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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
番外編-Omake no hanashi-
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推し会議④


 続いてここからはモフミニェにバトンタッチ。アニィ達が次に訪れたのは、鉱業の町マインホルズだ。

偶然にも採掘坑と作業員が襲われたところに出くわし、町に入る前にどちらも助けてもらったことで、町長のカーター・ド・ヤヴンは大変恩義を感じているという。


 『あの子らはよ、オイラが頼んだらポンと行ってくれたんだ。

  相手はよっぽどおっかねえ化物なのによ』


 と、録画の映像のカーターが言う。彼の隣には妻であるカティアン・ヤヴンが座っていた。


 『あの時は邪星皇をやっつけに行くなんて聞いて、驚いたものよねえ。

  しかもホントにやっちゃうなんて。すごいったらありゃしないわよ!』

 『ホントになあ。ある意味、あそこで止めんでよかったと思うぜ』


 全くだ、とヤヴン夫妻はお互いの言葉にうなずく。

カティアン曰く作業員は念のために病院で検査したものの、いずれも大した怪我は無かったという。

鉱業で成り立つ町を仕切る2人にとって、作業員が無事に生きて帰ったことは大変ありがたい事であった。

そして彼らはその恩を返すべく、アニィ達には商品を半額で売り、アイゴールの気象情報を元に雪原渡りのアドバイスをしたのも彼である。

一見豪放磊落だが、その実思慮深く機知に富んだ、鉱業の町の長にふさわしい男だ。

結果として彼に出会ったことも又、アニィ達が世界平和を取り戻すことにつながったわけだ


 『アイゴールの異常気象、ジェネシエンドの占拠、ホスサイトの魔力隔壁。

  どこもこの国には大事な場所だからな、放っておいたらえらいことになってたよなあ』

 『アンタ、もしかしてそこまで考えてたのかい?』

 『んなわけあるかい。いくらオイラだってそんな慧眼持っちゃいねえよ!』

 『だよねえ!』

 『いや納得すんのかい』


 と、当時の事をテンポよく話す夫婦。夫婦にとってアニィとの出会いは楽しい思い出らしい。

アニィ達としてもヤヴン夫妻やマインホルズの町民との出会いは良かったものだと、後に語っていた。

ちなみにこの後、ヤヴン夫妻の夫婦喧嘩という名のイチャコラが始まったので、胸焼けしたモフミニェは何も言わずにインタビューを打ち切ったのであった。

そんなこんなで夫妻へのインタビューは短時間で済み、続いてエクスマからアイゴールでのアニィ達の話だ。


 「最初に私とクマさんが彼女達を知ったのは、確か南北境界門での通過審査だったな」

 「くま!」


 アニィ達がマインホルズを出て、ランドコースト大陸の南北の協会から出た時のことだ。

邪星獣が出現していた当時は境界門を通過するための条件が極めて厳しく、大半の通行希望者がもと居た町に戻された。

アニィ達はその中で数少ない通過審査合格チームである。

なお、当時の守衛の老人はアニィ達のことは知らなかったものの、門を通る時に印象に残っていたらしい…

と、後に彼と話したクマさんが言う。


 「くまくま」

 「…クマさん様も人の言葉がお分かりで?」

 「くま!」


 プレムの質問に自慢げにうなずくクマさんことクマダモフスキー。

雪原渡りのために訪れる旅行客が多いため、必然的に彼のコミュニケーション技術も高い物になってようである。

モフミニェもまた、クマさんを撫でつつ自慢げに答える。


 「そうなんだ。人間だけじゃなく、他の動物や怪物(モンスター)、ドラゴンの言語もある程度分かる」

 「それは素晴らしゅうございます!」


 接客業を行うプレムにとって、多様な言語が理解でき、かつコミュニケーションを取れることは大変すばらしい事である。

当のクマさん自身は彼らの言語を話せないものの、ならば他の誰かが翻訳すればよいのだ。

