第22話 宵闇の中でも影はある
「……いよいよ、だね」
「……そうだな」
三日後。先にアジトに来ていたフィーネは、ナイトに声をかける。
「ねえ、ナイト」
「……なんだ」
「本当に、一緒に来なくていいの?」
フィーネはまっすぐナイトを見る。彼は視線をそらした。
「俺はろくに戦えない。足手まといだ」
「でも、お姉ちゃんはナイトが助けに来てくれたら、喜ぶと思うよ」
ナイトは何も言わない。尻尾が所在なさげに揺れていた。
「時間があるなら、準備しておけ」
「うん。そうするね。……ナイト、待ってるからね」
フィーネはそう言って立ち上がる。ナイトは黙りこくったまま、静かに屋根へと向かった。
「……俺は……」
彼は星を見上げる。星はキラキラと瞬いていた。
『……帝都の空には、星はあまりないのですね』
『見えていないだけだ』
『見えていない?』
『ああ。夜でも光が強いからな。一等星や二等星が多少見える程度だ』
『……星にも優劣があるのですね』
『ただの明るさの指標だ。たとえ見えなくても、そこに星は輝いている』
「……星は、輝いている……」
彼は小さく繰り返す。風が静かに吹いていた。
◇
フローラ、マリス、ステラは要石を破壊してルクシアを引きずり出し、月の噴水前で彼女と対峙する。ルクシアは一瞬だけたたらを踏んだ。すぐに体勢を立て直すが、その肩はわずかに上下している。だが。
噴水前では魔法少女たちが倒れていた。ミューズの「フローラ、マリス、ステラ!」という声が響く。三人はもがき苦しみながらも、「……まだ……負けて……ない……」と立ち上がろうとしていた。
「なんじゃ。その程度か」
ルクシアはつまらなそうに吐き捨てる。
「これで終わりにしてくれる」
彼女は手を掲げ、魔法を放とうとする。その時だった。突如、ルクシアの視界を漆黒の闇が覆った。
「な、なんじゃ!?」
ふらついていたためか、ルクシアは尻もちをつく。その瞬間、影が走った。影はルクシアの手足を拘束する。
「……え?」
「何が起きたの?」
「……まさか」
三人が顔を上げる。視線の先にいたのは、ナイトだった。
彼は金色の目を三人に向けると、「レナティオ」と唱える。柔らかい光が魔法少女たちを包みこみ、傷がみるみるうちにふさがっていく。
「……何をしている。さっさと体勢を立て直せ」
「……来てくれたの?」
「勘違いするな。姫様のためだ」
ナイトは口角を上げ、静かに答える。
「雑魚が増えたところで……」
「見えなくても、星は輝いている。宵闇の中でも影はある」
「……中二病?」
「……水を差すな」
フローラの言葉に、彼は一瞬だけ力を抜いた。だが、すぐに表情を引き締めて口を開く。
「それ以上、その体で罪を重ねさせない。姫様を愚弄した罪は、死をもって償え」
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