第27話 虹の向こうへ
「シドゥス・カエルム」
セレストリアがそう唱えた瞬間、天穹に数多の星々が灯る。次の瞬間、その一つ一つが光の矢となり、悪魔へ降り注いだ。
「無駄ですよ。オムニア・デヴォラート」
無形の闇が広がり、降り注ぐ星の矢を次々と飲み込んでいく。その瞬間だった。
「がら空きだ」
静かな声が響く。死角から無数のナイフが悪魔へと襲いかかった。怯んだ悪魔に目掛け、蠢く影が襲いかかる。それは悪魔の手足を縫い止めた。
「姫様!」
「分かっている。カルケル・ルーキス」
幾筋もの光が地面へ突き刺さる。次の瞬間、それらは光の格子となって立ち上がり、悪魔を四方から閉じ込めた。
セレストリアは声を張り上げる。
「長くは持たない。急げ!」
「おっけー!」
「うん!」
「はい!」
ぴしり、ぴしりと輝く格子にヒビが入る。魔法少女たちはステッキを振るう。
「大地を彩る花よ!」
「命をたたえる海よ!」
「空を照らす星よ!」
「裁きとなりて降り注げ! サンクティ・ルミナ・トリニティ!」
桃色、青色、黄色の光芒が一斉に降り注ぐ。花びらが舞い、波が揺蕩い、星が流れる。光に焼かれた悪魔の身体は、悲鳴とともに塵へと崩れ始めた。
「……まだだ……! 私は……全てを……!」
悪魔はそれだけ言い残し、やがて完全に光へ溶けて消えた。光が収まると、その場には悪魔に取り込まれていたルクシアと皇帝だけが残されていた。
「お父様!」
セレストリアはすぐに父へと駆け寄る。彼は薄く目を開けた。
「……すまない……セレストリア。……私は……」
「……責任追求は後です。今はお休みください」
セレストリアは微笑む。皇帝は「……大きく……なったな……」と呟いて、また目を閉じる。規則正しい呼吸を確かめ、セレストリアはようやく肩の力を抜いた。
「ルクシアは女神様のもとに連れて帰るみゅう」
ミューズがそう言うと、ルクシアはふよふよと彼女へと吸い込まれる。ミューズはルクシアを見届けるように小さく頷くと、羽をぱたぱたとはためかせた。
「みんな、本当によく頑張ったみゅう。光の女神様からご褒美があるみゅう」
「そういえば、そんな話あったね」
「成績上げてほしい、とか?」
「自分で勉強しなきゃダメよ」
「だよね〜」
フローラは唇を尖らせて、口を開いた。
「この後、ミューズは帰るんだよね?」
「みゅう」
「一緒にいたい、とかはダメかなぁ?」
「いいみゅうよ?」
魔法少女たちの笑い声が響く。セレストリアは父を抱き上げながら、ナイトに声をかけた。
「帰るぞ。これから忙しくなる。……付いてきて、くれるか?」
「もちろんです。俺の姫様は、姫様だけですから」
彼はセレストリアの後ろを歩く。空には虹がかかっていた。
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