アシスタントのモフモフ動物としては、環境もあってかなり優秀な人材…もとい()材である。

さて、そんなモフミニェとクマさんがアニィ達との出会いについて語る番が来た。

対面した時間こそ短いが、実は一番長くアニィ達とかかわったのがこのふたりである。

モフミニェから当時の印象を聞き出すべく、モフミノーラとポコマツが身を乗り出した。


 「ニェ姉上、たしか境界門の審査の時点でアニィ殿達のことは我らから聞いてたゴザったな?」

 「ポンポコ?」

 「うん。君達の話だと普通の子、何ならアニィ君なんか家に帰してやった方が良さそうってくらいだったじゃない。

  それでも邪星獣を斃しながら境界門まで来たくらいだから、きっとそれだけじゃないんだろうなって」


 名前こそ知られていなかったが、当時既にアニィ達のことは北部に話が届くほど有名であった。

そんな実績と妹達の話がどこか一致しないことから、モフミニェは彼女なりに人物像を推測していたらしい。


 「アニィ君なんかはずっと何かを抱えていそうな顔で、そんなあの子を見守るパル君達は優しい顔でさ。

  特にプリスさんなんか、もう完全にモフミネリィの言った通り、アニィ君を愛している目でね…

  あと協会の機材を自慢するフリーダ君がかわいかった。えへんて」

 「くまぁ…」


 つい妄想の尊みに更けり出す次女と相方のモフモフである。が、すぐに我に返る。


 「ただ、どうもつらい事を思い出しちゃったそうで。

  エクスマフェスタを楽しんでもらってたんだけど、中断しちゃったんだよね。

  できればもっと楽しんでほしかったんだけどな…」

 「確かに、もったいないお話ですね…オススメした身として、少し肩身が狭いです…」

 「わふ…」


 そう言うのは、姉にアニィ達の宿泊を申し出たモフミーヌとチャウネンである。

全くの善意からの申し出だったのだが、それが思わぬ形で裏目に出てしまったのだ。

落ち込むのもやむなしと言った所である。

そんな妹の頭を、長姉のモフミナーサが優しく撫でる。


 「まあまあ、原因は多分…アニィちゃん達の村の人たちだから。あなた達は悪くないわ」

 「そう言っていただけると少し楽になります…ありがとうございます、モフミナーサ姉さま」


 どういたしまして、と笑顔で答えるモフミナーサ。

そんな光景に尊みを見出し、思わず息を吸い込む他の姉妹ともふもふ達。

やはりこの辺りは長姉であると、友人であるプレムも納得であった。

話はアニィがエクスマに来訪した時のことに戻る。


 「で、そんなアニィ君とプリスさんのためにみんなでプレゼントを渡そうと。

  これを聞いてもう、リリアウラ聖教幹部トップ2の私としては、一肌脱がざるを得ないとね」

 「くま!」


 当時エクスマフェスタに屋台を出していた宝飾・貴金属類加工技師、カッコ姉妹の姉の方のジェミィ・カッコから買った髪留めとブローチ。

これをパル達がアニィとプリスにプレゼントしたいという話を聞き、モフミニェは快く引き受けたのである。

実は当時事務所にいた職員たち全員が話を聞き、すぐさまクラウザーさんこと聖人サン・クラウザー衣装を持ってきたのであった。

さらに協会で雇っていたドラゴンも協力を申し出、モフミニェとクマさんをその背に乗せたのである。

つまり、実質的には協会が乗り出した一大プロジェクトであった。

そして結果はと言えば、この贈り物はアニィ達が喜んだのみならず、後の旅でも大いに助けとなったのである。


 「なんていうかさ…恋愛ともまた違う、友達のためっていう…その尊さがね…」

 「わかるでゴザル」

 「わかりみ~」

 「わかります…」

 「わかるわぁー」

 「大変美しゅうございますね…」


 五女から順に当時の尊みを妄想して吸い込む。

そう、少女同士の友情は恋愛と異なる美しさを誇るのだ。


 「おかげでアニィ君は立ち直れたみたいだし、プリスさんとの仲も深まったようで。

  あの子達のおかげだよ。あとジェミィさんもだね」

