第7話 先代の勇者
「サンクティ・ルミナ!」
降り注ぐ光芒が岩壁を砕く。セレストリアは魔法少女たちが無詠唱でサンクティ・ルミナを放てるまで付き合った。いつの間にか嵐は過ぎ去っていたようだ。セレストリアは腕を組む。
「……及第点だな」
「お姉ちゃん、それ褒めてる?」
「褒めているが」
「だよね」
ステラは楽しそうに笑い声を上げる。
「そろそろ帰るぞ」
「……ねえ、お姉ちゃん」
彼女がセレストリアの袖をつかんだ。
「……どうした」
「お姉ちゃん、甘えていい?」
「……要件は」
「送って欲しいなー、って」
ステラは首をこてん、と傾げる。セレストリアは表情を緩めて答えた。
「いいぞ」
「ありがとう。場所は……」
「待て」
セレストリアは慌ててステラの口を塞ぐ。そのまま眉を吊り上げて口を開いた。
「アジトの場所は教えるな」
「え?」
「私たちは敵同士だ。ゆめゆめ忘れるな」
セレストリアがそう言うと、フローラとマリスが口を開いた。
「今さら?」
「魔法教えてる時点で相当だと思うけど」
「それとこれとは別だ。……まんまる池なら分かるか?」
「いいけど……池?」
「見つかりづらく、着陸するスペースも十分だからな」
「濡れちゃわない?」
「岸に寄せる」
「文句を言うなら乗せないぞ」と笑って、セレストリアは三人を戦闘機へと連れて行った。
彼女は戦闘機のハッチを開ける。変身を解いた千里が目を輝かせた。
「すごい! かっこいい!」
「将軍専用機だ」
セレストリアは魔法少女たちを後部座席へ促し、自ら操縦席に座る。ハンターは助手席だ。セレストリアは口を開いた。
「お菓子とジュースは好きなだけ食べていい」
「いいの?」
「汚すなよ。……シートベルトはつけたか?」
「はい!」
セレストリアは全員がシートベルトをつけたことを確認し、離陸操作をする。
「少しGがかかるぞ。酔ったら言え」
彼女がそう言った瞬間、機体がふわりと浮き上がった。恵がしみじみと呟く。
「……滑走路なくてもいいんだ」
「垂直離着陸可能だ」
セレストリアは機体の高度を安定させる。魔法少女たちはキャッキャッと騒ぎながら座席にしがみつく。やがて機体の揺れが収まった。
「シートベルトは外すなよ」
彼女はそう言いつつシートにもたれかかった。フィーネがおずおずと口を開く。
「……お姉ちゃん、そろそろお話できる?」
「話?」
「昔話」
「……ああ。分かった」
セレストリアは一つ呼吸を置き、ゆっくりと口を開いた。
「……光の女神の化身についての伝承は知っているか?」
「知らない」
「聞いたことない」
首を横に振る千里と恵に「……だろうな」と呟いた。
「……帝国では、『世界の危機が起きたとき、女神は化身を遣わせる。化身の人格は十人十色で、地上の勇者に力を与え、共に危機に立ち向かう』と伝わっている」
「地上の勇者?」
「ああ。当代は君たちだな」
「……そう、だったの?」
「……何も知らずに戦っていたのか……」
セレストリアが呆れたように呟けば、千里は「えへへ」と笑う。
「続けるぞ」
三人がこくりと頷く。
「今から話すのは、先代の話だ」
セレストリアはそう言って、言葉を紡いだ。
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