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一党追放  作者: 藤咲晃
二章 地下水路のスライム
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命名! 蛇口スライム事件

 丁度ユキナが冒険者ギルドに到着すると、既に依頼書を持ったレノが受付窓口に並んでいた。

 ユキナは真っ先に駆け寄り、


「クエストはなに?」


「来て早々やる気だな。ま、緊急ってことで地下水路のスライム討伐だ。っつてもスライム討伐なんて新米のやることって言われて押し付けられたんだけどな」


 ユキナにとって報酬に興味も意味もない。

 そこに困っている人が依頼を出した。それだけの理由で充分だからだ。

 思い出深い町ならなおさら。

 密かに強い決意を固めるユキナに、レノが関心を寄せると。


「次の方〜!」

 

 受付嬢の声にレノは依頼書を差し出す。

 薄い水色の髪に美しい顔立ちの受付嬢──ルイが愛想笑いを浮かべ、


「突如起きた蛇口スライム事件の解決に向かわれるのは、ユキナちゃんと新米くんですか」


 そんな事を口にした。


「何だ? そのネーミング」


「起きた事をまんまにして見ましたが……ああ、口にするとダサいですね」


「何でもいいけど、クエストはスライムの殲滅で良いんだな?」


 ルイは頷き、


「理解してるとは思いますが、施設の損害は賠償金が伴うのでくれぐれも魔法の加減は気を付けてくださいね」


「分かってるよ。それにしてもスライムか……っ」


 レノはユキナに視線を向け、一瞬頬を赤らめ息を呑んだ。

 そんな彼にユキナは不思議そうに小首を傾げると、


「新米くん。スライムの粘液で服が溶かされたユキナちゃんを想像しましたね?」


 ルイの言葉にユキナが視線を向けると、何故か彼女は鼻血を出していた。

 それに釣られるようにレノも。


「……のぼせたの?」


「私はのぼせちゃいましたが、新米くんはえっちな事を想像したんですよ。ですから距離を取るのが正しい付き合いかたかと」


 ルイの助言にユキナは即座にレノから距離を離す。

 兄のアスベルとリティアにも教えられた事だ。不埒な妄想をする輩とは距離を離した方が適切だと。


「ちょっと待ってくれぇぇ!! 誤解だ! 俺だってのぼせただけだって」


 レノは眼を泳がせながらそんな事を語る。

 

「おい、新米。受注手続きが終わったならさっさと退けろよ」


 野次を飛ばす冒険者一党のリーダーに、レノはすごすごと前を譲る。

 そして業務に勤しむルイに恨めがましい眼差しをぶつけ、


「さっさと片付けて報酬貰おうぜ」


「ん?」


 何処か浮き足立つ足取り、何かを期待するような眼と緩んだ顔にユキナは小首を傾げた。

 彼が何を考えようとも興味は無い。ユキナは急ぐレノの後を追いかけた。


 ▽ ▽ ▽


 早速二人は地下水路に入り、地下水路管理室に足を運ぶ。

 クエストを始める前に依頼主から直接話しを聴かなければならない。特に公共施設を管理する彼らに何の断りも無く施設に入り込むのは、幾ら冒険者といっても信用を損なう行為だからだ。

 しかし管理室には男性が一人。他の職員の姿は見当たらない。

 ユキナは管理室の壁に施された魔法陣に眼を向け、一人の男性に近寄る。

 

「……クエストを請けた冒険者」


 彼女の静かな声に男性は振り向く。

 背丈の広い筋肉質な男性──バルヌはユキナに驚きつつもレノに顔を向けた。


「お前さんは何処かで? いや、社交界でなら忘れるはず無いんだけどなぁ」


「えっと……アンタが依頼主か?」


「と、悪いな。見覚えの有る顔だったもんでな。俺はアスガル地下水路管理局所長のバルヌ・ノーマンだ」


「バルヌか。俺はレノ、そんでこっちが仲間のユキナだ」


 互いに自己紹介を終えた二人にユキナはじっとバルヌの顔を見つめていた。

 ユキナもバルヌに見覚えが有ったが、それが何処でだったか記憶が定かではなかった。

 見覚えはあるが思い出せないもどかしさに小首を傾げると。


「それじゃあ、君らにやって欲しいのは地下水路に居るスライムの残滅だ。幸い人に被害が出ちゃあいないが、いつスライムが夜間に蛇口から這い出て寝込みを襲うかもしれん」


「つまり今日中に地下水路のスライム殲滅……それで規模はは?」


「分からん。何せ今朝俺たちが出勤した頃には地下水路にスライムが溢れていたからな。全くそんな前兆も侵入口も塞がれてんのに」


 なら一体どうやってスライムが地下水路に入り込んだのか。

 町の地下に在る広大な範囲。何処かに見落としが有るのか、それとも誰かがスライムがを放ったのではないかとレノは考えた。


「それにしても浄化魔法の方は大丈夫なのか?」


 町の生活水の要となる魔法が機能しているのか? そう暗に尋ねるレノに彼はわざとらしく肩を竦める。


「単的に言えば浄化魔法に一切の問題もない。スライムは魔物だが生物だ。事故防止のために生物に浄化魔法は作用しないようになってる」


「……なら魔法に手を加えれば良いんじゃないのか?」


「生憎と浄化魔法も国家機密魔法だ。一介の施設管理者にそんな権限は無い、第一浄化魔法には何重にも防壁が張られて術式に手を加えることもできねえ」


 二人はバルヌの説明に納得すると彼は壁のレバーを下げた。

 すると施設の外から激しく水が流れる音が響く。


「今の音」


「討伐するなら下水は邪魔だろ。あとは二人に任せる」


「ん。じゃあクエスト開始」


「……随分と淡々としてるが、大丈夫なのか?」


「これでも凄いんだぜ? 魔物なんて一瞬でばらばらだ」


「そいつはまた……。何にせよ殲滅が完了したらここに戻って来てくれよ? 水路に水を戻すから」


 言われて二人は頷き、クエストを開始するのだった。

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