 「全くでゴザル」


 ジェミィ・カッコは、当時エクスマの宝石店で働きつつ、開店のための資金をためていたという。

そして妹のキキィ・カッコが帰ってきて、今はエクスマで姉妹で店を営んでいる。


 そしてアニィ達はフェスタの翌日、アイゴール大雪原を渡った。

恐るべき合体型邪星獣を斃し、スノマ・トゥーリに到着はしたのだが――



 ここからしばらく、少々つらい話になると知り、姉妹とプレムの雰囲気が若干暗くなる。

スノマ・トゥーリ到着後、アニィが邪星皇とイムリィ・ニア一味に狙われたことが発覚したのだ。


 モフミニェはスノマ・トゥーリに赴き、当時アニィ達と迎えた宿の店主、そして治療に当たった医師に話を聞いていた。


 「今スノマ・トゥーリは復興の最中で、話はあまり聞けなくてインタビューの時間も無かったんだけど。

  初めて体を変質させられたのはアイゴールで、スノマ・トゥーリでそれが表面化した。

  アニィ君は到着してすぐ、倒れちゃったそうだ」


 録画映像は残していない。というのも、一瞬でも見ると辛くなってしまうからだ。他の姉妹、そしてプレムも同様だ。


 「アニィ君の皮膚から摘出された物が邪星獣細胞だと判ったのは、フリーダ君と現地のお医者様の分析の後だ」

 「くまくま」

 「確かに、全く未知の魔術だったんだものね。

  ヒナちゃんの仇だった邪星獣の魔術とも似てたけど、全く同じではなかったし…」

 「異常さに気付けたのは、それこそ彼女達が邪星獣と闘っていたおかげだね。

  残るはずの無い物が残ってたんだから、驚くよね」


 当時はホスサイトの内科医ナイア・カシンからの連絡もあり、現地の医師と共同で分析したという。

その後、皮膚片は邪星皇の消滅に伴って完全に消滅した。


 「…アニィ様は相当迷われたと、うかがっております」


 当時プレムは居合わせたわけでは無いのだが、旅が終わった後、この時のことをアニィに聞いた。

旅を続けるべきか、それとも引き返すべきか。

続けても続けなくとも、仲間のみならず全ての人類を脅かしてしまう、それでいて邪星獣と化してしまえば、自分の望みは永久に叶わない…

人類の危機と自身の望みを比較対象にできる程度には自己を肯定できるようになったアニィには、却って重い選択であったという。


 「それをプリス殿が諭してくれたのでゴザルな。

  願いを託されたからこそ、アニィ殿の願いを導き、諦めてはならぬと」

 「ポンポコ」


 重々しくうなずくのはモフミノーラだ。

アニィが旅をしていた当時、超高額の報酬をアニィ自身が『自分の報酬』であり、『プリスと共に得た物』と叫んだのを、彼女はよく憶えている。

プリスと共に自分が為したことであり、そのおこないにたいする正当な評価であることを、初めてアニィは認識したのだ…と、モフミノーラは考えている。

その時の事は間違いなく彼女の自己肯定につながっている。

それに加えてのプリスの助言で、アニィは旅を続ける決意をしたのだ。


 人々の命の安全を差し置いて旅を続けるというだけでなく、自分が望みを捨てることはないと、自らが悟る事。

当時のアニィにとって、あまりに重い決断であった。

…ということもあり、リリアウラ聖教の教徒たる彼女達には、軽々しく扱えない一件である。

そして、話はジェネシエンド遺跡でのできごとに続く。


 「アニィ君達は、ここで初めて本格的に邪星獣相手に敗退。

  しかも邪星獣に変質する光線を撃ち込まれ、魔術での変貌度合いも進んでしまった」

 「くま~」


 体内まで邪星獣に変えられてしまい、アニィのみならず仲間達も絶望する寸前であった。

が、それが逃れた先の遺跡で一度断たれる。避難した遺跡地下でワカバ達に遭遇したためである。

1ディブリスだけ避難者たちと暮らす中、アニィ達は極限まで追い詰められた彼らと向き合いながらも再度立ち上がったのだ。

そして避難者達と手を取り合い、共に遺跡を脱出。

強大な合体独立型邪星獣を斃したのである。


 ただ、当時のことはアニィ達…そして避難者たちの心に深い傷を残しているらしい。

