第5話 魔法少女、取引だ
その時、セレストリアの耳にぱたぱたという足音が届いた。やってきたのはフローラ、マリス……いや、花咲 千里と海神 恵だった。そばにはミューズもいる。彼女は降参するように両手を挙げた。
「……私は敵ではある。帝国の将軍だからだ。だが、今君たちに攻撃する気はない。……フィーネ、これで言葉は足りているか?」
「……ちょっと多いくらい?」
フィーネは笑いをこぼす。千里と恵は困惑した顔を浮かべていた。
「……フィーネのお姉さんって、天然?」
「……うん」
「イメージと違う……」
その時、ふ、と影が動いた。セレストリアが低く「止まれ」と命令すると、影は動きを止める。ナイフを構えたままピタリと動きを停止したのは、ハンターだった。セレストリアは口を開く。
「落ち着け。三人は敵じゃない」
「申し訳ございません。姫様が襲われているのかと」
「勘違いさせたな。薪は?」
「ここに。ぬれていないものをかき集めました」
「助かった。そこに置いてくれ」
ハンターは薪を置く。花咲がぽつりと「ハンターに命令できるんだ」と呟いた。
「ああ。私の優秀な側仕えだからな」
「……ナイトじゃなくて?」
すかさずフィーネが口を挟む。セレストリアは首をかしげながら言った。
「言ってなかったか? ハンターはナイトだぞ」
「……聞いてない」
「そうか」
「うん」
フィーネは姉をじっと見た。
「じゃあ、お姉ちゃんも伝説のアイテムを狙ってたの?」
「ああ、西の遺跡にはそれがあったな。安心しろ。興味がない」
「ハンターが襲い掛かってきたのに」
千里の言葉に、セレストリアとハンターの動きがぴたりと固まる。
「……いつの話だ?」
「さっき」
「嵐は来ていたか?」
「来ていなかったよ」
「それはおかしい。ハンターが私のそばを離れたのは、嵐が来てからだ。今日は私とずっと一緒にいた」
恵がじっとハンターの顔を見る。そして口を開いた。
「分かった。頬の傷がない」
「ほんとだ。さっきフローラの花びらが当たって、切れてたよね」
彼女の言葉にフィーネが頷く。
「……ハンター。悪魔は確か、誰かに化けられたな」
「その可能性が高い、という調査結果が」
セレストリアは顎に手を当てた。
「調査する必要があるな……。……ナイトに……いや……」
彼女は静かに思考を巡らせる。
(偽物のハンターと交戦する可能性が高いのは……)
セレストリアの視線が、魔法少女たちへと向いた。
「魔法少女、取引だ。ハンターと交戦した場合、私に連絡しろ」
「え?」
「もちろん、ただとは言わない。見返りに、サンクティ・ルミナを教えてやる」
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