第26話 将軍、帰還
「おや、その程度ですか」
風が吹き荒ぶ荒野にて。倒れている魔法少女たちを見て悪魔は口角を上げた。
「……まだ……諦めない……」
「……あたりまえ……でしょ……」
「……みんなで……帰るの……」
フローラ、マリス、ステラは震えながらも立ち上がろうとする。悪魔は「しつこいですね」と言って手を掲げた。
「エクリプシス・アエテルナ」
漆黒の闇が湧き上がり、三人を飲み込もうとする。魔法少女たちはぎゅっと目を瞑った。その時だった。
「ルクス・アエギス」
衝撃は来ない。三人は恐る恐る目を開く。
目の前には巨大な光の壁。そして、その前に立つ一人の将軍——セレストリアだった。
「……お姉ちゃん……?」
「……起きたの……?」
彼女は何も言わずに振り返る。黒い軍服には金の刺繍が踊り、背には赤いマントが揺れている。
「……その……格好……」
「これか? 一時的だが変身している」
「変身?」
「ああ。お母様の力を借りているに過ぎないが……」
「ごちゃごちゃうるさいですね。あなた一人が増えたところで」
悪魔は嗤う。
「皇妃アウリナ、皇帝エーベルハルトが娘、セレストリア・アルノワール——参る」
セレストリアは背筋を伸ばして悪魔に剣を向けた。
「サンクティ・ルミナ」
空から降り注いだ光に、悪魔はとっさに腕をかざす。その一瞬、視線が上を向いた。
「油断したな」
静かな声が響く。次の瞬間、漆黒の影が足元から跳ね上がる。影から飛び出したナイトが悪魔の脇腹へとナイフを振り下ろした。
「ナイト!?」
「……いや、ハンター?」
「……ナイトのままだ」
彼はそう突っ込みながらセレストリアのそばに着地した。ナイトはセレストリアと同じ軍服をまとい、首元には見慣れたボロボロのマフラーを巻いていた。
「……とりあえず、傷を治すぞ」
彼女はそう言って「レナティオ」と唱える。柔らかい光が魔法少女たちの傷を癒した。
「立てるか?」
「うん」
ステラが笑って立ち上がる。フローラも「もちろん」と拳を握り、マリスもゆっくりと息を吐いた。
「悪魔を倒せるのは、サンクティ・ルミナ・トリニティくらいみゅう」
「でも、避けられちゃって」
ミューズやフローラがそう伝える。セレストリアは「分かった」と頷き、そして顎に手を当てた。
「……私とナイトで奴の動きを止める。その隙に叩き込め」
魔法少女たちは互いに顔を見合わせ、大きく頷いた。
「期待しているぞ」
セレストリアは口角を上げ、悪魔へと向き直った。
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