第21話 影の中には影狼族
「……また逃げられたぁ」
「撤退させることはできてるけど……。でも、やっぱり被害がでちゃうな」
「……どこにいるか、分かんないもんね」
数時間後。魔法少女たちがアジトに戻ってきた。ナイトは「……戻ったか」と口を開く。
「ナイト、もう大丈夫なの?」
千里が心配そうに彼の顔を覗き込む。ナイトはふっ、と笑った。
「ああ。自分の役割を思い出せた。それで、これを」
彼は一枚の地図を差し出す。それには、三箇所の印がつけられていた。
「……奴が身を隠している結界、その要石の場所だ」
「要石?」
「ああ。破壊すれば、奴はもう、異空間に逃げ込めない」
「本当なの!?」
「信頼性は高い」
ナイトはそう言って頷く。そして、もう一枚の紙を差し出す。
「そしてこれが、奴の使う魔法だ」
「……よく調べたね?」
「伝承と、ニュース映像をあたった。すべてではないかもしれないが……主要な魔法は把握しておくに越したことはないだろ」
彼は静かに笑う。
「それと、一つ確実な弱点がある」
「弱点?」
「ああ。奴の体は人間だ。疲労がたまっている」
「分かるの?」
「姫様の体だからな。おそらく、ろくに眠れていない」
「ろくに?」
ナイトは千里の言葉に頷いた。
「あれほど疲労がたまっていると、逆に眠れない」
「え、意外」
「少なくとも目を温めないとうまく眠れないそうだ。……俺が保温機能付きの枕になっていた」
「そんなことしてたの?」
フィーネはナイトへ視線を向ける。彼はちょっと視線をそらし、「……姫様の頼みだ。仕方がないだろう」と答えた。
「ともかく、かなり限界が近い。龍脈で無理やり支えているが、体は悲鳴を上げている。経験上、三日が限界だ」
「じゃあ、そこを叩けばいいのね」
恵の言葉にナイトは頷く。
「三日後は、ちょうど新月だ。奴の力もわずかだが弱まる」
「そんなことまで調べてたの?」
千里は口をあんぐりと開けた。
「俺は姫様の影だ。『影の中には影狼族』の名は伊達じゃない」
「なにそれ?」
「帝国のことわざだよ。影の中には影狼族がいる。だから隠し事はできない、って意味」
「つまり、壁に耳あり障子に目あり、ね」
魔法少女たちは笑い合う。その空気に釣られたのか、ナイトもほんの少し笑みをこぼした。
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