その精神は撃たれ弱いのである。


 「アニィちゃん達は当時名前を公表してなかったから、お偉方の人たちには疑われてたのよねえ」


 当時を振り返って、アニィ達を迎えたモフミナーサがつぶやく。

実際、彼女達は年端も行かぬ子どもであった。

さらに『ドラゴンラヴァー』のことも広く知られているわけでは無い。

もちろん広報の発行によって『少女4人とドラゴン4頭、独自の魔術で邪星皇を斃すために旅をするチーム』はそれなりに知れていた。

それがアニィ達であると、気づいたのはアニィ達の闘いをその目で見た者だけである。

不幸なことに、イムリィ・ニア一味がその中に含まれていたのだが。


 「イムリィ達のせいで、あの子達は行動を制限せざるを得なくて…

  宿に泊まるのも買い物するのも注意しないといけなかったのよね」

 「きゅ~」

 「本当に、大変でいらしたと思います。あの人たちがわたくしの宿に入れなかったのが、不幸中の幸いでした」


 プレムも当時イムリィ一派の謀略に巻き込まれた一人である。

催眠音波によってアニィ達に関する認識を無理やり上書きされ、救助に向かうという考すら思い浮かばなかった。

もしティアが来なければ、いったいどうなっていたことか…

という具合に、オーダムに訪れたアニィ達は、邪星皇とイムリィ一派により、これまでで最も恐ろしい目に遭ったのである。


 当時、アニィ達はアイゴール大雪原を渡る途中、邪星皇に狙いを付けられた。

発覚したのは先にも議題に上がったように、スノマ・トゥーリで一晩止まった翌朝のこと。

それでもアニィは自らの願い…自分を認めるという願いのため、旅を続けた。

もちろんそれが自ら周囲を危険に陥れることだと、アニィは理解していた。

それでもなお、変身してしまわないよう注意すること前提とはいえ、旅を続けたのである。


 邪星皇は逆にそこを狙った。討伐軍を利用し、アニィ達が出動せざるを得ない状況を作ったのだ。

自分以外の存在を理解できない邪星皇は、極めて冷徹に冷酷に、討伐軍を観察したのだろう…

彼らが政府の指揮を一切無視し、自分勝手に邪星皇討伐に向かうように仕向けた。

そして自爆型邪星獣を送り込んで討伐軍を壊滅させ、彼らを護ろうとしたアニィの精神を大きく揺さぶったのである。

当然普通の人間と普通のドラゴンが邪星皇に敵うはずはないのだが、討伐軍の荒くれ者達にそんな考えは思い浮かばない。


 人死にを望まぬアニィは、どうにか彼らを護ろうとした。

だが荒くれ者達はそんなアニィ達の意思に気付かず、逆にアニィ達を退けようとした。

この時点でアニィの精神は揺さぶられ、更に自爆型による作戦行動を許すことになってしまった。

アニィ達は討伐軍の生き残りを逃がす事、邪星獣の殲滅、両方を並行しなくてはいけなくなった。

しかし討伐軍の内、『星を呼ぶ丘』に向かった者達は全滅。

ただ1人の生き残りは手足と相棒のドラゴンを喪った。


 何より、この直前にはシエフ・ライヒマン首相が殺害され、そしてかく乱のために洗脳された調査局員がアニィ達の元に送り込まれた。

他人の良心や理性を信じようとしていたアニィの胸中に、自分を陥れるためにここまでする人間への恐怖が湧いた。

邪星皇による惑星侵略が目の前に迫っているのに、何故ここまでするのかと。

だが理性の箍が外れた、あるいは野望に目がくらんだ人間は、得てして命の危機を無視するのである。


 「これが原因でアニィちゃん達は邪星皇の攻撃を受けて…

  そしてそのせいで、アニィちゃんはイムリィに捕まってしまったわけなのよね」

 「どっちか片方だけなら対処できたんだろうけどな。

  タチが悪いことにバッチリ重なってしまった」


 モフミナーサとモフミニェが言った通り、まさにアニィを狙う両者が同時に行動を起こしてしまった。

何とか邪星皇の攻撃から逃げのび、アニィ達は病院に運ばれ、その後は宿に戻って心身を休めるはずだった。

だがここでイムリィ一味が登場。風の魔術で催眠音波を操り、周囲の人間のアニィ達への認識を捻じ曲げた。

彼女達を犯罪者だと思わされた者もいれば、モフミナーサのようにアニィ達の記憶を消された者もいる。


 もしティアが来なければ、あるいはオーサーが魔術の射程範囲にいれば、アニィは行方不明にされたままであっただろう。

しかも救助した時には、アニィはイムリィが雇った男に痛めつけられ、全身に傷を負っていた。

今なお、思い出す度にモフミナーサは辛い気持ちになる。

その直前、パルからの決闘の依頼と合わせ、当時の彼女の感情はかなりふり幅が大きかった。

