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一党追放  作者: 藤咲晃
三章 溢れる幽霊と因縁
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静かな教会

 アダム教団が運営するアダム教会の設立は、開拓期初頭まで遡る。

 イーリス領内で発見された神々の存在を示す遺物と文献の発見が、様々な思惑から人々にアダム教団を組織させるに至った。

 薄らとアスベルから教わった話しをユキナは浮かべ、教会の扉を開ける。


 真っ先に眼に映り込むのは、アダムとイヴの石像と教壇。そしてオルガンだった。

 あとは誰も居ない寂しげな空気が礼拝堂に漂うばかり。

 ユキナは静かに足を踏み込む。

 その背後を続くレノがポツリと零す。


「幽霊騒動の影響か、誰も居ないな」


 静寂に包まれる礼拝堂遠見下ろすアダムとイヴに、ユキナは薄気味悪さを感じていた。


「不気味」


「……ユキナ、足元を見てみろ」


 言われて初めて気付く。

 真新しい足跡が木造の床に残されていることに。

 よほど急いでいたのか、足跡は走ったような歩幅で残されており、それは教会の廊下まで続いていた。

 ユキナとレノは足跡を頼りに進む。

 廊下に出て足跡に従って進むと、今度は教会の中庭に行き着く。

 足跡は中庭の草を踏み付けた跡に変わり、やはりそれを辿る。

 

「痕跡は噴水の裏側に続いてるな」


 痕跡通り噴水の裏側に回る。

 するとそこには、地下室への入り口が無防備にも曝されていた。

 

「不用心だな」


「……うん」


 ユキナは真っ先に入り口に飛び込んだ。

 階段を蹴り、段差を飛び降りるように一気に降り立つ。

 そして周囲に視線を巡らせる。

 剣を振るうには充分な広さだ。

 ユキナは剣を引き抜くと、


「こら! 後先考えずに先行するんじゃない!」


 コツンっと後頭部を叩かれる。

 

「……ごめんなさい」


 怒られたことにアホ毛が力無く垂れ下がる。

 

「次からは罠の有無を確認な。……それはそうと、幽霊が居ねえな」


 言われてまた気付く。

 そういえば教会に入ってから一度も幽霊とは遭遇していない。

 町中には大量に溢れているというのに、これは変だとユキナは首を傾げた。


「アダム教会が事件を引き起こした? いや、教団の仕業に見せ掛けた犯行か?」


 犯人が誰だろうと興味はない。

 捕縛して宝珠を回収か砕けば事件は終わる。

 同時にユキナの脳裏に、先日の血文字で刻まれた壁が浮かぶ。

 ユキナは頭に浮かんだ言葉と記憶を祓うように首を左右に振った。

 その際隣に居たレノの顔に白い髪が当たる。


「うわっ……良い匂い、って違う! どうしたんだ突然?」


 過去の忌々しい記憶は出来るだけ話したくない。

 だからユキナは誤魔化すことにした。


「き、気分」


「そっかあ気分かぁ。……まあ、言いたくないなら言わなくて良いけどよ、アレだ。辛い時はいつでも話して良いんだからな」


 話せば気分が楽になる。彼はそう言って笑いかけた。

 

「うん、ありがとう」


 結局自分は誰かに甘えてしまっている。

 レノの気遣いと優しさにも【竜の顎】たちにも。

 自分は誰かに寄生して生きているのだという思いが強まる。

 それでもユキナは歩み出す。

 寄生虫だろうと欠陥品だろうと過去に犯した罪は償わらなければいけない。

 その為にもユキナは冒険者を辞めず立ち止まる訳にはいかなかった。


「……ユキナ?」


 歩き出すユキナに不穏な気配を感じたレノは、思わず彼女を呼びかけた。

 しかしユキナは彼の呼び掛けに応じず、淡々と先を進むばかり。

 不信に思いながらレノは彼女を後を追う。


 そして二人は何事も無く通路を抜け、広場に辿り着くのだった。


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