当時遺跡の地下に避難していた装飾品技師のキキィ・カッコ、その姉のジェミィ・カッコには、結局詳しい話を聞けなかった。


 「曰く、1人だけで逃げのびようとした男の人がいて…

  でもひどいことに、外に出た直後に事故で亡くなったって」

 「それは悲惨な話でゴザルな…」

 「うん…キキィさん達も、その後しばらくは夢に見たんだってさ。

  実際にその瞬間に立ち会ったのはアニィ君だけだったんだけど、いつもいた人が帰ってこなくなったんだもの。

  例え嫌いな人のことでも、そりゃ話を聞いただけでも夢に見ちゃうよ…。

  その後はナイア先生やイネル先生の協力で、カウンセリングも進んでるらしいけど」

 「くまぁ…」


 話を聞いたクマさんも沈痛な表情で落ち込む。

又聞きの彼女たちがそこまで落ち込むのだから、当事者たるキキィ達の心の傷はそうとう深いに違いない。


 「それでなくとも3か4マブリスの間も遺跡に閉じ込められてさ。

  その遺跡も…こういう言い方は良くないんだけど、人間の居住を無視したドラゴン用で。

  人間が暮らすにはまったく適していなかったのもあるね」

 「あたし、そこ行ったら真っ先に死んじゃうなぁ~…

  ホンっト、よく生きのびてくれて良かったよね。あの人たち」

 「ちゅんちゅん」


 怠け者でもあるモフミネリィにとって、生きるか死ぬかの選択を日々迫られるような場所での生活は、さぞ地獄であろう。

隣でジャッキーチュンもうなずいていた。


 「アニィ君達に出会えたのも、彼らに生きる気力があったおかげだね。

  正にその通り、生き延びてくれて良かった」

 「くまくま」

 「で、その後『創星の竜』の魔力を封じ込めた部屋に行って、皆で何とか脱出したと。

  その時に託されたのが『創星の竜』の魔力なわけだ」


 トト青年の性急すぎる脱出計画は、ついに遺跡の護りすら崩壊させ、邪星獣の侵入を招いた。

そこでアニィ達は遺跡の最奥の部屋へと向かい、『創星の竜』の魔力を託され、ダス=ガーネ・ヴーネ率いる邪星獣部隊を撃滅したのである。

その能力は凄まじく、驚異的な防御能力、殺傷力、魔術の出力など、全てがパワーアップしたのであった。

アニィ達の全身全霊の怒りを叩きつけられ、遺跡に待ち伏せていた邪星獣の部隊は瞬く間に全滅したのである。

その後、救助された避難者たちは一度スノマ・トゥーリを経由してエクスマに到着。

治療を受け、その後はそれぞれの道へと進むことになった。


 「ワカバちゃん達は国に戻って、ジェミィちゃん姉妹はお店をやってる。

  後はニィザさん、村長さん、あとご婦人がいたのよね。

  その人たちはどうしてるの?」

 「きゅ?」


 モフミナーサとゴマリントンが尋ねると、モフミニェは一通の手紙を取り出し、姉妹とプレムに見せた。

これは邪星皇消滅後、ジェネシエンドに住むことにした彼らからモフミニェに贈られた物だ。


 「今は3人でジェネシエンド遺跡街に住んでる。

  ニィザさんは公園墓地の管理人、村長さんは町政のお手伝い、ご婦人は病院で働いてるよ。

  3人とも元気で働いてて、町も少しずつ復旧してるって」

 「くまっ」


 その報告に全員が安堵した。

カッコ姉妹やワカバ達と同様、彼らも立ち直ろうとしているのだ。

勿論、時折カウンセリングを受けることも忘れてはいない。


 「アニィ殿達にも伝えたのでゴザルか?

 「うん、モフミーヌを通じてね。喜んでくれただろ、あの子達?」

 「とても喜んでいらっしゃいました。ワカバ様達にもお伝えしたら、こちらも大喜びで」


 彼らを助けたアニィ達だけでなく、一時共に生活したワカバ、デュエ、トリブルムにもこの報は伝えられている。

それに安堵したワカバ達もまた、彼らを思う優しい心を持っていると知り、モフミニェは密かに尊みを吸っていたのである。



読んでいただきありがとうございます。

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