ティアに依頼し、しばらくの間カウンセリングを受けたほどだ。


 「結局のところアニィちゃんが助かって、本当に良かったわ…」

 「きゅ~」


 ゴマリントンもまた、アニィの監禁に気付いた1人である。

教授もこの時の異常な空気をよく憶えており、思い出しては憂鬱な表情になっていた。


 そしてパルは決闘でイムリィに勝利し、ついにアニィを解放。

イムリィの洗脳魔術の暴走で一般市民の暴動が起こったが、そこへワカバ達が到着して、解消(キャンセル)の魔術でそれも解除した。

イムリィはアニィに対して怨嗟の言葉を吐くも、結局は一蹴され、逮捕されたのであった。

こうしてイムリィの野望はついえたわけだが――


 「イムリィの相棒…というか、彼に付き添っていたウィゼルさん。

  アニィちゃんが言うに、イムリィを愛そうとして愛せず、幸福を願った末に加担してしまった、って」

 「所業を聞いただけだと、ハタ迷惑なドラゴンという感じでゴザルが…

  アニィ殿はそうは思わなかったのでゴザルかな?」

 「ポンポコ」


 本来ドラゴンは人間に対して興味を抱かない。

一方で『ドラゴンラヴァー』と一心同体の関係になったり、単純に好意を抱いた場合、個人を強く認識する。

そんな世界の常識の中で、ウィゼルは少々特異な性質を持っていたらしい。

アニィ曰く、『一族と共に在る』ドラゴンであったという。

ニア家は優秀なドラゴン乗りを輩出していたが、しかし理由はそれではない。

ウィゼルはニア家、つまりニアの一族を愛したという。


 モフミノーラが感じた通り、それこそドラゴンの中でも変わり者ではある。

とはいえ人間と友誼を結ぶのはドラゴンにもよくあることで、ウィゼルの場合、その対象が一族であったというだけだ。

だがイムリィに対してだけはそれが出来なかった。

それでもイムリィの祖父に託されたからと、せめて彼が幸せになれるように助け続けたのだが。


 「結局はそのご好意も無駄ンなっちまったっつーね…哀しいことに。

  何つーか、人間の間でも聞いたことのある話だぁな」


 ウィゼルに対するアニィの印象を姉から聞き、モフミネリィがそう言う。

ドラゴンの性情故に人間には判りづらく、ほぼ全員が疑問に思った。

その中でモフミネリィは、ウィゼルの愛情が何なのか、思い至ったらしい。


 「モフミネリィ、どういう事?」


 モフミーヌが首をかしげて尋ねると、モフミネリィとジャッキーチュンが惑うことなく答えた。


 「クソな孫に更生してほしいばーさんみたいな。

  本心じゃとっくに見捨ててんだけど、自分がいないとこの子はダメだって思っちゃうようなさ」

 「ちゅん」

 「「「「「ああ…なるほど」」」」」


 ドラゴンの心理は人間にそう理解できるものではない。

だが実は人間と変わらない。家族であるがゆえに、落ちぶれた家族を見捨てられない…

ある意味ではよくある関係であった。

悪人を止められなかった、むしろ憐憫の情から加担したという点では、イムリィと同類と言えなくもない。


 だがアニィは、彼女の行動に確かな愛情を見出したのである。

抱けぬが故に行き場を失い、正しく導くより目先の目的を果たさせる形にねじ曲がってしまった、確かな愛情を。

後悔を抱きながら、それでもドラゴンであるがゆえ、人間に対しての愛情を正しく表せなかった、愚かで哀しい程の愛情を。


 「…アニィちゃんは、ずっと村の人に苦しめられて…そしてプリスさんと愛し合って…

  だからこそ、ウィゼルさんの愛情が本当の気持ちだって、判ったんだと思うわ」


 当時、現場に居合わせたモフミナーサは振り返る。

アニィとプリスはウィゼルが最期に話した相手で、ニア家以外で彼女の心を理解した2人である。

そんな二人の話は、協会によるアニィ達へのインタビューが広報誌に載ったことで、連邦全体に知れ渡っている。

だからこそ、だれもウィゼルを迷惑な…あるいは悪辣なドラゴンと罵ることはできないのである。


 「この話のおかげで、自分はどうだろうとか、自分と家族はどうだろうとか。

  あるいはうちのドラゴンとはどんな関係か。色んな人にとって、考える機会になったらしいの」

 「きゅ~」

 「この星で一緒に生きている以上、人間にもドラゴンにも関係があることだからね」


 モフミニェの一言で、全員がうなずいた。



読んでいただきありがとうございます。

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