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一党追放  作者: 藤咲晃
二章 地下水路のスライム
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蛇口からおはよう

 それは一週間後の朝のことだった。

 洗面所の蛇口を捻るとゼリー状の生物が出たのは。

 

「水……? 水は?」


 水道の蛇口からスライムが出て来た。目前の奇妙な光景にユキナは困惑を隠せず三度瞬きを繰り返す。

 するとスライムはゼリー状の身体を震わせ、洗面所から飛び上がる。

 スライムの粘液は服の繊維を溶かし、捕食対象を二週間かけて消化すると言われているが、ユキナは拳を引き。

 

「せい!」


 スライムの核に上り込むように拳を鋭く放つ!

 寝巻きの裾が粘液によって溶けるが、変わりに彼女が放った拳がスライムの核を砕く。

 核で形を形成していたスライムの身体がその場で蒸発する。

 

「……びっくり」


 スライムを討伐した後、ユキナはほっと息を撫で下ろす。

 しかし蛇口を捻るとスライムが出る。

 もしかしたら次は出ないかもしれない。そう考えたユキナは、もう一度蛇口を捻る。


「……水」


 蛇口から流れ出る水にユキナは安堵の息を吐く。

 これで洗顔と歯磨きができると。

 

 ▽ ▽ ▽


 今日は剣の修理が終わる日だ。

 いつも通りの足取りで鍛治工房を訪れたユキナに、


「来たか。お前さんの剣は無事修理が完了してる……ま、勝手ながらちっと改良させて貰ったがな」


 親方が懐深い笑みを浮かべた。

 頼んだ覚えが無い。だからユキナは疑問から首を傾げ、


「改良?」


 親方に聞き返した。


「おうさ。重量を変えず、強度の底上げに血を吸う特殊な貴金属を芯と剣身に打ち込んであるが……見た方が速い」


 手渡された剣を受け取ったユキナは、鞘から剣を引き抜く。

 すると鋼製の剣身は紅い刃に変わり、その場で軽く二、三度振るう。

 風を斬る音が以前よりも数段鋭い。

 親方が言った通り重量の変化は無いが、以前よりも格段に斬れ味が上がっているのだと理解する。


「親方、ありがとう」


 剣の改良にユキナのアホ毛が嬉しそうに揺れ動く。

 喜んでいるユキナに親方は豪快に笑う。


「あぁ、さっき軽く言ったがソイツは刃に付着した鉄分……つまり血を吸込む性質を持っておるが、限界量を超えた血は刃から滲み出るぞ」


 少し、いやかなり物騒で見方によっては恐い。

 僅かな恐怖にユキナの手が震えた。

 それでもこれから扱う武器には変わりが無い。何より親方の親切心を無碍にする気もない。

 剣を鞘に収めたユキナは、ふと今朝の事が脳裏に過ぎる。


「……蛇口からスライムが出た」


「スライムだぁ? ……そういや、弟子四号がそんな事を言ってやがったな」


「あぁ、蛇口からスライムが出たって話しですよね? 港区の民家や宿屋を中心にそんな被害が出てるって話しでしたが」


「ん。奇妙」


「確かに蛇口からスライムなんざ奇妙この上ねえが、地下水路に棲み着いたか?」


 アスガルの生活水は川水と海水から吸い上げ地下水路のパイプを通し、管理室の浄化魔法を経由して生活水として利用されて来た。

 浄化魔法で弾かれた塩と毒素は別々にされ、塩は町の市場へ、毒素は病院や薬学研究室に運ばれている。

 

「親方、冗談はよしてくださいよ。地下水路には浄化魔法が完備されてるんですぜ? デスコロット風邪ような被害を防ぐためにさ」


「おう。だが、スライムは水道のパイプを通ったんだろ?」


 いくら魔法が使えないユキナでも理解できる。

 スライムに浄化魔法が効かないか、何らかの理由で浄化魔法が作動していないと。

 

「ん。ギルドに行ってみる」


 ユキナは言うや否や早速行動に移し、外を駆け出していた。

 立ち去った彼女に親方たちは、忙しそうな少女だと息を吐く。

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