第4話 私は君を誇りに思う
セレストリアとハンターが、西の遺跡の調査を終えたあとのことだった。上空では魔力嵐が荒れ狂っていた。これでは戦闘機を飛ばせないと、二人は適当な洞窟で雨宿りをすることにした。
「薪を取ってきます」
ハンターはそう言って洞窟を出ていく。セレストリアは壁にもたれて雨音を何となしに聞いていた。
「……お姉ちゃん」
洞窟の入口から驚いたような声が聞こえた。彼女は顔を上げる。そこにはびしょぬれとなったフィーネが立っていた。
「……そこで何をしている」
セレストリアがそう問いかけた瞬間、フィーネの肩はびくりと震えた。
「……えっと、雨宿り……」
「それは見れば分かる。風邪をひくだろ。何を突っ立っているんだ」
セレストリアはそう言いながら立ち上がり、フィーネにタオルを差し出す。
「……お姉ちゃん、私たちは敵同士じゃないの?」
「私は帝国、君は魔法少女だろう。だから一緒にはいけない。……それと、何の関係があるんだ?」
「え?」
「あくまで立場の話だ。君が風邪をひくことと関係ない」
フィーネはじっと彼女の顔を見る。
「……もしかして」
「なんだ」
「私、嫌われたんじゃないの?」
「なぜそうなる」
「だって、敵同士だって」
「立場の話だ。言っただろう、またな、と」
フィーネは目を丸くした。そうして口を開く。
「お姉ちゃんの言葉足らず!」
「……何の話だ?」
セレストリアがぽかんとしていると、フィーネはまくしたてる。
「私、嫌われたかと思ったのに!」
「なんでだ?」
「いつもいつもそうやって! 『遊べない』が『今は遊べない』だったり、『行けない』が『今日は行けない』だったり! お姉ちゃんのバカバカバカ!」
「そうか?」
「そうだよ! まったくもう!」
腰に手を当てて頬をふくらませるフィーネが可愛くて、彼女は思わず笑いをこぼした。
セレストリアはフィーネを隣に座らせ、魔法を使って温かいココアを作る。それを渡してやると、そっとフィーネの顔が綻んだ。
「……でも、良かったの?」
「何がだ?」
「帝国を裏切ったこと」
「いいも何も、君の選択だろう。……それに」
セレストリアは一度言葉を切った。
「帝国のやり方が間違っていることなど、自明の理だろう」
「そう思ってたの?」
「ああ。日本に対する侵略行為に等しい」
「……じゃあなんで、帝国に……」
「……帝国には民がいる。私がいなくなったら、誰が民を守る?」
「……考えてなかった……」
フィーネはうつむく。セレストリアは口を開いた。
「間違っていることを間違っていると言う。その純粋さも得難いものだぞ」
「……そう、なの?」
「ああ。だから、私は君を誇りに思う」
フィーネは少し笑う。セレストリアは影のある笑みを浮かべた。
「……それに、さっき言った理由は、半分建前みたいなものだ」
「……建前?」
「……ああ。半分だが」
「……じゃあ、本音は?」
フィーネはじっとセレストリアを見つめる。
「……本当は、お父様を一人にしたくなくて」
「一人に?」
「うん。……あんなに家族思いで、寂しがり屋なんだ。だから、一人くらい、家族が残ってあげなければ」
「……家族思い?」
フィーネはキョトンとした顔をする。セレストリアは独りごちた。
(無理もないか。もう十年だ)
曖昧に笑うセレストリアを見て、フィーネは言葉をのみ込んだ。
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